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「コワーキングスペース+保育室」働く女性を応援するキャリア・マムが提案する新しい働き方

日本全国11万人の女性が会員として登録し、20年以上にわたり「女性の働く機会」をつくってきた「株式会社キャリア・マム」。そんなキャリア・マムが2018年にはじめた新しい働く場所のカタチ、それが『CoCoプレイス』です。「コワーキングスペース+保育室」というユニークな形態の施設は、キャリア・マムならではの発想で誕生しました。代表の堤さんに、CoCoプレイスのことや、働く女性の環境などをうかがいました。


■『CoCoプレイス』をはじめた理由

―「CoCoプレイス」をはじめようと思ったきっかけを教えてください。

堤さん:私は子どもが3歳の時に起業しました。保育園に預けながら仕事をしていたこともあり、仕事と子育ての両立に苦労しました。その頃は、仕事と子育ての両立が難しい時代でした。音楽会やクリスマス会といったイベントでの子どもの様子は見ていたのですが、普段の子どもの何気ない様子は記憶にないんですよね。特に、会社の起ち上げ時で忙しくしていたのもあり子どもの記憶が全然残っていないことに気づいたのです。子どもが大きくなってから、残念なことだったなと思いました。
そんな自分の経験もあったので、働いている女性が、何気ない子どもの様子を見られる施設があったらいいなと思い「CoCoプレイス」を作りました。

また、夢を追う女性を支援したいと思ったこともきっかけの1つでした。
最近は、女性でもビジネスをやってみたい方が多いのは感じていますが、ビジネスをやるなら、早く始めた方が良いと思うのです。なぜなら、ビジネスはうまくいかないことの方が多いからです。年齢が上になってからうまくいかないことがあると、再チャレンジするのがしんどくなっちゃうんですね。でも若いとき、例えば子どもが小さい時や結婚したばかりの時という若い頃のチャレンジだと、もしうまくいかなくても、また何回でもチャレンジすることができると思います。

―― CoCoプレイスを企画・運営する上で、工夫していることなどありますか。

堤さん:施設の内容を考える際に、東京都の創業担当の方とお話しする機会がありました。当時サテライトオフィスは働く人々に焦点が当てられていましたが、その一方で働く人の子どもや家族をケアするという視点は欠けていたようです。そこで、「もう少し女性や女性の起業家に優しい施設があればいいかもしれない」との考えから、CoCoプレイスを作っていきました。

認可保育園の場合は、利用する上での細かいルールがあります。例えば、子どもに習い事をさせたいと思って、保育園から一度ピックアップすると、同じ日にもう一度預けることができない場合が多いです。CoCoプレイスでは、そういうことに制限はかけていません。

保育所は子どもも親も両方幸せであることを大前提としています。最近は、親子の幸せということで、お母(父)さんたちが疲れていたりしているのもサポートしていきましょう、という考え方に変わってきていますが、どうしても子どもの方のプライオリティが高くなりがちです。
親は大人なので「子どもの方に合わせてあげましょう」という感じになってしまうところはありますが、父親であれ母親であれ、親は子どもからのエネルギーをもらっていると思っています。例えば自分が365日、すべて子どもの面倒を見ていなくても、人に預けながらでも子どもを育てながら自分のキャリアを積むことで、お父さんお母さんも誇りが持てるんじゃないかと思いました。それで、仕事をする場所のすぐ横に保育室がある形の施設を作りました。

多分、CoCoプレイスほど仕事場と保育室が近い施設は少ないと思います。他の保育園ですと、親が近くにいても子どもは親がどこかへ行ってしまうのではないかと思って泣き叫ぶことも見られますが、CoCoプレイスではそれはありません。
子どもたちと大人が使うエントランスは同じで、散歩の際も子どもたちは仕事場の横を通って出入りしますが、例えば子どもが季節の花を積んできて、仕事をしているお父さんお母さんのデスクに寄ってお花をポンって置いてちょっと誇らしげに保育室へ帰っていったりするんですね。
そういう空間を作ることができて本当に良かったです。
「お父さんお母さんもお仕事を頑張っているからこっちの部屋でおりこうに(保育士さんの)お話聞こうね」と言うと、1歳2歳の小さい子どもも自立していて、自分と保育士さんとの時間を楽しんでいるというのはあります。

―― CoCoプレイスは、どんな方が利用されていますか。

堤さん:子どもがいなければ利用できない施設ではないので、女性、男性、お一人で事業している方から法人登記している方まで、いろんな方がいらっしゃいます。シニアの方でリタイア後の人生設計を考えてらっしゃる方もいれば、起業した大学生さんにも使っていただいています。

―― CoCoプレイスを利用された方の感想などあれば教えてください。

堤さん:保育室を使っている方にとっては便利ですよね。ここ(ココリア多摩センター)は親子で車で来て、保育室に預けて自分は隣の部屋で仕事をする。駐車券サポートも使えます。何か気になることがあれば保育士さんが「お母(父)さんちょっといいですか」と声をかけてくれます。預けたら絶対保育室に入ってはいけないというルールもないです。

