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スピッツ / スピッツ (1991)

英米でロック史に残る数々の名盤が生まれた1991年、日本からはひっそりと本作が。
軽快で澄んだギター・サウンドにシンプルなリズム、不思議な響きの”現代詩のような”詞(「性と死」という主題と突拍子のない言葉選びが特徴的)と、親しみやすく爽やかなメロディ。そしてスピッツを構成する、無邪気さとさりげない毒。
そのどれもがスピッツらしいこのファースト・アルバムは「デビュー・アルバムにはそのバンドの全てがある」の格言どおりなのかもしれない。

フォーク・ロックのようで、パンクでもニュー・ウェイヴでもハード・ロックでもシューゲイザーでもギター・ポップでもある音楽性は、90年代らしくてノスタルジック。
ノイズ混じりだったりジャングリーだったりするギターを主体としたバンド・サウンドに、クリアでハイトーンな声を乗せ、笑顔で抉るような刺激的な言葉を吐くロックな姿勢もこの頃から。

突き抜けた名曲こそまだないが、それでもシングル曲を中心に楽曲は粒揃いで、バンド・サウンドも確立されつつあり、メロディにも詞作にもセンスを感じさせる瞬間が随所に訪れる。

いくつもの原石を含んだ幸せなデビュー作。




さて、スピッツのディスコグラフィを順に追っていこう。春だし。

春になると大滝詠一とスピッツを聴きたくなる。今日はスピッツで。

マサムネさんが22歳の時にレコーディングされ、23歳の時にリリースされたデビュー盤。
のちにリマスター盤も出たようだけど、僕が持っているのはレンタルCD上がりの黄ばんだ中古の初版盤。

風変わりな詞からは性的な示唆や死の香りがほんのりと立ち昇り、でもネガティヴさに囚われることなく、あくまでポップに繊細に表現するスタイルは独特。
諦念から始まり、身の回りや日常を見つめ、徐々に視界を広げ、希望の感受性を高めていく感じ。

オリジナル・アルバム単位で聴くようになって知ったんだけど、初期は”ライド歌謡”と称されるぐらい、シューゲイザー感とポップさがライドっぽいし、メロディは歌謡曲っぽい。




人生における一つのフェーズが終わり、30代半ばにして再出発というところか。
3月の終わりと4月の始まりの間に一度リセットできる春休みがあればどんなにありがたいかと夢想しつつ、週末の2日間で我慢することにしよう。

自分の中に棲みつく、どろっとした歪んだ感情に支配されないように、うまく飼い慣らせるように願って。

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