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小説「転職王」第十二話 新しい百貨店

新百貨店 名称決定

最後に、加奈は、新しい百貨店のコンセプトをまとめて、「LifeCuration」をさらに短縮した名前を検討しました。社内検討で上位に残ったものは以下の3つでした。
・リキュー (LiCu): "Life"と"Curation"のそれぞれの頭文字を組み合わせたもので、ライフスタイルの選択肢が豊富であることを示唆。
・エルキュア (LCur): "LifeCuration"の一部を取った略称で、独自のカリスマ性を持つブランドイメージを強調する略称。
・エルシーハブ (LCH): "LifeCuration"の頭文字に"H"(Hub)を加え、人々の集まる場所としての機能を強調。

この3つで生活者の印象をリサーチしたところ、
・リキュー (LiCu): シンプルで覚えやすい名前で、若い世代やトレンドに敏感な人々に支持された。
・エルキュア (LCur): 個性的で上品な響きがあり、大人の女性や可処分所得の多い人々に支持された。
エルシーハブ (LCH): フレンドリーで親しみやすい響きがあり、幅広い年齢層や家族連れに支持された。


決定会議

川勝常務:「 それでは、提案された3つの略称について、皆さんの意見を聞かせてください。リキュー (LiCu)、エルキュア (LCur)、エルシーハブ (LCH)の中から一つ選びましょう。」

押尾取締役: 「個人的には「リキュー (LiCu)」がシンプルで覚えやすいと思います。若い世代やトレンドに敏感な人々がSNSでシェアしてくれそうです。」

松本新宿店店長: 「確かに「リキュー (LiCu)」はいいですね。ただ、「エルキュア (LCur)」も魅力的だと思います。個性的で上品な響きがあり、大人の女性にもアピールできそうですので、外商売上も期待できます。」

高橋加奈:「どちらも魅力的ですが、『様々なライフスタイルを提案することで、お客様に自分らしい生活を見つけるお手伝いができるような場所であること』を目指すという目的からは「エルシーハブ(LCH)」が最適だと考えます。フレンドリーで親しみやすい響きがあり、幅広い年齢層に受け入れられそうです。」

川勝常務: それぞれの意見を考慮すると、どれが最適か判断が難しいですね。しかし、百貨店として幅広い年齢層にアピールしたいと考えると、「エルシーハブ」が適しているかもしれません。

押尾取締役: 「なるほど、お客様が自分らしい生活を見つけるお手伝いができるというコンセプトにあっていますね。私も賛成です。」

松本新宿店店長:「 私も「エルシーハブ」に賛成です。幅広い層にアピールできるという点で、新業態店舗にふさわしい名前だと思います。」

高橋加奈: 「それでは、「エルシーハブ」で決定しましょう。新しい百貨店のコンセプトにふさわしい、魅力的な名前だと思います。皆さん、ご意見ありがとうございました。」

最終的に、「LCH(エルシーハブ)」という名前を選んで、新しい百貨店の名前とした。これで、新しい百貨店の準備が整ったことになった。


サウスピーク 奥寺社長

新業態店舗開発に取り組む加奈が、新店舗が出る前に、既存の不振店舗である千葉店にもアウトドアアドベンチャーフロアを導入することを提案した。

加奈:「千葉店にもアウトドアアドベンチャーフロアを導入しましょう。最近人気のアウトドアショップ「サウスピーク」の誘致を試みます。」

千葉店店長・唐津賢三は、サウスピークのオーナー社長・奥寺雄介に交渉を持ちかけるも、当初は出店に消極的であった。

唐津:「奥寺社長、千葉店での出店をぜひお願いしたいのですが。」

奥寺:「うーん、千葉店の立地は駅から離れていて微妙だし、売り上げも今一つだと聞いている。それに、他の出店候補も考えているんだ。」

加奈は社長自ら交渉に乗り出すことにした。
しかし、奥寺は女性を見るときに、いやらしい目をするタイプで、加奈は最初から警戒していた。奥寺は加奈の言葉に耳を傾けず、体を舐め回すような視線で加奈を見ていた。
そして、プランを説明しても聞いているようには見えなかった。