親御さんが見ていないから虐待が起きたというニュースもありますが、ここは見えているので、起こりようがない、という安心感もあると思います。
また商業施設内にあるので、6階にはレストラン、地下にはフードコートもありここで1日過ごすこともできます。以前はオープンの朝8時からクローズの夜22時まで利用されていた方もいました。
長くいても疲れないのは、内装の木の感じや、靴を脱いでくつろいで仕事ができるから、というのがあるかもしれませんね。

あとは、1,2ヶ月に一度くらい、皆さんで交流会を開催しています。CoCoプレイスを開設して5年目になりますが、5階の「お仕事カフェ」では手作り系のクリエイターの方の展示販売をしているのですが、5階の方とCoCoプレイスを利用している方が受発注で協力しあったり、共同でセミナーを開催したりというコラボなども始まっています。

――CoCoプレイスの今後の展開や目標を教えてください。

堤さん:スタートしてしばらくは順調だったのですが、コロナ禍でお客さまが計画通りに来られなくなってしまったというのがありました。兼業副業をする方も増えているので、法人登記の住所として利用されるお客さまが増えると良いと思っています。

くつろいで仕事ができる人気の畳スペース

■「女性が働く環境」について

――(企業において)女性が働く環境は変わってきていますか? またはよくなってきていますか?

堤さん:働く環境は確実に向上していると感じています。特に若手の女性が職場で実力を発揮できるようになっています。学校のカリキュラムも変わり、例えば40代ぐらいの人までは家庭科と技術などが男女に分かれていたと思うのですが、そういうことがなくなり、応援団長や生徒会長を女性が務めたり、教育現場では男女の差がほとんどなく、むしろ女性が主導しているケースも増えています。これが企業においても反映され、中小企業では男性より優れた人材も多いと感じることもあります。

雇用に関して言うと、例えば産休・育休中は100%給与を支給する会社も出てきていますし、中小企業は女性の従業員がとても大事だというのもありますから、会社も経営者も人をすごく大事にするようになってきていると思います。
だから女性は困ったことがあった時に、自分で勝手に思い悩まないで、まずは周りに「自分はこうしてくれると嬉しいんだけれどもどうだろうか」と交渉してみると良いと思います。

―― 保育園の間はともかく、いわゆる「小1の壁」、学童が終わった後の「小4の壁」に苦しむ女性も多いと思いますが、それらと上手に向き合う方法があればアドバイスをお願いします。

堤さん:保育園のときは18時、あるいは19時と遅くまで預かってくれますが、小学1年生なると学童に行っても17時くらいに帰宅しますよね。この1,2時間の差って結構違うと思っています。
私はその部分をサポートしてくれる方、ボランティアさんにお願いしていました。出張なども助けていただいて、変則的な勤務の時も柔軟に対応していただいたりと、すごくありがたかったですね。
小1の壁、小4の壁については口を開けて待っているだけではどうにもならないというのが、残念ながら現状です。だからこそ、自分から行動する、誰かサポートしてくれる人はいないか周囲をあたる、そういった動きが大事だと思います。

■「女性の起業」について

―― 起業する女性は増えていますか?

堤さん:副業が認められるなどダブルワークがしやすくなったこともあり、起業を考える女性の人数は増えているなと感じます。雇用されている以外に、なにか別のことをやってみたいと考える人が増えている印象ですね。CoCoプレイスでは「ココチャレ」という創業支援の勉強会を毎月1~2回ほど開催しています。将来的に上場を視野に入れてというよりは、自分がやりたかったことを確実に形にするためにはどうしたらいいか、そこに向けて自分のペースで進めていこうといった内容になっており、参加者の大半が女性です。

―― 女性経営者の先輩として、女性がビジネスで成功するために心がけた方がよいことは何だと思われますか?

堤さん:ビジネスの成功を、どのレベルで考えるかにもよりますが、男性・女性関係なく、やはりビジネスはお客様からお金をいただいて大きくなるものですよね。売上の中の原価と経費と利益を合わせて100とするならば、どういう風にバランスをとっていくかを考える。また、それらを考える上で心身および健康面、それから周りに恵まれるか否かという点も大きく関係しているのではないかと思いますね。

もうひとつ、面白いなと感じていることがあって、何かを成し遂げようとすると必ずと言っていいほどトラブルが起こるんですよ。私はそれを「振り子の理論」と呼んでいるのですが。例えば、成長しそうになると、それを引っ張るような出来事が起きます。大変な病気になるとか、子どもの面倒をみてもらおうと思っていた親がいきなり倒れるとか、旦那さんが単身赴任になっちゃったとか、神様が大きく変化しないように働きかけるようなことがあるんです。
トラブルが起こってマイナスの方向にぐっと引っ張られたら、それをもう一回プラスの方向に戻さなきゃいけない。そうじゃないと、成長しないですよね。ただ、そうしたトラブルが起きたときに「やっぱり私にはまだ早いんだ」「これはやるなというお告げかもしれない」と諦めるための口実を探してしまう人が多いように感じています。

