EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)の再考 ーエビデンスがすべてじゃないー

突然ですが、環境省事業で近年盛んに"ナッジ"が言われています。

ナッジ(英語 nudge)とは、ひじ等でそっと押して注意を引いたり前に
進めたりすること、特定の決断や行動をするようにそっと説得・奨励す
ることを意味する言葉です。行政や民間の現場では、直接物理的につつ
いたりするわけではありませんので、「そっと後押しする」という訳を
用いることにしています。
(出典)環境省『報告書「ナッジとEBPM~環境省ナッジ事業を題材とした実践から好循環へ~』,http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/EBPM.pdf


宅配便の商品の配送前に配送日を事前に伝えるサービスも”ナッジ”に位置付けられていますので、私たちは既に日常的に”ナッジ”されていることになります。


このナッジに関する報告書に「EBPMの再考」という興味深い記述がありました。自戒もこめてnoteします。

曰く、

EBPM という言葉の持つ語感から、エビデンスを重要視するあまり、エビデンスのみが大切との誤解を招くことがありますが、
~中略~
「Evidence-based」の意味するところとして、図 10 のようにエビデンスに加え、リソース(限りある資源)とバリュー(関係者の価値観)も考慮し、三者をバランス良く鼎立させて総合的に意思決定することの重要性が説かれています。
(出典)同上

画像2


記述内容を整理すると大体こんなことだと思います。

・実験的に効果が示されていても、社会実装段階では、対象者の価値観や受容性、社会的な費用負担とその公平性等の観点から最も望ましいものであるとは限らない。
・人的リソースの不足、費用の制約等により実施できないことも考えられる。
・ただし、エビデンスを軽視して良いわけではなく、判断の材料や基準として用い、専門的・合理的な観点から検討することも重要である。
・英国・米国・豪州等では、EBPM の代わりにエビデンスを理解した上での政策立案 EIPM(Evidence-informed Policymaking)という表現が存在する。


コンサルタントをしていると、とかくデータに基づいた検討を行ってしまいがちです。

あくまで一つの材料だ、ということを心に留めておくことを再認識しました。


このレポートでは、他にも

・海外事例は安易に参照しない

・原典にあたる

・相関関係と因果関係を区別する

・ネガティブな結果もポジティブに受け止める

といった業界の常識として、言うまでもない、だけどみんな忘れがち、ということも丁寧に整理されていて読みごたえがあります。

興味がある方はぜひ一読ください。(このnoteは主に22頁以降のことを書いています)


環境省『報告書「ナッジとEBPM~環境省ナッジ事業を題材とした実践から好循環へ~』,http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/EBPM.pdf


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