"良い"質問をする方法-イチローの引退会見によせて-

コンサルタントという仕事上、人に質問をすることが多くあります。
そのため、未熟者ながら質問することについては私も一家言もっています。

先日、敬愛するスポーツ選手の一人、イチロー氏が引退しました。
リアルタイムでは見られなかったため、あとで引退会見を見ました。

全体としてはとても良い会見だったと感じています。
恥ずかしながら途中で2度ほど涙してしまいました。

それとは別に気になったのは、
会見でイチロー氏に投げかけられる質問に、
良いものとそうでないものがあったことです。
そのため、この会見自体がとても良い教材だなと思って途中からみていました。職業病ですね。

ここからは、質問の良し悪しを◎>○>△>×で私的に評価してみたいと思います。
みなさんが"質問"を考えるときのヒントや、新しい視点を提供できれば幸いです。

※質問文は、こちらのブログの情報を参考にさせて頂いてます。
 https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12448786850.html


①現役生活に終止符を打つことを決めたタイミング、その理由は?
②決断に後悔や思い残したようなことは?
(テレビ朝日/草薙和輝)

評 価:◎
理 由:
・トップバッターとして視聴者がまず聞きたい質問をした。
・質問が(一息で言い終えられるほど)短く、シンプルだった。

①子供たちに是非メッセージを。
②今思い返して最も印象に残っているシーンは?
(TBS/井上貴博)

評 価:△
理 由:
・質問内容自体は悪くないが、2人目の質問としては疑問。後進への言葉はもっと後半で聞きたかった。「子ども」に絞るのであればなおさら。
・結果オーライだが、「自分が熱中できるものを」という比較的ありきたりだが"準"名言を聞き出せたことは良かった。
・②は2人目としての質問としては良かった。
 ただし、①と②につながりが薄く、「1人1つまで」と言われているルールを破っているように思われた。マイナスポイント。

「イチメーター」のエイミーさんがいた。ずっと応援してくれたファンの存在は?
(テレビ東京/鷲見(すみ)玲奈)

評 価:○
理 由:
・「ファンへの言葉」はオーソドックスだが悪くない質問。会見の前半に聞くのも〇。
・ただし、エイミーさんには申し訳ないが、エイミーさんにふれる必要は全くなかった。あの会見で、特定の誰かに言及する場合、その人がよほどイチロー氏と特別な関係でなければならない雰囲気があった。(仰木監督、大谷選手は特別だった)空気が読めてなかったともいえる。

①イチロー選手が貫いたもの、貫けたものは?
②グリフィーが、肩のものを下ろしたときに違う野球が見えて、また楽しくなってくると話していた。そういう瞬間は?
(サンスポ・ニワ)

評 価:○
理 由:
・①の質問は、言いたいことはわかるが、どういう答えを期待していたのか不明だった。抽象的すぎるし、別の聞き方があったのではないだろうか。
・②は良い質問だと思うが、"2問目"のように思われた。ルール違反。

①開幕シリーズを「大きなギフト」と言っていたが、私たちが大きなギフトをもらったような気でいる……。これからどんなギフトを私たちにくれるのか?
②涙がなく、むしろ笑顔が多いように見えたのは、この開幕シリーズが楽しかったということか?
(日本テレビ/徳島えりか)

評 価:△
理 由:
・一ファンとして、"ギフト"をイチロー氏からもらったのは間違いない。そのため気持ちを代弁してお礼を言ってくれたのは良かった。
・しかしその後が良くなかった。「ギフトを~気でいる」のあとにとってつけたように「これから~くれるのか」と質問したことは評価できない。
・②の質問も、前の質問者への回答と被る部分があったため、評価は低くならざるをえない。質疑のやりとりにはその場その場での柔軟な対応も求められる。この方はそこに対応できていなかった。恐らくギフトのくだりしか考えていなかったのだろう。(と思われてもしょうがない内容だった。)
ZIPは良く見ているので頑張ってほしい。

①常々、最低50歳まで現役ということをいってきたが、日本に戻ってもう1度プロ野球でプレーするという選択肢はなかったのか?
②どうしてか?
(朝日新聞/山下)

評 価:○
理 由:
・賛否ある質問だろうが私は評価したい。イチロー以外の選手だったら、嫌味な質問になっていたかもしれない。
・みんなが気になっていた質問だし、"50歳を目指したからこその45歳だった"ことを聞けたのは良かったのではないか。記者とイチローに信頼関係?があったから成立したようにも思われる。
・質問も短く、シンプルだった。

・これまで膨大な時間を野球に費やしてきたが、これからその時間とどう付き合っていくか?
(共同通信/小西)

