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カープと巨人と豪雨とツイッター

2018年7月6日(金)この日は朝からの豪雨で高速道路が封鎖され「100年に一度の大雨に警戒」というニュースが飛び交っていた。

「まぁ大丈夫でしょ」と軽い考えで、カメラマンと2人で撮影現場に向かった。

車で向かう道中、大雨警戒のラジオニュースが一通り伝えられた後、大きな報道が飛び込んできた。オウム真理教の一連の事件で教団の元代表 麻原彰晃、本名・松本智津ら7人の死刑が執行されたというニュースだ。

何の因果かと思いながらも目的地に到着する。

昼過ぎに撮影が終わり、定年退職する先輩のお土産を買って帰ろうすると辺りは大渋滞、雨も強くなり、あっという間に真っ暗になる。

ラジオからは東京ドームの広島vs巨人戦が流れていた。

時折流れる臨時ニュースで災害状況が報じられたかと思うと、また東京ドームの歓声に引き戻される。ネットニュースも見たが「100年に一度!」とか、「過去最悪!」と言った辛辣な見出しだけが目につく。広告の仕事はキャッチコピーで、いかに消費者に興味を抱かせるか!と真剣に考えるものだが、災害現場で必要とする災害情報にキャッチコピーは何の役にも立たない。次第に強くなる雨足の中、役に立つ災害情報や今の状況が聞きたいというのに、

ラジオからは東京ドームの広島vs巨人戦が流れていた。

人生38年、野球には縁がなく興味もなかったが「広告」という仕事柄、球団の恩恵は無視も出来ないので、自分なりに好きになろうとマスコットキャラクターを見つめて、赤い帽子と三角の口が可愛いじゃんと思えるまで成長していたのだ。

そんな気持ちに構わず大渋滞は続き豪雨の中、

ラジオからは東京ドームの広島vs巨人戦が流れていた。

ワイパーが効かないほどの豪雨になり、いよいよ恐怖が襲ってきた。暗くて周囲の状況もわからない、ラジオの災害情報だけが頼りだというのに、何も教えてくれない、僕はドームの屋根もない真っ暗な道で、激しい豪雨に見舞われている。

この時間、広島では多くの人が同じように渋滞に巻き込まれて一向に進まない中

ラジオからは東京ドームの広島vs巨人戦が流れていた。

しかし今・・野球やるかね??

うーー腹立つわぁ野球。野球なんてルールも知らん・・・助手席のカメラマンに、球団名を連呼して「腹立つわぁ」と愚痴っていた。野球に罪はないのだが・・この時ほど野球を恨んだことはないと思う。

そうこうしていると19時40分、あの警報音が鳴り響いた。

大雨特別警報。

最も危険な警戒レベル5に相当する、けたたましい警報音に怯えていると、

やっとラジオが災害報道に切り替わる。

過去に経験したことのないような異常な状況です。

「直ちに命を守る行動をとってください」と言っている。

しかし運転中で大渋滞、真っ暗で大雨の中どうやって命を守るのだろうか?と疑問に思いながら果てしない渋滞の中、何も出来ないでいた。

バイパスを進んでいたが、途中で強制的に下道に下ろされた。降りてからも一向に車は前に進まない。

この渋滞の先は、一体どういう状況なのか?

A「通行可能だが大渋滞で進まない」

B「大渋滞の先はそもそも通行不能」

どっちだろうか。対向車は少しだけ通っている、

そもそもこの対向車はどこから来たのだろう?

