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16大哲学者を漫画でまとめる(2)

  第5話から近代認識哲学がはじまる。

  まずは17世紀フランスのルネ・デカルト。

第5話 我思う。ゆえに我あり

   「刑事は人を疑う仕事」という言葉があるので、1コマ目に刑事(デカ)ルトをもってきた。何でも疑い、炉部屋の中で何かを発見する。“事件があったことすら疑い”と書いたが、「方法序説」では徹底しており、自分が何者かに騙されて生きてるのではないかとまで疑っている。

  すると、炉部屋が光ったり消えたりする神秘体験を感じたという。うずくまって火を見つめていたら閃いたようなイメージがあるけれども、この先、世界が劇的に変わるきっかけとなったほどの大事件、決して軽い思いつきではない。まるで火の中にいるプロメテウス神かモーセに現れた熾天使(してんし)セラフィムのような超自然的な何かが関与してのではないかと思われるほどである。

  後半のクリスティーナ王女については非常に面白い話なので載せた。各々自分に置き換えてみるといい。24歳の異国の王女があなたのファンですと3通も手紙を送り、部下の将軍がわざわざ軍艦でお迎えに来る。嘘のような本当の話である。

第6話 「タブラ・ラサ」

  17世紀のイギリス。ジョン・ロックは議会派の大物政治家、シャフツベリ卿の侍医という形で政治活動をしたが、当時の王党派vs議会派の争いが激化する中でともにオランダに亡命した。卿はそこで没したが、ロックは名誉革命の後に新国王夫妻とともに帰国、著書を次々と発表したので、1コマ目を船で始めた。 
  あまりこういう見方はないのだが、ロックの政治論と人間哲学とを結び付けるものこそ観念連合であり、議会で議論を尽くせばより良い観念連合ができる。逆に王政では観念連合が進まず固定的で悪政となる。同様に経済も市場経済の方が観念連合もより練り上げられる。だから次のヒュームはアダム・スミスと仲良くなった。

第7話 「かもしれない」

  18世紀イギリスの哲学者、ディビッド・ヒュームについては日本での知名度が非常に低い。ツィッターでもヒュームbotはない。
  しかし、ドゥルーズ同様に私はヒュームの哲学を評価しており、次のカントを語る上では避けては通れないので掲載した。案の定、いいねは1人しかつけていない(9月末現在)。
  自己満足と言われればそれまでだが、最初にロックの幽霊が登場してたった1コマでヒューム哲学をまとめた方法は画期的手法だと思う。
   実際、若い頃のヒュームはロックの本に感銘を受け、たった一人で哲学していった。背景を黒く塗り潰したが、闇の中を模索していったことだろう。心の友は故ロックのみ。そんな孤独な様子を描き出そうとしたところ、天使の輪をつけたロックが現れた。4コマ目で今度はヒュームの頭に天使の輪がつく。
  そして、「神のおかげ」「悪魔のせい」など宗教の因果律を「かもしれないとしか言えない」と否定したことは何ら間違いではないのだが、当時は無神論者だと烙印を押して学界が冷遇した話を3コマ目に。4コマ目では、有名な無神論者なのに、ナンシーという知人の女性がヒューム宅の壁に「聖ディビッド」と落書きをすると、執事は怒ったものの本人は宥めて嬉しがり、そのまま通りの名前として残る話にして結んだ。イギリスらしくて良い。


第8話 「二律背反」

  ついにカントまできた。第1話「存在論」から始まった、人間が認識していく話はここで終了する。次回からは行動や実存に関する哲学が始まる。
  さて、カントというと「純粋理性批判」などの3大批判書をはじめ難解というイメージが強いけれども、カント→ロック→ヒュームと見ていくと非常に少量でエッセンスを要約出来るし、今回さらにヘーゲルまでオーバースピンしてしまった。
  読めば「二律背反」もそんなに難しいとは思わないはずだ。有難がるほどのものでもない。ではなぜ、ツィッターでウケない漫画をずっと連載してるのか?となるが、前回述べた通り16話まで書くと哲学史が一周して完成する。
  つまり、哲学史をたった10分ほどで全部わかることになる。
  多くの人々が読めば、全体的な知的レベルが上がるだろう。
  多くの人々が読まなくとも、次代の日本大統領となる人物が、哲学史ぐらいは知っておいてほしいのでこれを読んであとの時間は経済や政治を勉強してほしい。

 そもそも哲学は必要不可欠なものだからこそ人類は受け入れ、知的に進化し、今も新しい哲学を必要としている。

  戦前は哲学的に貧しかったからこそ軍部が暴走し、戦後は哲学者が多数輩出したからこそ発展した。

  やがて80年代頃から哲学者は少なくなり、その穴にカルトが入り込んで政治家や人々のカネや心を食い荒らし、今まさに非常事態となっている。

  カルト批判も盛んになったが、それは当然としてもしっかりとした論理や哲学に裏打ちされた新しい何かを導入しないから政権与党はグラグラになったのである。


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