評 価:△
理 由:
・悪くない(良くもない)質問だが、一言でいうなら言葉が足りなかった。他の聞き方があったのではないだろうか。
 たとえば、"これまでの毎日は、試合に出場するため、ヒットを打つために費やしてきたと思います。明日からは何を目指して、どういったことに打ち込んでいきたい、打ち込んでいると思いますか。"くらいで良いのではないか。

・イチロー選手の生きざまで、ファンの方に伝えられたことや、伝わっていたらうれしいなと思うことはあるか?
(フジテレビ/生野陽子)

評 価:△
理 由:
・恐らく、「一つ質問する」ことをノルマに課せられていたのだろう。当たり障りのない、他の記者に比べると、イチロー氏のことを気にしていない、質問者本位の質問だった。残念ながら評価はできない。
 生野アナは私は個人的に好きなので頑張ってもらいたい。

①シンプルな質問ですけど。現役選手を終えたら、監督になったり指導者になったり、あるいは全く違うタレントになったりすることはあるけど……、
②そうでもないと思うが。
(日刊スポーツ/高原寿夫)

評 価:△
理 由:
・イチロー氏のことを良く知っている記者さんだと思う。それが故に妙に質問に凝ってしまった印象だった。失礼ながら、何が聞きたいか分からない質問になってしまっていると感じた。もう少し言葉を駆工夫すれば上手く聞けたのではないか。
・結果オーライだが、監督の話を聞けたのは〇。(監督はどうですか?という質問はいかにもイチロー氏が嫌がりそうな質問である。そのため、他の質問で監督について言及されたのは良かった。)

①以前にも引退の2文字が浮かんで悩んだ時期はあったのか?
②その中で今回、引退を決意した理由は?
③8回にベンチに戻る際に菊池選手が号泣していた。
④抱擁の時にどんな会話を交わしたのか?
(TBSビビット/上路雪江)

評 価:△
理 由:
・①②の質問自体はオーソドックスで悪くない。ただ、もう少し早い段階でしてほしかった質問。全体的に「今後のイチローは何するの?」ということを聞きたい雰囲気になりつつあった。
・③④の質問は、引退とダイレクトにつながらない内容だったが、結果的には良い質問だった。結果オーライ。4つも質問した点はマイナスポイント。

アメリカのファンにメッセージを。
(共同通信/海外部・アレン)

評 価:○
理 由:
・評価が難しい質問。シンプルなので、アリと判断。
・特定の球団を持ち出さなかったのは良い判断。

①キャンプなどでユニークなTシャツを着ていたが、何か心情を表していたのか? 全く関係なくただ好きで着ているのか?
②好きに楽しんでいただきたいと?
③言わないほうが粋だと?
(バズフィード/吉川慧)

評 価:×
理 由:
・引退会見でする質問ではない。
・イチロー氏の性格を分かっていない記者だと思われる。(私もイチロー氏と知り合いではないのであくまで推測です。)

イチローさんを支えてきた弓子夫人への思いは?
(笹田氏)

評 価:○
理 由:
・引退会見らしい質問。
・今まであまり触れられてこなかった夫人、一休の話を引き出せた点は〇。

打席内での感覚の変化は今年はあったのか?
(朝日新聞/遠田寛生) 

評 価:×
理 由:
・一般の選手の引退会見であればギリギリ許される質問だが(それでも答えてもらえないと思うが)、イチロー氏の引退会見でする質問ではなかった。
・もし、このあと本当に裏で話を聞きに行っていれば、この記者さんのことを評価したい。新しいイチロー氏との関係が生まれるチャンスである。裏で話をしていなかったら、そこまでの記者だったということではないか。

①これまで数多くの決断と戦ってきたが、今までで一番考えぬいて決断したものは?
②昨日の試合は第1回WBCで日本が優勝した日と同じだったが、それは運命的なものがあったりするのか?
(日本スポーツ企画出版社/新井裕貴)

評 価:△
理 由:
・①について、イチロー氏の性格的に具体的な質問をしたくない(嫌がられる)ことは分かるが、さすがに答えづらい質問。
・②は不要な質問。かつ2つ目の質問はルール違反。

最も我慢したものは何だった?
(日本テレビ/辻岡義堂)

評 価:○
理 由:
・抽象的な点は一つ前の質問に同じだが、答えやすい点で、こちらの質問は評価したい。

台湾ではイチローさんのファンがいっぱいいまして、何か台湾の人に伝えたいことは何かないか?
(台湾の中央通信社の記者)

評 価:△
理 由:
・評価が難しい質問。
 たとえば、"台湾にもファンがいっぱいいる。台湾のファンに対して一言いただけないか"くらいの質問で良かったのでは。

菊池(雄星)投手が同じマリナーズに入って、去年は大谷(翔平)選手がエンゼルスに入った。後輩たちに託すことは?
(夕刊フジ/片岡将) 

