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「ソサイチ」というスポーツの形 地方だからできる新たなリーグのあり方

「プロ」でも「アマチュア」でもないエンタメスポーツを目指す7人制サッカー「ソサイチ」。九州の非都市圏でもチームが発足し続け広がりを見せるソサイチリーグはどのような展望を描いているのだろうか。九州リーグの立ち上げを担い、脱サラ独立してその発展を追求する九州リーグ代表の川西純一氏に話を聞いた。


【この記事に登場する人】
川西 純一(かわにし・じゅんいち)。大手医療機器メーカーブランドマネージャーから独立し、合同会社マイノフィールドを設立、同社代表を務める。2018年ソサイチ九州リーグ立ち上げから代表。ライフワークとしてアスリートキャリアサポート、事業支援を行う。


-川西さんが代表をされているソサイチ九州リーグについて教えてください。

「ソサイチ」はブラジルを発祥とする7人制サッカーです。国内リーグである「ソサイチリーグ」は2017年に開幕しました。2023年シーズンは全国7リーグに188チームが所属しました。

九州リーグは2018年に発足しました。


-九州リーグ発足から5年、振り返ってどうですか?

おかげさまで応援してくれる方がとても多くなりました。

注目の対戦カードでは100名を越える方が観戦に来られるようになり、試合当日はキッチンカーも並ぶなどエンタメイベントになってきました。

現在国内唯一のソサイチ専用コート「MYNO FIELD」を開業できたことも大きな実績の一つです。ロングパイルの全面人工芝なので選手は気持ちよくプレーできますし、「ソサイチのフィールド」という場所があることは大きいです。

参加チーム数も来期シーズンは30チームで迎えることになります。これは1位の関東リーグ、関西リーグに次ぐ全国3位のチーム数で、人口規模から考えるとかなりの成長率だと考えています。


-ソサイチリーグの選手はいわゆる「プロ」にあたるのでしょうか?

いえ、選手はサッカーだけで生活ができる「プロ」ではありませんし、私たちはプロリーグとなることを目指していません。私たちが目指すのは「町内運動会の進化形」です。完全なプロとは言えないけど、部活動やボランティアに甘んじない。エンタメ性や競技性を高めたプロとアマチュアの中間くらいに位置するイメージです。

地元の運動会は競技性が低いにもかかわらず、とても盛り上がりますよね。これは身近にいる人が本気で競技に取り組んでいる姿に魅力を感じるからだと思っています。凝った演出や魅力的な飲食スペースが整った環境のなかで「身近なお兄ちゃんたち」が高いレベルで活躍する。そんな環境を競技として形にすることができれば、地域のエンタメとして社会的に存在意義のあるものになると考えています。


-地元との連携が大切になりますね。

地域との関係性構築も鋭意努力中です。私たちは「MYNO FIELD」周辺エリア(福岡県福岡市西区)を特に大切にしているので、地元の企業様、農家様へ地道に挨拶回りをしています。まずはチームのことを認知していただく必要があります。

認知していただいた先に、企業様の採用や農家様の収穫作業などの仕事をソサイチリーグに任せていただけるようになれればと考えています。500人を超える選手がリーグに所属しているので、お役に立てることは多いはずです。


-競技スポーツのエンタメ化を高めるためには収益が必要になります。

キャッシュポイントの創出がリーグとしての大きな課題です。

参加チームが64を超えると損益分岐点を超える計算なので、リーグとしての魅力を高め仲間を増やすことに注力しています。

独自の収益事業として「MYNO FIELD」コートレンタル事業を行っています。

また、スポンサー営業は各チームに任せていますが、営業資料のテンプレートを各チームに渡したり、各チームの一部のスポンサー様にはソサイチリーグを代表してご挨拶に伺ったりとサポートを行っています。


-収益事業として観戦チケットや広告などは活用していますか?

観戦チケットについては現時点で有料化は検討していません。まずは多くの方に足を運んでいただくことが最優先です。

スタジアム看板やユニフォーム広告などの広告事業については、目標としている64チーム加盟を達成したタイミングでの開始を考えています。一日8試合(16チーム)×4週というスケジュールでのリーグ戦が可能になるので、集客や関係人口を考慮すると広告媒体としてスポンサー集めに動けると考えています。

選手やスタッフの経済的な負担が大きいとライフイベントによってソサイチから遠ざかってしまいます。当日の稼働費を選手やスタッフに渡せるレベルの収益力を持ちたいです。


-ソサイチリーグは各エリアにある程度運営を任されているのでしょうか?

基本的に任せていただいています。月一回全体での定例があるので、事前共有や報告は行っていますが。良い事例などもその場で共有し合っています。


-九州リーグとして成功した事例を教えてください。

選手にリーグ運営に携わってもらうという施策は手ごたえがありました。選手目線での意見が入ることで選手が快適にプレーできる運営に改善されましたし、選手自身がリーグ運営を自分事としてとらえてもらえるようになったと感じています。

また、知的障碍の方を運営スタッフとして有償で雇っています。特別支援学校の教員の方がスタッフにおり、事業所様と関係を持つ機会がありました。アルバイトスタッフとして活躍していただいています

会議もオープンにしているので、どの会議体でもソサイチリーグに関係している方なら参加できるルールにしています。


-どのような人に関わってもらいたいですか?

スポーツ事業に関わる入口になれればと思っています。ですので、スポーツに関わりたい方や、スポーツチーム・リーグの立ち上げ期、成長期を経験してみたいという方はぜひお声掛けいただきたいです。単発でのイベント企画運営などでも大丈夫です。ソサイチの経験を踏まえてJリーグに行く方がいても良いし、反対にそうした規模の大きな組織からソサイチに戻って来ていただき、知見を共有していただけるような存在になれたら嬉しいですね。


-川西さん個人としても精力的に活動されている印象です。

好きでやっている感覚ですが(笑)。

アスリートのキャリア支援や事業アイデアの壁打ちなどを有志でさせていただいています。前職では医療機器メーカーのブランドマネージャーとして100名近い部下を抱えており、毎日複数回1on1を行っていたので、その経験が生きています。

アスリートは社会的立場のある方にお会いしやすいので、現役の内から行動を起こすのは大事なことだと思います。

鎌倉インテル所属の内藤洋平選手は、地域や農家の課題解決、人々の健康維持を目的とした「マイノプロジェクト」を発足するなど実際に動き出した方も多いです。


-今後ソサイチリーグをどのように発展させたいですか?

7人と少ない人数で試合ができる、交代に回数制限がない、などソサイチは人口が少ない地方でこそ必要とされるスポーツだと考えます。

本気でプレーし本気で応援できる地元の身近なエンタメとして成長していきたいです。地元関係者の方々と継続的な活動に取り組んでいきたいです。


<取材・文>

佐藤大輔(Spoship編集部)

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