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日本酒にオフフレーバーはあるのか?

日本酒の古酒・熟成酒をいただいていると、「一体、ダメな日本酒って何なんだろう」と思うようになりました。
先日、とあるワイン通の方が、「オフフレーバー」って言葉と使われているのを聞きました。
ご存知です?オフフレーバー。
私は、よく知りませんでした。
一体、オフフレーバーってなんなんだろう?
ワインだけでなく、日本酒にもあるのかな?
オフフレーバーだとダメな日本酒なのかな?

それは「異臭」のこと

オフフレーバーとは、日本語では、「異臭」とありました
「フレーバー」というと、味を思いがちですが、本来は、「オフ」がつくと、におい、または、香りです。

調べていくと、「日本オフフレーバー研究会」という団体がありました。
その説明によると…

食品そのものはもともと様々なにおい成分を有しており、それら成分のバランスや特徴的な成分がその食品の「通常のにおい」のイメージを人に与えています。

ところがその食品には通常存在していない臭気成分が付加されたり、一部の成分の増加や減少によるバランスの変化により「通常のにおい」から逸脱していると判断されたときに「異臭」として感じます。この本来食品にない、あるいは通常感じられないにおい(異臭)のことを「オフフレーバー」と呼びます。

オフフレーバーは健康に直接影響はなくとも、消費者がオフフレーバーから感じる食品へのイメージは大きく、食品業者の消費者への対応如何によっては、商品への大きなダメージとなる場合があります。したがって、オフフレーバーについて製造から流通・販売及び消費者が喫食されるまでの間において共通の正しい認識を持つことは非常に重要であると考えられます。

一般社団法人 オフフレーバー研究会

日本酒に置き換えると、本来は日本酒にない、あるいは、通常感じないにおいがすると、人はそれを「オフフレーバー」だと思う、ということかな、と。

消費者がオフフレーバーととらえてしまうと、ダメージになることもあるから、生産者から流通の人まで、全員がにおいについて、共通の正しい認識を持ち合わせ、問い合わせがあった時は、全員が「それは異臭」「それは異臭ではない」と同じ判断ができなければらならい、ということのようです。

熟成の香りはオフフレーバーか?

でも、日本酒は熟成すると香りがでてきます。
本来はなかったにおい、と考えるなら、これもオフフレーバー?
それとも、どこかで線引きがあるのでしょうか?

そこで、オフフレーバーの関する講義を受講してみました。
先に結論からお話ししますと、やっぱり熟成の香りもオフフレーバーになる場合がある、ということだったんです。

まずは、日本酒の香りにはいろいろな種類があり、番号が振られています。
詳しくは、次のサイトをご覧ください。

https://www.nrib.go.jp/data/pdf/seikoumisan.pdf

これらのうち、142番以降がオフフレーバーとされてしまうことがあるそうです。
ほとんど全部ですね。
ちなみに、醤油やたくわん、ヨーグルト、バターやカラメルなど、熟成させると出てくる香りすべてが、オフフレーバーのようです。

確かに、日本酒からはあまり想像できないような香り、例えば、獣の匂い、ビーフジャーキーや薫製ソーセージの香り、カビの匂いがすると、「悪臭」と感じる人が多いかもしれません。

でも、醤油、たくわんやヨーグルトやバターなどは、おいしいと感じる人が少なくない気がする。

それでもやっぱり、オフフレーバーなのでしょうか?

オフフレーバーでもダメージではない!

私自身は、意図的に厳しい環境下に置かれた日本酒、例えば、日光の下にずっと置いておいた日本酒は気が抜けたようでさほどおいしくない、と思ったことがあります。

また、ラベルがカビてしまったような場合、その瓶のお酒もなんともいえない変な味と香りで、キンキンした味が残り、あまりおいしくないと思ったことがあります。

でも、それ以外には、今のところ、オフフレーバーだな、とか、ダメだな、と感じたことがないんです。
むしろ、日本酒の古酒・熟成酒は、いろんな香りがしておもしろい、と思うくらいです。

上述の講座でも、参加者のうち、オフフレーバーとされているたくわんやヨーグルトの香りは問題ない、と感じる人もいました。

今まで日本酒の古酒・熟成酒を試してもらった友人の中には、「これって日本酒じゃないみたい」という感想はありましたが、今のところ、みんな、おいしいと言うことで、お酒が結構進みます。

これはとても興味深い現象です。

オフフレーバー協会がオフフレーバーだと定義しているにおいでも、ダメージではなく、問題ない、おいしい、と感じる人もいるのです。

要は、一人ひとり感じ方が違う、と言ってしまえばそれまでですが、でも、このズレは、一体どうして生まれるのでしょう?

まとめ

熟成した日本酒には、一般的にオフフレーバーとされている香りがある。
でも、それを美味しく感じる人もいる。
もしかしたら、その原因は、日本人がだんだん熟成したもののにおいに慣れてきているからではないでしょうか。

例えば、チーズがそうですよね。

かつて、チーズの種類もあまり知られていなかった頃には、ゴルゴンゾーラの独特の匂いに顔をしかめる人が多かった。
でも、いろんなチーズが普及するにつれて、食欲をそそる香りになりました。
ということは、もっと日本酒古酒・熟成酒が広まって、その独特の香りに人が慣れてくるにつれて、オフフレーバーの幅もどんどん狭くなっていくのかもしれません。
オフフレーバーはダメではなく、個性として受け止められるようになるのではないでしょうか。
香りの容度が広がれば、食やお酒の楽しみも拡がります。

それって、ほんとに素敵なことですよね。

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