評 価:◎
理 由:
・良いタイミングで、良い質問だった。具体的の例を提示し、そのあとざっくりと投げかける、お手本のような質問。

①イチローさんが愛を貫いてきた野球。その魅力とは?
②イチロー選手がいない野球をどう楽しんだらいいか?
(Jスポーツ/節丸裕一)

評 価:◎
理 由:
・イチロー氏が嫌がらなそうな絶妙な質問。
・①と②合わせ技一本で◎評価。

1年目の試合で最初の対戦がアスレチックス、(途中・イチロー選手に訂正されて)今回最後の試合もアスレチックス。今回最後の打席に立つときに、1年目のゲームを思い出しましたか?
(週刊スパ/小島克典)

評 価:×
理 由:
・質問者本位の、何が聞きたいか分からない質問だった。答えありきの質問は時に大事だが、引退会見の場では全く不要な評価できない質問だった。
・この質問で会見がぶち壊しになる可能性もあった悪い質問のお手本のような質問。出直してきましょう。

プロ野球選手になるという夢を叶えて、成功してきて、今何を得たと思うか?
(文化放送/斉藤一美)

評 価:△
理 由:
・イチロー氏のことを考えれば"成功"はNGワードだと推測できたはず。それでもあえて聞きたければ聞いても良かったが、そのことに質問者が気づいていない(か気にしなかった)点が×。

毎年神戸に自主トレに行っている。ユニホームを脱ぐことで神戸に何か恩返ししたい思いは?
(夕刊フジ/大和)

評 価:△
理 由:
・どういったストーリーを描いていたか、質問の意図が不明だった。
・答えありきの質問のように思えマイナスポイント。

①日米で活躍する選手は甲子園で活躍、プロで活躍、そしてメジャーに挑戦という流れがある。もっとこんな制度ならメジャーに挑戦しやすかったとか、こういうことあればいいなという提言は?
②日本の野球で鍛えられたことは?
(ハフポスト日本/田中志乃)

評 価:△
理 由:
・引退会見でする質問ではなかった。
・後輩へ贈る言葉と一緒に、日本の野球の良さを聞いておけば、無難なまとまりにはなったか。

①エンゼルスの大谷選手との対戦を楽しみにしていたけど、叶わなかった。イチローさんは対戦したかったか?
②大谷選手は今後どのような選手になっていくと思いますか?
(TBSテレビ/ヤマシナ)

評 価:○
理 由:
・この会見では個人への言及は避けた方が良いが、数少ない例外の一人が大谷選手だった。個人的には、川崎選手に関する質問がなくてホッとしている。

①あるアスリートが、イチロー選手が現役野球選手じゃない自分は嫌だとインタビューで言っていたそうだが。
②改めて野球選手ではない自分を想像してどうか?
(毎日新聞/岸本悠) 

評 価:△
理 由:
・1つ目の質問でこけて上手くまとめられなかった例。特にイチロー氏の会見では言葉選びに気を付けるべきだった。

プロ野球人生振り返って、誇れることは?
(デイリー・スポーツ/小林信行)

評 価:△
理 由:
・イチロー氏とも面識があるので、何か質問したかったのだろう。考えてきた質問が全て聞かれてしまったのかもしれないが、同じことを聞くのはNG。
・これがイチロー氏と面識のない記者だったら、評価は×だった。

イチロー選手の小学生時代の卒業文集に「僕の夢は一流のプロ野球選手になることです」と書いていたが、その当時の自分にどんな言葉をかけたいですか?
(日本テレビ/伊藤大海)

評 価:△
理 由:
・質問内容は悪くない。ただ、タイミングが非常に悪い。この方はこのタイミングで、何を考えてこの質問をしたのだろうか。最後の質問は、"きれいに締める"そのアシストとなる質問をするべきだった。

前のマリナーズ時代、何度か「自分は孤独を感じながらプレーしている」と話していた。ヤンキース、マーリンズとプレーする役割が変わってきて、去年ああいう状態があって今年引退。その孤独感はずっと感じてプレーしていたのか。それとも前の孤独感とは違うものがあったのか。
(フルカウント/木崎英夫) 

評 価:◎
理 由:
・泣きのもう一問で、イチロー氏と信頼関係を気づいている記者さんが、締めのアシストとなる質問を絶妙になげこんでくれた。
・正直言って、私も最後にどういう質問をしたらよいか考えあぐねていたので、拍手を送りたい。
・内容については、具体的なイチロー氏の言葉から、野球人生全体を振り返る方向にもっていく、高度な技術の詰まった良い質問だった。木崎氏にはありがとうと伝えたい。
・イチロー氏もすっきりと終えられたようでプラスポイント。


以上で、質問の評価を終わります。
ご批判、ご意見等々あると思いますが、こういう視点もあるという
本noteのコンセプトでもある"新しい視点"をご提供できていれば幸いです。

最後に…
イチロー今まで多くの感動をありがとう!そしておつかれさまでした!

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