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[レポート]ものづくりスタディツアーin徳島 2日目

ものづくりスタディーツアー2日目。1日目に引き続き、建築家の高橋利明さんと徳島県の伝統工芸の産地を巡りました。

アワガミファクトリー/阿波和紙伝統産業会館【和紙】

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はじめに訪れたのは、阿波紙を製造している阿波和紙伝統産業会館。

ここでは実際に職人さんたちが紙漉きをしている様子を見学したり、手漉きや藍染めの体験ができます。
施設に入ると全面ガラス張りの作業スペースがあり、紙漉きの様子が見えるようになっていました。


2階に上がると、この作業スペースを上から見ることができ、紙漉きのさまざまな工程を学ぶことができました。
他にも展示スペースや多目的ホール、図書館もあり、さまざまなクリエイターによる作品展示や体験教室が行われているそうです。

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作業スペースは、主に紙漉き職人が作業をする場所として使用されており、紙漉職人の養成と研修もここで行われています。
毎回同じ厚みで紙を漉けるようになるには数年間の修行が必要で、初めは何度もやり直しになるのだとか。

また、普通の漉き方だけでなく、模様を描いたり色をつけたりと実験的な試みもされているそうです。
漉きあがった紙が乾かない間に、水滴を落としたり水を流したりすると、紙に水の流れが模様として残ります。濡れている状態では紙の繊維で絵を描くこともできるそうです。

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和紙の染めも盛んにおこなわれており、色とりどりの和紙が並んでいました。
阿波和紙は丈夫なので、出来上がってから染める後染めをすることができるそうです。布地でよく見られる藍染めや絞り染めもあり、和紙の丈夫さに驚きます。

アワガミファクトリー/阿波和紙伝統産業会館 http://www.awagami.or.jp/


-みんなの複合文化市庭-うだつ上がる

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次に訪れたのは、今回ツアーに同行していただいた高橋利明さんが運営する「-みんなの複合文化市庭-うだつ上がる」。

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築150年の民家を改装した複合文化施設で、高橋さんの建築設計事務所である「TTA+A-高橋利明建築設計事務所」や高橋さん自身がセレクトした商品が並ぶ雑貨店「WEEKEND TAKAHASHI STORE」が入っています。
その他にも別の方が店主となって、書店、古着屋、カフェ、ギャラリー、ワーキングスペースなど様々なジャンルのお店を展開。
「いろいろな人が間借りできる空間にしたい」という思いで、地域の人たちと関わり合いながら運営されています。

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設計事務所もお客さんから見えるようになっており、お店を営んでいるというよりも、自分も仕事をしているから自由に来て過ごしてもらってもいいよという感覚なのだそう。
地域の人と無理なく関わることができる、様々な人たちが交わる場になっているようでした。

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2階部分にあるのは、大阪初のクリエイティブユニット『graf』の設計業務を主とする徳島オフィス「graf awa」
grafオリジナルの家具やプロダクトを扱っています。

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また、ギャラリーも併設されており、今回は橋本貴雄さんの写真展『風をこぐ』が開催されていました。じんわりと心が暖かくなるような写真たち。ツアー参加者の数名も同名の写真集『風をこぐ』を購入していました。

現在ショールームやギャラリーのある2階部分では、今後別の本屋さんやマイクロシアターを始める予定もあるそうです。
ショールームとして家具を見るだけでなく、本を読みながらソファーでくつろげるようなスペースを目指されているとか。
これからも地域の人たちに愛される、素敵な空間を作っていかれるのだろうと思いました。

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-みんなの複合文化市庭-うだつ上がるhttps://www.instagram.com/udatsu_agaru/


武知家住宅

さて、高橋さんおすすめの徳島ラーメンのお店で昼食をとった後は、江戸時代から残る藍屋敷「武知家住宅」を訪れました。

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藍屋敷とは藍の栽培からすくも(藍染料)の製造・販売を行うために作られた建物で、門をくぐると藍を干すための広い庭があり、左手には藍を醗酵させる寝床、右手には商談も行われていた母屋がありました。
水がたくさん必要になるため、井戸も敷地内に3つあるそうです。

