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[レポート]福祉と職人技術をつなぐ マテリアルリサーチ&ワークショップシリーズ@Goodjob!Center KASHIBA |射出成形①

2/2(水)、GJ! Center KASHIBAにて、京都を拠点にデジタルファブリケーションを用いた研究開発と製造を行う、新工芸舎のご協力のもと「福祉と職人技術をつなぐマテリアルリサーチ&ワークショップ」を開催しました。


今回マテリアルリサーチ&ワークショップをコーディネートしていただいたのは京都を拠点に3Dプリンターを中心としたデジタルファブリケーションツールの普及活動を行う株式会社YOKOITOで、3Dプリンタを用いた表現や技術の研究開発を行う新工芸舎の三田地博史さん、小坂諒さん、資源のアップサイクルを目的としたPlaRiaLというプロジェクトに取り組む松本恵里佳さん。アドバイサーとしてFabLab北加賀屋から美術家の白石晃一さんにもご参加いただきました。まずは、新工芸舎の活動と取り組みについて、三田地さんから話を伺います。

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 新工芸舎はデジタルファブリケーションツールの普及と表現や技術の研究開発、商品化を行う設計者集団です。プロジェクトが本格始動したのは2020年夏。デジタルとアナログの境界を行き来しつつ、表現活動や問題解決を行うことを “新しい工芸" と定義し、京都を拠点にさまざまな制作活動を行なわれています。
新工芸舎で製造されているプロダクトシリーズをお持ちいただき見せていただきました。3Dプリンター特有の積層感を感じさせない、滑らかで柔らかい質感は、独自で生み出された「編み重ね」という工法で再現されたそうです。オブジェのようなプロダクトから、ラジオや文具などの実用的なものまでバリエーション豊か。痰の吸引器用のチューブにつけるCandyCapは、もともと手作りで自作販売されていた商品の製造が追いつかず、新工芸舎さんが3Dプリンターで作れるように再設計した人気アイテムなのだそうです。170年前の技術である湿板写真を3Dプリンターで再設計したカメラも見せていただきました。こちらのカメラは3月に発売開始を予定されているそう。

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上左)自然物を3Dスキャンし、その表面の凹凸にピタリと組み合わさる3Dプリントパーツを構成したのせ物シリーズ
 上右中)Tildeは熱溶解式3Dプリンタによって作られるプロダクトシリーズ


〈新工芸舎さんのプロダクト詳細はぜひ末筆のリンク先からご覧ください!〉

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 新工芸舎さんと同じく、京都を拠点にPlaRiaLというプロジェクトに取り組む松本さんからは、現在開発を進めている自作の射出成形機器を用いたプロジェクトを実践を交えてご紹介いただきました。
松本さんは以前、独立行政法人国際協力機構(JICA /ジャイカ)の海外協力隊としてボリビアを訪れた際、現地で大きな環境問題となっている、ごみの分別や収集、処理状況を目の当たりにし、資源のアップサイクルを目的としたプロジェクト「プレシャスプラスティックプロジェクト」を発案されたそうです。プレシャス(Precious)の語源「貴重な、尊い」という意味からもこのプロジェクトに込められた思いが伺えます。
実際にGJ! Center KASHIBAでも日々、メンバーが製造を行う、GJ! Center KASHIBAのオリジナルマスコット「Good Dog」などを製造する際に出る、樹脂モデルをバリ取りした端材やプリント不良モデルのを再活用できないかと考えていました。年間4,000体を超える張り子をつくり、これまで不要としてきた材料をどのように再生してものづくりを循環させていくのか、素材そのものを自分たちで生み出すプロセスを体験してみたいとの思いから、今回のリサーチプロジェクトでのコラボレーションが実現しました。

また、今回のワークショップは、高温な機器などを扱うため、専門知識を有する方たちにデモンストレーションをしていただきその様子をGJ! Centerのメンバーと共に観察・鑑賞しました。

▽ 射出成形の様子はコチラ!

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左)GJ!Centerの製造過程ででた樹脂の端材を細かく粉砕し、射出成形機に投入します。
右)端材を内蔵ヒーターで溶解し、ドロドロの状態にして抽出します。

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左右)溶解したドロドロの樹脂を分厚い型で形成・冷やし固めます
下)大方の熱が取れたら、型からとりはずします

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  今回は、アップサイクルの可能性を視野に入れた新しい技術や価値づくりの模索ということでマテリアルリサーチ&ワークップを行いましたが、下記のような発見を得ることができました。

得られた発見:
1. 攪拌(かくはん)しながらプレスするのではなく、混ぜながら抽出されるのでマーブル状の綺麗な柄ができる(大理石のようなパターン!)
2. 同じものが作れない(高いオリジナリティ!)

先進的な技術を取り扱う方たちとのコラボレーション企画でしたが意外にも今回の工法はプリミティブ。デジタルとアナログの領域を自在に行き来する発想や工法がこれから先の ”伝統工芸 ”をつくっていくのかも、そんなことを楽しみながら体感できた一日。観察・鑑賞していたGJ!Centerメンバーやスタッフも興味津々、楽しい不思議な連帯感も生まれ盛り上がりました。ご参加いただいたみなさんと共に、今後の展開や可能性についてアイデアを出しあい、この日のワークショップは終了しました。

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上)GJ!で発生した樹脂の端材が綺麗な柄に
中)GJ!メンバーが書いたイラストを判に形成した試作品
下)今回のプロジェクトの副産物


■ 今回のマテリアルリサーチ&ワークショップにご協力いただいた方たち 
新工芸舎:https://www.yokoitoinc.com
株式会社YOKOITO:https://www.form2.shop/about
FabLab KITAKAGAYA:https://fablabkitakagaya.org
PlaRiaL、京都芸術大学、GJ!Center KASHIBAメンバー



今回プログラムをコーディネートしていただいた新工芸舎さんの展覧会が3/8(火)〜マテリアル京都(京都市下京区)で開催されます。ぜひお立ち寄りください!

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新工芸舎 solo exhibition『新工芸展(店)』

日時:2022.3.8 (火) – 2022.3.26 (土)  11:00 – 19:00 (日月曜 定休)
会場:FabCafe Kyoto (MTRL KYOTO)
詳細:
https://fabcafe.com/jp/events/kyoto/2203_shinkogei-ten




福祉と全国各地の伝統工芸や職人技術をつなぐリサーチ&ワークショップシリーズ 

Good Job!センターとたんぽぽの家では、障害のある人と伝統工芸に関わる職人が互いの施設や工房等を行き来し、技術交流することを通して伝統工芸と福祉のこれからについて考え実践へと変えていく取り組みを行っています。福祉と全国各地の伝統工芸や職人技術をつなぐリサーチ&ワークショップシリーズは今後も続きます。ぜひ、noteやホームページからチェックしてみてください。

問い合わせ先
福祉と全国各地の伝統工芸や職人技術をつなぐリサーチ&ワークショップシリーズ担当 < nt@popo.or.jp >
助成:日本財団「障害のある人の表現と伝統工芸の発展と仕事づくり」




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