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Amy Winehouse / Frank (2003)

その圧倒的な才能とカリスマ的な魅力で2000年代を駆け抜け、アルバムわずか2枚のみを遺してこの世を去ったエイミー・ワインハウス。
デビュー・アルバムにあたる本作は、「好きにならずにいられない」彼女の魅力的な歌声が、早くもその破格の才能を見せつけている。

タイトルどおり率直に、19〜20歳の若者の心情を、若者とは思えないほどの貫禄で歌い上げている。
ソウルやR&B、ジャズ、ヒップホップ、ボサノヴァなどを自在に行き来する豊かな音楽性に、そのクラシックなスタイルがもたらすヴィンテージ感と洒脱で研ぎ澄まされたモダンな音作りによるアーバン感のバランスのとれたサウンドの質感、キャッチーなメロディ・ライン(共作も多いがソングライターとしての才能も凄い)だけでも素晴らしいのに、そこにあの全てを宿したような歌声が”命”を強烈に吹き込み、楽曲が生々しく活き活きと、ときに艶やかに迫る様は圧巻。

この歌が、この声があるだけで全てを成り立たせる、奇跡的なシンガーが鮮烈な登場を果たした傑作。




僕の中では、ビリー・ホリデイとジャニス・ジョプリンと並ぶ三大女性ヴォーカルの一人、エイミー・ワインハウスは、21世紀最高のシンガーの一人。

ハラハラするような危なっかしさ、しっとりとした艶やかさ、まっすぐな豪傑さ、自然体の可憐さ、傷つきやすい繊細さ。その全てが奇跡的に、華奢な体の中に同居している。

1作目からオリジナリティ全開。
クラシックなソウルやノスタルジックなジャズ、オールドスクールなヒップホップ、何を歌っても、どう歌っても、エイミー独自の色に染め上げている。
2作目が名盤として取り上げられることが多いが、本作だけでも充分に魅力的。


彼女の最期は本当に、本当に悲しいものだったけれど、レコードをかければいつだってそこにいる。
それが音楽の真の素晴らしさであり、永遠に続く哀しさだろう。

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