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必ず、絶対、勝つ。

いつか、バナナマンの設楽さんが言っていた。「本当にすごい人は、素人が見てもプロが見てもすごいものを作れるんだよ」と。これはお笑い論を語っていた時の言葉—―

KANさんが亡くなった。
あの曲がリリースされて多くの人に親しまれていた時、私はまだ幼くてちゃんと曲が理解できていなかったから、「ピアノの弾き方が雑だな」とか思っていた。かわいくないな、私。ごめんなさい。しかし最近は、「あの曲、いい曲だな」と思うようになっていた。
当時は今とは少し違った音楽市場で、TVの主題歌・挿入歌、そしてCDの売り上げ、なんかが曲の評価になっていた時代だった。だからひねくれものの私は流行っていたからこそ、ちょっとダサい、みたいな感覚もあった。

ポップミュージックというのは時代とともに流れていくものが多い。勢いで売れていく曲もある。今はサブスクリプションで聞き放題だから、前に売れた、某アイドルグループの曲を聴いたときは「ダサくて聴いてらんねぇな!」と思ったこともある。むしろそちらのほうが多い。しかしたまに出てくる「あ、この曲っていい!」それが、あの曲だった。

今日の訃報を聞いて、また改めて聞いてみた。冒頭のコード進行はよく使われるものであるし、歌詞も直接的な言葉で紡がれている。でも「愛」を示すものが、恋愛だけではなく、色々な「愛」につながっていることをも思わせてくれる。それを、どんなに不安だろうと、困難があっても、裏切られても、奪われることがあっても、「絶対に」勝つ、つまり手に入る、と言い切るこの曲には大きな力がある、と思ったら涙が出てきた。どんなに欲しくても手に入らないもの、もしくは、手に入っているかもしれないのにそれに気づけないこともあるかもしれない。改めて今日、この曲を噛みしめてみて、流行った当時の私には理解できなかった曲の良さを感じ取ることができた。

一生懸命や素直がかっこ悪く感じるときもある。でもこの曲は、真っ向から手に入れることを肯定し、必ず手に入り、叶うと言い切る。この歌詞をどう受け取るかは、もちろん個人差があっていい。でも、すがすがしいほどの真っ直ぐでわかりやすい言葉は、多くの人たちに共感された。そしてこれからも共感され続けていくのだろう。作品はこれからも残るから。

KANさん。素敵な音楽をありがとうございました。


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