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至高のバンド「SUPERCAR」Vol.2:スリーアウトチェンジ

この記事をご覧いただきましてありがとうございます。


さて、以前の投稿より、自分の好きなことを楽しく書いてみようということで、趣味の音楽について【短期集中連載】を開始しております。

テーマはズバリ、

”至高のバンド「SUPERCAR」”

SUPERCARは、90年代後半から2000年代にかけて日本の音楽シーンで活躍したバンドであり、数多のアーティストの中でも私がトップクラスで好きなバンドであります。

なお、SUPERCARの説明や魅力については、Vol.1でたっぷりと紹介していますで、ぜひご覧ください👇👇

Vol.2以降は、SUPERCARが発表したオリジナルアルバムについて1枚ずつ魅力を深掘りしていこうと思います。

ニッチなテーマですが、少しだけお付き合いいただけると幸いです。

ちなみに、Vol.1では想いが溢れすぎて、さっそくとんでもない文字数を書いてしまったので、これ以上ハードルをあげないようサクッと書くように意識します…

まず最初は、1stアルバム「スリーアウトチェンジ」について書いていきます。

1st.スリーアウトチェンジ
2nd.JUMP UP
3rd.Futurama
4th.HIGHVISION
5th.ANSWER

ちなみに、Vol.1でも書いたようにSUPERCARはアルバムごとに音楽性を大胆に変化させています。私自身も、解散後のシングル集「A」でその変化に衝撃を受け、まずはどのオリジナルアルバムから聴いていこうか悩みましたが、SUPERCARを知るきっかけが2ndシングルの"Lucky"という曲だったので、まずはそれが収録されている「スリーアウトチェンジ」から手に取りました。

結果的に、そこからはオリジナルアルバムを発売順に聴くことになりましたので、今後も順番通りに記事を作成していこうと思います。

「スリーアウトチェンジ」の概要

「スリーアウトチェンジ」ジャケット

「スリーアウトチェンジ」は1998年に発売されたSUPERCARの1stアルバムであり、デビュー以降に発売された3枚のシングルを含む全19曲が収録されています(19曲!?と思った方、後ほど説明します)

この「スリーアウトチェンジ」というタイトルは、3枚のシングルを出した後に次に向かうといった意思表示の意味が込められているそうです。

発売当初は10万枚ほど売り上げた後にロングヒットを続け、最終的には20万枚を売り上げたそうです。当時のミリオンヒットがバンバン出ていた音楽シーンでは埋もれがちですが、キャリアや音楽ジャンルを考えると結構売れたほうだと思います。

そして、この「スリーアウトチェンジ」は1stアルバムにして、現在まで邦楽史に残る”名盤”として語り継がれています。

といっても、SUPERCARのアルバムは全て完成度が高く、どれをとっても名盤と言われているんですけどね。

その中でも特に「スリーアウトチェンジ」は、音楽業界やコアな音楽ファンからの評価が高い作品として一定の知名度があります。

このアルバムが名盤と言われる所以は、1回通しで聴いてみれば分かってくると思います。それくらいの分かりやすい魅力とパワーが伝わってきます。

ということで、私自身のSUPERCAR入門でもあった「スリーアウトチェンジ」について、私なりにいくつか説明していきます。

”1stアルバムらしさ”が全開

音楽界において1stアルバムは、アーティストの本質が表れやすいものと言われています。

そのアーティストの初期衝動・荒削り感・自由さ・世界観・思想などが色濃く表れ、アーティストの歴史を辿っていく中でも1stアルバムが名作と謳われることが多いです。

それゆえ、音楽界の名盤に1stアルバムが多いのは、そういった理由があるのです。

少し話は逸れますが、私が好きな1stアルバムで、まさにそれらの要素が全面的に表れているのが、andymoriの2009年発売の1stアルバム「andymori」だと思っています。

「andymori」ジャケット

andymoriもまた、私が大好きなバンドであり、このアルバム「andymori」も音楽界では名盤と謳われています。

型にハマらない自由で前衛的なサウンド、マシンガンのような言葉数、Vo.小山田さんの思想感が伺える歌詞など、まさに"衝動"という言葉がぴったりのアルバムです。

その後andymoriは徐々に角が取れていくといいますか、J-POPとしてのまとまりや優しさを帯びた音楽性に変化していきますが、それでも時折1stの雰囲気を感じることがあり、andymoriや現在の小山田さんのソロ活動においても、この1stアルバムがマスターピースであることは間違いないと思います。


また、私が全ての音楽の中で1番大好きなスピッツについても少し。

「スピッツ」ジャケット

1991年のデビューと同時に発売された1stアルバム「スピッツ」について、売り上げは芳しくなかったものの、音楽業界の一部からは高い評価があったようです。

というのも、まず、このジャケットですよ。デビューしてこれから売り出していこうとする人達のものじゃないですよ。今でこそメンバーが映らないジャケットがスピッツのアイコンになり邦楽界でも一般的になりましたが、当時のメジャーシーンではかなり珍しかったようです。

また、収録されている楽曲もすごいです。スピッツは"性"と"死"という後ろめたいテーマをポップに昇華させた楽曲が特徴的ですが、アルバム「スピッツ」ではまだポップさが薄く、"性"と"死"がとても色濃く出ています。