A「渋滞の先から来た車」

B「通行不能だとわかり引き返す車」

ラジオだけを頼りにしていたが、大雑把な情報と注意喚起しかなかった。

1時間以上渋滞に付き合ったが前に進まない。

過去に経験したことのないような異常な状況です。

「直ちに命を守る行動をとってください」と言っている。

そんな時、助手席のカメラマンが「引き返して別の道で帰ろう!」と言い出した。全力で賛成してUターンして逆の道を走り始めた。こちらは空いている。というか車がいない!法定速度で走れる感覚を忘れかけていた。テンションが上がる!!カメラマンに抜け道を教えてもらい車を走らせた。

角を曲がり右手が崖になった道に差し掛かったとき、何か変な物音が聞こえてきた!???「ガサガサガサッ」と聞こえた思った瞬間、カメラマンが「逃げぇーーー」と叫んだ。

びっくりして僕はブレーキを踏んだ。

カメラマンが「ボケ止まんな行けや!!!」と言うので、右手側を見たら崖崩れの瞬間に出くわす!絶体絶命の中、アクセル全開で逃げまくった。

「危にゃのぉ崩りょったど」「なんでブレーキかけるんな走れや」と怒られまくるのでテンションは最低になり泣きそうになる。

しばらく抜け道とやらを走っていると道路工事車両がいて、この先が土砂崩れで、これから交通規制するという。

この道も希望はないのか。落ち込みながら来た道を引き返した。

先ほど通った崖崩れの道をまた通らないといけない・・・怯えながら走っていると、その場所に差し掛かり、左をみると崖の下に柵がありそれに引っかかって土砂がかろうじて引き止まっている。

なんとも言えない恐怖が襲ってきた・・・・

会社のある市内までは直線距離で30kmくらいだろうか。西に向かって帰りたいのだが、先ほどの渋滞の道と崖崩れの道が使えないとなると、次なる手段を考えなければならない。

西がダメなら南へ一旦抜けよう。そうして南に向けて車を走らせるとパトカーがいる。

あぁー南も通行止めかぁ・・・交通整理にあたる警官の話では、

南側は深刻な被害が出ているらしい。

気がつくと22時は過ぎていただろうか、コンビニがあったので一休みした。この頃になると少しずつラジオから被害状況が流れ始める。あまりにも酷い状況を淡々と伝えるラジオを呆然としながら聞いていた。

また雨が強く降りはじめたので、今日はもう帰られそうにないと判断して、高台を探して別のコンビニの駐車場に停まり車中泊を決心する。すでにコンビニの商品は品薄で、同じような車中泊のひとがたくさん停まっていた。

疲れ果てて眠いのだが、元々自分の家でしかよく眠れないので車内では一睡も出来ず、めっちゃくちゃしんどい。

カメラメンは寝ていた。


朝方何時くらいだろうか?尋常じゃ無い雨量になっている。この未明の豪雨で大きな被害にあった地域が多かったと後に聞く事になる。

空も明るくなりはじめたので行動を開始した。明るくなって初めて周囲の状況がわかるようになり、浸水被害や崖崩れで山肌が露わになった姿を沢山見かける。

目的地は西にある。

西の目的地を目指すために東西南北あらゆる道路にアタックしたが、ことごとく通行止めで進めない。今日はカメラマンの運転で散々走り続けたのだがどの道もダメだ。至る所で泥水が吹き出るような危険な崖を目の当たりにしる。流された車が泥にまみれで団子状態にもなっていた。

昨晩渋滞で進めなかったバイパス出口付近の道が通れるようになっている。

昨晩は土砂で埋まっていたらしいが、地元の方々が朝から撤去作業に出向いていただいていたようで午後には開通していた!

一気に希望を抱いて前に進んだが、少し走るとまた大渋滞している。

色々と情報を探していると、残念ながらこの道は近所の住民は使えるのだが、この先の道路が寸断されているようだ。

くたくたで体がしんどくなってきた。「今日も車中泊?」自宅でしかよく眠れない僕は絶望でしか無い。

夕方近くなりホテルに泊まろうと数件の宿に電話するも満室だと断られる。電話口の向こうから他の電話が鳴り続けている音が聞こえる。

考える事はみんな一緒なのか・・・

いよいよ精神的にも厳しい状況になった頃に、なんとか通れる道はないものかとネットを見ていてふと、

Yahoo!のツイッターリアルタイム検索

に目が止まった。「豪雨」「災害」などのキーワードで悲惨な状況が伝えられていた。とにかく車中泊がいやで必死でツイッターを検索していた、しばらくして近くの道路の名前「○○号線」みたいな検索をかけたら「○○号線→○○号線→○○号線→○○号線→○○号線」みたいなツイートを発見する。当時ツイッターなどやっていなかったので半信半疑だったが、その「○○号線→○○号線→○○号線→○○号線→○○号線」と書かれたルートをあたってみようと思った。

