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The 1975 / The 1975 (2013)

マンチェスター出身の新星、THE 1975のデビュー作は、いきなり全英1位に輝き、一躍彼らを次世代のスターの座へと押し上げた。

危なっかしくも確信に満ちたカリスマティック佇まいと、ジェントルで艶やかなヴォーカルが魅力のフロントマンのマシュー・ヒーリーを中心に、13歳から10年間バンドとして研鑽を積んできた4人による流麗なアンサンブルはすでに完成の域に達しているか。

80〜90年代のポップス、R&B、ファンク、AORの煌びやかな多幸感を一音一音にたっぷり吸い込んだ楽曲は、どこまでも臆せずポップ。
それでいて、全編を包むシューゲイザーやエレクトロ、アンビエント由来のサウンド・アレンジからはインディ・バンドとしての矜持をも感じさせる。

どこを取ってもシングル・カットできそうなほど粒揃いの本作は、オープニングの雰囲気たっぷりのタイトル・トラック(あるいはバンドの”主題歌”)に始まり、その後はキラー・チューンの連打、インストを挟んで前述の往年の80年代クラシック・ポップス、そして終盤のやや内省的なトーンでの締め括りと、「自分たちの青春期のサウンドトラック」を自称するだけのトータル性の高い作品になっている。

モノクロームに統一されたアートワークやそのポップさとは裏腹に生々しくダークな青春の群像を描いた直接的なリリック(セックス・ドラッグ・ロックンロールを題材に)や曲のタイトル(シティにマネーにチョコレートにセックスにトークにガールズ・・・馬鹿みたいにシンプルなのがむしろ潔くていい)も、彼らの独自の美学に基づいた世界観の構築に貢献している。

”2世芸能人”らしい上品さと人懐っこさ、端正な見た目と、大衆・若者の心を掴む魅力的な要素を兼ね備えた彼らは、すぐに世界進出へと向かう。
しかも、ビギナーズ・ラックではなく、ずっと同じ4人で10年間磨き続けた音楽性というたしかな裏付けがある。だからこそ、次作以降さらに大化けしていく。




10年前。最初は眉唾ものだと思っていた1975だけど、実際に聴いてみたら、その有無を言わせぬポップさで押し切られてしまった。
それに、スター性と音楽オタクぶりが絶妙にブレンドされているんだろうな。実際のところはわからないけどどこか文学的な香りも漂わせているし。
何はともあれ、良い曲があって独特の雰囲気もあって良質なアルバムです。
いかにもロンドンっぽいけどマンチェスター出身ってのもなんかいいよね。

ちなみに最初の出会いは、プレミア・リーグの中継のエンディング曲として"Chocolate"を聴いたことでした。キャッチーなメロも心地良い語感も含め、だんだんクセになるポップ・ソングでした。

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