まさに、今日まで活躍し多方面に影響を与え続けるスピッツという大河の”源流”とも言えるアルバムです。

それゆえ、当時は衝撃的なデビューとして業界から大プッシュされていたようであり、現在でも一部ではファーストアルバムが最高傑作という声もあるようです。

私も今でこそこのアルバムを面白く聴けますが、小さい頃はこのアルバムが不気味で怖かった記憶があります。

スピッツのことを"さわやか""青春"と言っている人に、このアルバムを聴かせてあげたいくらいです(笑)

話を戻しますが、SUPERCARも例外ではなく、この「スリーアウトチェンジ」はまさに上記のような1stアルバムらしさ全開の攻めたアルバムになっています。

というのも、このアルバムは最初から最後まで、荒削りながらもノイジーで瑞々しいギターサウンドで一貫していて、同じようなテンションのまま突き抜けていくイメージです。

1曲目からいきなりデビュー曲”cream soda"で始まり、まさに"スーパーカー"のエンジンの如くワクワクするようなロケットスタートを切っていきます。

また、歌詞を見てみると、全曲の作詞を担当しているGt.いしわたり淳治さんの、20歳前後とは思えないセンスが光っています。

どちらかというと抽象的な歌詞が特徴のSUPERCARですが、このアルバムでは、若者の卑屈でちょっぴりダサくてイキっている描写が目立つ一方で、センチメンタルで悲観的な表現をしていることもあり、その振り幅の広さで才能を大いに発揮しています。

なお、後のSUPERCARの音楽性の変化にあわせるように、いしわたりさんの歌詞も変貌を遂げていきます。解散後も作詞家として大活躍されますが、その歌詞を見てみると「スリーアウトチェンジ」期の雰囲気を感じることが多く、いしわたりさんのキャリアをみてもこの時期が原点であることが伺えます。

それらの歌詞をフルミキさんの儚い声で歌われるとドキドキしてしまうのですが、一方でナカコーさんの気怠いボーカルは程よくサウンドに溶けこみ、いい意味で歌詞の主張がありません。

これらのことから、私はこのアルバムを最初に聴いた時に、まるで洋楽のアルバムを聴いているかのような感覚になりました。

まさに「シューゲイザー(※)」という洋楽で流行した音楽ジャンルを邦楽に踏襲したようなアルバムになっています。
(※)90年代初頭に登場した音楽ジャンル。轟音をかき鳴らし、籠ったようなボーカルで、荒々しくも浮遊感が漂うようなサウンドが特徴。

実際の演奏動画を見てもナカコーさんは下を向きがちなので、本当の意味でも「シューゲイザー(靴を見る人)」でした(笑)

斬新な試みの数々

また、収録曲が全19曲で収録時間が78分超の大ボリューム。これはデビュー前に制作した約300曲あるストックの中から厳選し、意図的にCD容量の限界まで詰め込んだようです。こんなアルバム他に見たことありません。

ラストの曲#19”TRIP SKY"に至っては約13分という超大作で、終盤にかけて壮大なバンドサウンドで盛り上がっていく途中でプツッと突然終了してしまいます。CD容量を逆手にとった手法だと思うのですが、私、こういう不意をつくアレンジが大好きなのです(3rdアルバム「Futurama」#12”ReSTARTER"でも似たようなことをしています)

どのアーティストでもアルバムには大なり小なりコンセプトを持たせるものであり、収録曲も10〜13曲ほどが一般的だと思っていたのですが、それらの概念が通用しないような相当ぶっ飛んだアルバムではないでしょうか。

それでいて、レコーディングはほぼ1発録りだったそうで、恐らく多少のミスやズレはそのままに、音源からライブ感が味わえるものになっています。

また、若くして経験が浅いうちにデビューしたこともあり、当時は他のバンドと比べて演奏技術について言われることがあったようですが、その稚出さも逆に味になっているようにも感じます。

これらの試みは、一定の経験やキャリアを積んだら出来なくなってしまうことだと思います。まさに、初期だからこその攻めに攻めまくった内容になっています。

色々書いていきましたが、見方を変えれば、その時の空気感・充実感・エネルギーをとにかく詰め込みまくることで、溢れるほどの青春の瑞々しさ・青臭さ・気怠さを表現した、ある種のコンセプトアルバムなのだと思います。

普通はこれだけのボリュームがあって終始同じようなサウンドが鳴り響くと、中弛みしたり途中で疲れてしまうものですが、不思議とこのアルバムは飽きずにスルッと聴けてしまいます。

際立った曲が少ない印象も否定できませんが、逆を言えばストレスなく一定のテンションのまま聴くことができます。

あくまで素人考えですが、収録曲順の合間でバランスよくシングル曲が配置されていたり(#1”cream soda" 、#4"DRIVE" 、#8"Lucky"、 #15"PLANET")、時折フルミキさんの女性ボーカルの曲が入っていたりと、実は没入度と抜けのバランスがいいアルバムなのではないかと感じています。