この武知家住宅は160年ほど前(江戸時代末期)に建てられており、国の重要文化財に指定されています。
今回は、現在もここですくもを作り販売しておられる武知さんに案内していただき、すくも作りについても詳しく教えていただきました。

畑で栽培された藍の葉は、まず庭で乾燥させます。緑色だった葉は半日程度で変色して、青くなっていくそうです。

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そうして乾燥させた藍は機械で2〜3cmに刻み、葉と茎を分けておきます。
10月になると藍寝床へ藍の葉のみを入れ、2月中旬〜下旬まで約4か月かけて発酵させます。

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藍寝床の中へ入ると藍の葉が積まれており上からむしろがかぶせられていました。
発酵させている4か月の間もそのままにしているわけではありません。1週間に一度、寝かせている藍全体に水をかけ混ぜ合わせます。作業は数名で行い半日ほどかかるそうです。
表面を触らせていただくとふかふかとした土のようで、少し温かさを感じました。中の方はもっと温度が上がっており、60度程度になっているそうです。

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最後に商売・商談のための施設、母屋を見せていただき、中でお話を聞かせていただきました。

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かなり年季の入った木箱を取り出す武知さん。手板箱といい、中には小さな丸が並んだ和紙が入っていました。手板法というすくもを水で練り、和紙に押して藍の色味を確認する手法があるそうです。昔はこの和紙を見せてすくもの値段を決めていました。現在は使われていないようですが、藍商としての歴史を感じる道具でした。

武知家住宅 https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/411235


Saai dye studio

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ツアーの最後に訪れたのは、芸術家であり藍染めの職人でもある田村美奈子さんの藍染工房「Saai dye studio」です。
田村さんは、江戸時代からかわらず続く“灰汁発酵建て”という技法で藍染めをされています。
工房名の「Saai」は「冴えた藍」のこと。京都市立芸術大学と古庄染工場で 学び磨いた感性と技術で、一点一点丁寧に染物を作られています。

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工房の中へ入ると大きな甕(かめ)が3つあり、その内の2つには染料が入っていました。この2つの染料は少し色合いが変わっており藍を建ててから(すくもから染料として使えるようにすることを”藍を建てる”と言います)どれくらい使用したかによって変わるそうです。染めを繰り返し、布へ色素が色素が移っていくことで染料の色も薄くなっていくのだとか。

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田村さんは、学生時代から藍染の技術を学ぶため徳島へ通っていたそうです。学生時代の研修で本物の藍染めのに出会い、化学的に作られた染物との違いに衝撃を受け藍染めの道へ。今でも江戸時代から変わらない技法を使って藍染め商品を作り続けています。

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今回のツアーでは田村さんのご厚意で藍染めの体験もさせていただきました。大判のハンカチを折り畳んだり、木の棒とクリップで一部を挟み、それぞれ模様が出るように染めました。

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染料に浸けた時は青というより緑のような色をしていて、浸けておく時間によって色の濃さを調節できるそうです。ただ浸けておくだけだと重なっている部分が染まっていなかったりと意外と難しいと感じました。

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浸け終わったハンカチを水の中でしばらく洗うとこんなに鮮やかな藍色に。
色の変化にとても驚かされました。折り方や浸け方などでそれぞれの模様ができており、それも面白かったです。

最後に思いがけない素敵なお土産をいただき、ツアーは終了しました。

Saai dye studio http://saai.biz/


2日間という短い時間でしたが、徳島のものづくりに関わる人たちに出会い、刺激的な時間を過ごすことができました。

皆さん、見学にきた私たちに対して色々なことを語って聞かせてくれました。それぞれが持たれている想いや技術に、少しでも触れることができてとても勉強になりました。

(リポート:Good Job!センター香芝 杉田夏希)


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