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すぐに後悔が襲ってきた。

「○○号線→○○号線→○○号線→○○号線→○○号線」のルートは僕1人だったら絶対に通っていないような酷い有様った。道の半分が完全に没落していて生きた心地がしなかった。道路の崩落でトラックが落ちかけていたり、至る所で崖崩れした道を無理矢理抜けて、迂回する狭い農道?民家?みたいな抜け道を20分くらい走って

やっとの思いで、ちゃんと車の走っている広い道に抜けることが出来た。その後も多少渋滞していたが夕方6時ごろ会社に戻ることに成功した。

「○○号線→○○号線→○○号線→○○号線→○○号線」というツイートには助けられたのかもしれないが、一歩間違えたら命を落とす危険性もはらんでいた。結果オーライなのだが、安易に信用したのは無茶な判断だったと思う。

僕のツイッターとの出会いはこんな感じで幕をあけた。

しかし自分のアカウントを持とうとまでは思わなかった。災害の記憶も消えないまま、カメラマンは復興ボランティアに足繁く通っていたらしく感心されっぱなしだ!僕は正直なにもできなかった・・・情けない。。

普通に仕事もしていたが精神的に参ってしまい、体調も優れなかった。

そうして2018年も終わろうとしていた。12月の末、

YOUTUBEで面白い動画を見つけた!!

前田将多×田中泰延×上田豪 「僕たちはなにを考えて仕事しているのか」

https://www.youtube.com/watch?v=efhdjKCwzug&t=5046s

前田将多さんは @monthly_shota 著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』を読んでいたので、直ぐにあの人だ!と思った。

田中泰延さんは @hironobutnk  数年前にこの記事を読んで、後に音声も聞いてクソ面白い人じゃ!!!と思った。ツイッターをしているという話も聴いていた。

上田豪さん@go_uedaのことは

前田将多×田中泰延×上田豪 「僕たちはなにを考えて仕事しているのか」

で、はじめて知って現役広告マンの意気込みを感じた!そんな面白くてカッコいいお三方には、共通点があるらしい。どうやら

ツイッターで繋がっているみたい!


ツイッターって「○○号線→○○号線→○○号線→○○号線→○○号線」みたいな死にかけそうな情報を書き込むような危険な場所じゃないのか?

SNSを一切やっていない自分には未知のゾーンで、これ面白いのか?と思いながら年を越した。

年明け早々に興味本位でアカウントをつくって前澤友作氏の100万円企画に乗っかってみた。何も当たらなかったので

田中泰延 @hironobutnk さんのツイッターを試しに覗いてみたら

「スカパーコピー書いてみた!」

などという面白そうな企画を紹介されていた。審査もすると言うので早速@hironobutnkをフォローしてみて

「スカパーコピー書いてみた!」を考え始めた。フォローの意味もよくわかっていなかったと思う。たぶん何日が後に、前田将多さん、上田豪さんもフォローさせていただいた。

その後もタイムラインを眺めていると、まさにツイッター業界の無法地帯だった!面白すぎるコミュニティーで面白すぎる迷言が連発していて完全にツイッターにはまってしまった!!

もうすぐ災害から1年になりますが、僕はツイッターに救われた気がしています。まだまだ被害の癒えない地域は沢山あると聞きます。

一日も早い復興と健康を心からお祈り申し上げます。


カープもがんばって好きになりま・・








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