また、アルバムを通してノイジーなギターサウンドを貫いているのと同じように、歌詞を見ても全体を通してテーマが一貫しているように感じました。

まるでアルバム全体が1つの組曲になっているような印象です。

なお、本記事で曲単体の紹介や文面が少ないのは上記のような理由があるからです。1曲1曲が際立つというよりは、アルバム全体で1つの作品という印象を持っているからであります。

攻める姿勢を持ちつつ、バランス感覚も忘れないという点もまた、このアルバムが名盤と言われる所以なのかもしれません。

気怠くも輝いている”青春”

このアルバムの印象は、ジャケットのイラストに表れているように、青く瑞々しい青春を感じるようなアルバムです。

それでいて、今聴いても古さを感じず、エバーグリーンで色褪せない青春が確かにそこにあったことを証明しているかのようです。

ですが、決してハッピーでキラキラした青春ではなく、どちらかというと内に篭って外の世界に憧れているような、はたまたハッピーでキラキラした青春に鬱陶しさを感じているかのような気怠さのほうが強く感じます。

1番分かりやすいのは、サウンドや歌詞だけでなく、ナカコーさんのボーカルがそう感じさせるからだと思います。

でも、私としては、そういう熱量のほうがむしろ響くのです。

私自身の学生時代も、側から見れば部活に打ち込んでいる青春全開の少年に見えたかもしれませんが、本当は音楽の世界に閉じこもっていた、いわゆる陰キャ側の人間でしたので。

SUPERCARの音楽を聴いていると、自分の殻を破れない湿って鬱々とした思いを音楽で表現しようとする青春を感じることができ、若い頃の自分はそれに深く共感しました。

また、先に書いたように、このアルバムに時折フルミキさんの女性ボーカルの曲が入っていることがエッセンスになっていると感じています。

このアルバムにおけるフルミキさんのボーカルは、主人公(リスナー)からすれば"憧れ”のようであり”幻”のような存在であるとも解釈できます。

まるで、ナカコーさんがこのアルバムで歌い続けている想いに対して、時折顔を覗かせて反応しているかのようであり、なんとも言えないセンチメンタルな心を揺すぶられます。

そして、このアルバムに漂うそれらの情景を1曲に凝縮したのが#8"Lucky"なのではないかと思っています。

内気で臆病で、お互い素直になれない者同士の不器用なやり取りが目に浮かびます。こういうのって当時は後悔が強く残りますが、時が経って思い返してみると”青春”だったなあってしみじみ思うんですよね。

それを男女ツインボーカルで表現するからこそ一層リアリティがあり、リスナーの感性を揺さぶるのです。

当時、こういった曲はかなり斬新だったと思います。一聴しただけでも相当なインパクトがありますし、それでいてメロディも歌詞も素敵です。

公式Youtubeチャンネル内でも再生回数がダントツのようですし、様々なサイトやコラムを見てもこの曲は1番知名度がありそうです。私も他人にSUPERCARの音楽をお勧めするなら、まず”Lucky"を勧めると思います。

私個人の感覚ですが、”Lucky"やこのアルバムが単なる”懐かしい”で終わらないのは、まるで昔観た映画のような、純粋無垢な気持ちを思い出せそうなノスタルジーな感情にさせてくれるからではないでしょうか。

さらに、先述のとおり「スリーアウトチェンジ」を1つの組曲としてみるなら、このアルバムのハイライトでありSUPERCARの初期ギターロック期の到達点が#15”PLANET”ではないかと思っています。

このアルバムの中では1番J-POPらしいといいますか、分かりやすいサウンド・メロディ・歌詞であり壮大なバラードになっています。

それでいて、楽曲のテーマはあくまでも「スリーアウトチェンジ」と通じており、その世界観を踏襲した1つの完成系なのだと思います。

個人的な見解ですが、この曲を生み出せたからこそ、当時のギターロックサウンドに区切りをつけ、バンドが次に進むことができたのではないかと推測します。

1stアルバムにして”分岐点”

さて、上記で書いたとおり「スリーアウトチェンジ」というタイトルに次へ進むという意思表示が込められているように、SUPERCARのキャリアを見ていると、このアルバムが1stにして1つの分岐点であることは間違いないようです。

というのも、次のアルバム「JUMP UP」では、サウンドアレンジにさっそく変化が見られます。

プロフィールを見ると、以前から興味があった打ち込みなどをこのアルバムから大胆に取り入れるようになり、アルバムの雰囲気も1stからガラッと変わって、また違う魅力や面白さが出てきます。

そう考えると「スリーアウトチェンジ」で既存の膨大な量の楽曲を出し切って次に切り替えるという”潔さ”もまた、SUPERCARの魅力の1つなのかもしれません。

細かいことをいうと、後に企画盤「OOKeah!!」「OOYeah!!」がリリースされ、デビュー前に制作された膨大なストック曲がさらに放出されることになります。今回は割愛しますが、この2枚のアルバムも非常に面白い内容なので、今後小出しで紹介できたらと思っています。


ということで、”青春”に区切りをつけて次のステージへ進む2ndアルバム「JUMP UP」について、次回のVol.3でたっぷりと紹介します。

それでは。

乱筆にて

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