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【論文メモ】アイデンティティ・ステータス

こちらの論文より
清水 紀子 2008, 中年期のアイデンティティ発達研究 : アイデンティティ・ステイタス研究の限界と今後の展望, 発達心理学研究

アイデンティティはEriksonの心理・社会的発達段階の中で青年期の課題として提唱された概念である。その対象は青年期だけでなく生涯にわたるとされている。中年期のアイデンティティ発達の議論にはアイデンティティ・ステイタス(Marcia, 1966)の移行過程が用いられてきた。


アイデンティティ・ステータス

・危機の有無、自己投入の有無を軸に4つのステータスを判別する。半構造化面接で評定。
・当初、青年期を対象に作成されたが中年期まで用いられるようになった。

アイデンティティ・ステータス 4つの種類
①危機も自己投入もない状態→拡散
②主体的な探求は経験されず、親や社会の価値観を継承する形で自己投入→早期完了(フォークロージャー)
③自己投入の対象を探求中→モラトリアム
④主体的に選択した対象に積極的に自己投入→達成

面接の結果、フォークロージャーもしくはモラトリアムを経て「達成」へいたるのが一般的とされている。

中年期のアイデンティティ・ステータスの変化を引き起こす要因。
・心身の変化(時間的展望の狭まり、体力的な衰えなど)
・社会的役割の変化(定年退職など)
・ライフイベント(病気、経済不安など)
男女は、社会的期待やライフイベントが異なるため考慮すべき要因のひとつである。

アイデンティティの再構成を円滑にする要因
・ライフイベントが自分にとって重要なものだと捉え転換期の意識
・内的な気づき
・同質性を持った相手への相談(例:子離れにおける母親が他母親へ相談)
・Kronger & Green(1993) アイデンティティの再構成には、個人の中で何らかの準備が整うこと、葛藤への気づき、他者のサポートが不可欠。

中年期のアイデンティティ・ステータス研究
①自己投入先選択の柔軟性:投入する先を替えることへの柔軟性。柔軟な方が成熟している。
②「個としてのアイデンティティ」と「関係性にもとづくアイデンティティ」の2軸で成人期のアイデンティティ発達を整理できる(岡本,1997)
「関係性にもとづきアイデンティティ」は、自分は誰のために存在するのか、誰の役に立つのかという他者支援の方向性を持つ。
③中年期のアイデンティティ発達は、青年期の繰り返しではないという新たな視点が現れている。

memo
中年期にもアイデンティティの再構成は起きる。それは青年期にまっさらなキャンパスに描かれる時とは異なり、描き直しのプロセスを経るもので、同じ再構成と呼べるものではない。中年期には中年期の質的なアイデンティティ発達がある。

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