大工さんになって二ヶ月で出来るようになったこととまだまだなこと。[36歳からの大工さん見習い日記 8週目]

36歳からの大工さん転職シリーズ。
かれこれもうすぐ二ヶ月だ。

二ヶ月でどんなことが出来るようになることと、まだ難しいと思うことを書いてみる。

ーーー

丸ノコがちょっぴり怖くなくなる。
丸ノコって、結構怖い。
そもそも最初は安全ボタンを押しながら引き金を引くのが上手く出来なかった。
一発で指が飛ぶくらいのパワーがあるし、刃が噛むとキックバックといって飛んで来る。
若い頃にそれで指を落としかけた。
正しい使い方をして、刃の手入れをきちんとしていれば、キックバックはしないのだが。

足場の上なんかで丸ノコで木を切ったりもできるようになる。

ーーー

ただ、難しいのは、ピッタリの長さを測って、ピッタリ墨線を引いて、ピッタリ切るということだ。
普段生きてると3ミリって気にならないけど、3ミリの差は大きい。3ミリと言うと、大工さんだと1分(いちぶ)だ。
一分ズレていると、上手く行かないこともある。

ノコギリの歯は厚みがあるので、線の外を切るか内を切るかで、長さが変わってしまう。
丸ノコの刃が走って欲しいところに、上手く定規を当てるのも難しい。

測り方も難しい。
少し短くても良い場所、少し長くても良い場所なんかは楽だ。
ただ、ピッタリ欲しいところは難しい。
スケールをあてて、正確に長さを測って、正確に墨を引いて、正確に切る。
墨の線についても、鉛筆が丸くなっていると先が太くなるのでズレる原因になる。暇があったら鉛筆は削る方が良い。

どれかがズレるとうまく行かない。
測る、墨付け、切る。
3つあるので、少しずつズレると結構なズレになる。
これは難しい。
大工の基本動作ではあるものの、正確に測って切るのは難しい。
ゆくゆくは速さも必要になるだろうが、まずはゆっくりで良いから正確に出来るのレベルに到達するのがまだかかりそうだ。

ーーー

エアーの釘のガンについても、何となく安全な打ち方が分かってきて、怖くなくなる。
とはいえ、三寸、9センチの釘のガンはかなり反動もあるので、今も苦手だけど。

木を打ったのに、反動で隣の定規まで打って壊してしまったりもした。

それでも、やはり釘のガンは大発明だ。
釘のガンさえあれば、随分いろんなことが出来る。

キチンとした長さに切って、釘が打てればいろんなことができる。
下地の組み方や構造が理解出来れば、あとは切って釘で止めればかなりの仕事ができる。
とはいえ、下地の組み方なんかを覚えるのも結構難しいんだけど。

例えば天井の下地なんかは覚えることも多い。
まず、床から高さを出して、四方にぐるりと下地を入れる。上から吊る木を打つ。1尺ずつに下地を入れる。交差するように3尺ずつに下地入れる。それから電気の穴を開ける。

壁の下地を作るときには、靴箱や食器棚を付けるところには、補強の下地を入れる。図面を見て、正しい高さに入れないと、後から食器棚が付けれなかったりする。

ーーー

通りを見るのも、難しい。
通りを見るというのは、まっすくがどうか見るということだ。
とにかく真っ直ぐということが重要なのだ。
当たり前だけど、窓の枠が真ん中だけ重さで垂れ下がっていたら、窓は閉まらない。
閉まらないほど垂れることはないにせよ、枠が真っ直ぐに付いていないと、壁のボードを貼るときにも難儀する。

目視で通りを見るのは難しい。

なので、厳密にまっすぐが必要なところは糸巻きや墨壺を使う。
糸巻きとは、糸を張る道具だ。その糸を基準にして曲がっていないか見る。
ただ、この糸巻きも上手く張るのが案外難しい。墨壺にしても、最初は難しい。
今も得意じゃないけれど、最低限は墨壺も使えるようになってきた。
ただ速くシュパシュパっとは打てないけど。

糸巻きなんかを使わずとも、熟練すると、ある程度は目で見て通りが出ているか分かるらしいのだが。

真っ直ぐや水平、垂直の感覚というのは、やはりまだ分からない。
そういう経験値による感覚的な部分については、時間がかかるのだろう。

ーーー

筋肉の使い方は下手くそなまま。
おじいちゃん大工さんでも、結構重いものを動かすんだけど、どうも筋肉を使わずやってるようなのだ。モノの重心なんかを捉えているのだろう。
特に大工さんで難しいのが、大きい物を室内で動かすということだ。
壁のボードなんかがそうなんだけど、天井と同じ高さがあるボードを向きを変えるのは難しい。コツがいる。

釘やビスのガンにせよ、丸鋸にせよ、工具を使うときに、無駄な力が入っているからか、やたらと筋肉痛になる。
それでも、筋肉痛も減ってきた。
天井を貼るときには筋肉痛になる。

ーーー

それでも、こうして考えていくと、若い頃よりも、やっぱり仕事に対しての取り組み方やコツの探し方は上手くなったように思う。

どんな仕事にも、基本動作のようなものがある。
大工さんなら、長さを測って切る。釘を正確な位置に打つ。
それが出来ればいろんなことができる。

住宅営業なら、どういうことをどう話せば良いかの勘所。
つまるところ、お客さんは何に困っていて、それはどうしたら解決できるか、どういうことを教えてあげれば上手く行くようになるかのツボみたいなものがある。
それさえ出来れば、あとはメルマガなんかを定期的に書くとか、YouTubeを作るとかも出来るし、対面の打ち合わせも出来る。

自転車屋の店長も、まあ、似てる。
自転車屋の店長の場合は、接客に加えて、工具の持ち方なんかの基本技術も重要だ。

どんな仕事や作業も、分解していくと、ベースになる基本技術みたいなものがある。
そこに気付いて、意識して取り組めば近道になりやすい。
漠然と全部を上手くなろうと思っても、基本技術が伸びないと上手くならない。
結果を焦らずに、基本のここの能力を伸ばしたいと思って仕事に取り組むと、それだけは出来るようになる。
上手い人がなぜ上手いのか、基本技術を意識して観察すると学ぶことも多い。
全体の結果が伸びるには少し時間がかかるかもしれないけど。

ーーー

転職を何度もしてきて、人生遠回りばかりしてるなと思うこともあるけど。

その仕事単品の技術じゃなくて、新しい仕事を覚えるコツみたいなものが気付けば身に付いていて、人生、何事も無駄ってことはないな、なんて思う。

そもそもだけど、意味があるとか、有意義とか、効率的とか、そういうのも悪くはないけど。
新しいことを覚えて、それが楽しいと感じる。
日々楽しいというのは、僕にとっては一番大事なことだと思う。
大学に行ったのに、中退して、自転車で店長までして、住宅営業で社内で一番売って、それなのに結局大工というと、どこか意味がないような積み重なってないような感じもしなくはないけど。
積み重ねるのも良いけど。
新しいことを身に付けていく喜びっていうのは良いなと思う。

とはいえ、元々手先が不器用なので、上手くなるのは遅いんだけど。

まあ、ケガなく楽しくやるのが大事だ。

日々のストレッチとストレッチローラーでゴリゴリやって、足場にぶら下がって背中と腰を伸ばして。
体を大事にやっていこ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?