特に女性は男性に比べて大事にしたいものが複数ある傾向が強いと感じていて、ビジネスに関して言えばもっとシンプルに単純でいいと思うんですよね。ビジネス、家族、自分の健康、これらを複雑に組み合わせて考えるのではなく、例えばここから先1か月は家族を優先しよう、そのあとは半年間ビジネスに注力しようといった具合に時間で区切って考えると気持ちが楽になるんじゃないかと。時間で区切るといったことが、男性に比べて女性はちょっと苦手かなと感じます。なので、ビジネスに関してはあれこれ複雑に考えずに、時間で区切って進めていくことが成功の秘訣だといえるかもしれません。

女性管理職研修で話す機会がありますが、周りの意見に過剰に気を使いすぎる人は向いていないと感じます。逆に、「私、けっこうだめなんです」と素直に認め、抜けている部分に気づく人の方が管理職向きかもしれません。全てを一人でこなそうと頑張りすぎると、途中で挫折しやすい傾向があります。女性は細かいところまで見えてしまうので、どうでもいいことは切り離せばいいのに、切り離せない人は多いな、と思います。

成功から学ぶことよりも、失敗から学ぶことの方がたくさんあります。『100万回生きたねこ』の話ではありませんが、私は生まれ変わっても経営者をやると思うんです。それぐらい経営者は面白いからです。どうせ1回しか生きられないのなら、上手にできることよりも面白い人生を追求すべきだと考えます。女性は自分が上手にできることを優先してしまう傾向があり、それがもったいないと思います。男性の方がロマンがあると感じます。例えば、大企業で働いていた人が定年の2、3年前に辞めてラーメン屋を始めたりするのは面白いと思います。女性は自分ができることの範囲内で考えがちですが、もっと広い視野で人生を楽しむことも大切です。

―― 堤社長ご自身は、どのようなきっかけで会社をつくられたのですか。

堤さん:32歳のときに、多摩で新しいコミュニティを作っていきたいので事務局を担当して欲しいとの依頼を都市公団の方から受けました。その際に条件として「法人であること」が提示されました。私は「子育てママサークル」のような団体を運営していたのですが、任意団体には公団からお金を振り込めないので法人化が必要であると相談されました。しかし、資本金を用意する余裕がなかったため、信用金庫や都民銀行に相談し、また中学時代からの友人で現在も当社の監査役を務めている方に資本金の調達方法を教えてもらいました。

私は、基本的にわかるからやる、ではないです。やらなきゃいけない時に、どうしたらいいのかを誰かに教えてもらい、うまくいかなかったらアプローチを変えてみるというやり方なのです。
一歩踏み出すことができない方の多くは、失敗するのが嫌なんですよ。ただ、できないことは怖いことじゃないんですよね。女性は自分ができる範囲内のことをやりたいという傾向が強いと思っています。

CoCoプレイスから眺める多摩センターの景色

■キャリア・マムの目標

―― キャリア・マムさんが、今力を入れていることやビジョンについて教えてください。

堤さん:キャリアアップの一環として、スキルをしっかり自分のものとして身につけてほしいと考えています。学ぶだけで終わってしまうと意味が無いので、それをきちんと使えるようにしていく、そのための活動に力を入れています。特にITの分野では5年前、10年前のスキルだと陳腐化してしまうんです。自分の筋肉にするような学びを重ねていく、スキルをきちんと稼ぎにつなげていって欲しいですね。
また、働く人が自分らしく活躍できるようにサポートするため、事業開始当初は在宅ワークの紹介を中心としていましたが、現在は派遣の紹介免許も取得し、雇用就労までを含むひとり親のサポートなどにも力を注いでいます。将来的には、シニアの方々がより活躍できる機会も増やしていくことを考えています。

―― 最後にこの記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

堤さん:男性であろうが女性であろうが、健常者であろうが障がい者であろうが、ワクワクする未来を夢見ることを諦めないでほしいですね。また、ワクワクする未来を作るためのひとつの手段として「働くこと」があって、働くことで周りを笑顔にしたい、何か役に立ちたい、そういった気持ちにつながれば自分が生きていく上での喜びにもつながるんじゃないかなと思っています。
チャレンジしなかった後悔の方が、チャレンジしてうまくいかなかった時の後悔より大きいと思います。ちょっと自分には難しいかもしれないということにも、やりたいと思ったら「はい」と手を挙げてチャレンジしてみると良いのではないでしょうか。チャレンジすることに無駄はないと思っています。

―― 本日はお忙しいところ貴重なお話しを聞かせていただきありがとうございました。

働きたい女性のためのコミュニティサイト
おしごとカフェ キャリア・マム

コワーキング CoCoプレイス
〒206-0033 東京都多摩市落合1-46-1 ココリア多摩センター 7階
TEL:042-400-6975(10:00~17:00)
URL:https://www.c-mam.co.jp/cocoplace/
運営会社:株式会社キャリア・マム
代表者:代表取締役 堤 香苗氏


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