加奈:「奥寺社長、私は先日、サウスピークの店舗を訪れて、実際に購買体験をしてきました。
(奥寺の視線が胸元から顔に向く)
その際、店員の方々が持つ深い知識やアウトドアに対する情熱、そして来店されるお客様の笑顔が本当に印象的でした。」

奥寺社長は加奈の言葉に耳を傾けた。

加奈:「私たちの新業態で、サウスピークのような素晴らしいショップが参加してくれることを心から願っています。お客様がアウトドアの楽しさを感じられるような、そんな素晴らしい空間を一緒に作り上げていけたらと思います。」

加奈の熱意が伝わり、奥寺社長も前向きに検討することを約束した。
その後、丸橋百貨店とサウスピークは協力して、新業態の成功に向けて取り組むこととなった。

千葉店アウトドアアドベンチャーフロア導入

イベント準備の遅れ

加奈:「さて、オープンイベントの準備はどうなっていますか?」

唐津店長:「実は、オープンイベントの準備が思ったより進んでいなくて、心配しています。」

加奈:「そうですか。では、まずは現状を把握し、優先順位を決めてタスクを分担しましょう。必要であれば、外部のプロフェッショナルにも協力を仰ぐことを検討してください。そして、進捗状況を定期的に共有し、必要に応じてサポートを提供しましょう。」

唐津店長:「はい、社長。アドバイスを元に、オープンイベントの準備を進めていきます。」

悪評拡散する競合(コンペティター)

加奈:「(SNSをチェックしながら)唐津さん、これ見てください。千葉店のアウトドアアドベンチャーフロアに関する偽の悪評が拡散されています。しかも、サウスピークの奥寺社長の部下に対するセクハラ疑惑まで…」

唐津店長:「えっ、そんなことが…。これは困りますね。どうしたらいいんでしょう?」

加奈:「まずはサウスピークの奥寺社長に連絡し、事実確認を行いましょう。その上で、真実を伝える情報を発信して、風評を打ち消しましょう。」

唐津店長:「かしこまりました。すぐに奥寺社長に連絡して確認します。」

加奈:「奥寺さん、風評被害の件、どうしたらいいと思いますか?」

奥寺(サウスピーク社長):「そうですね。まずは事実を伝えることが大切だと思います。サウスピークの公式アカウントからツイートしましょう。」

加奈:「いい考えですね。ただ、一般の生活者も納得できるような内容にしないといけませんね。では、ツイートの内容を一緒に考えましょう。」

奥寺:「こういうのはどうでしょうか?」

(奥寺がツイートの下書きを作成)

”【重要なお知らせ】
最近、当社の奥寺に関する誤った情報がSNS上で拡散されていることを確認しました。事実と異なる内容に対して、弊社は厳正に対処する方針です。
奥寺は過去に誤解された経験から、社内で厳格に自己管理しております。この事実は全従業員が認識しております。
何卒、ご理解賜りますようお願い申し上げます。”

加奈:「良いと思います。では、このツイートを公式アカウントから投稿しましょう。」

奥寺:「了解です。投稿しますね。」

(奥寺がサウスピーク公式アカウントからツイートを投稿)

加奈:「奥寺さん、ツイートは投稿しましたが、実際に風評が収束するかどうかはまだ分かりません。特に、社外の女性に対してセクハラ的言動があるとの報告も受けています。このままでは、風評は消えないと思います。」

奥寺:「そうですね…。申し訳ありません、自分の言動にもっと気をつけるべきでした。今後は、社内外を問わず、女性に対する言動に注意し、改善していきます。」

加奈:「奥寺さん、その意識改革が大切です。また、エルシーハブとしても、従業員やテナントに対してセクハラ防止の取り組みを強化していく必要がありますね。」

奥寺:「その通りです。サウスピークとしても、セクハラ防止の取り組みを進めていきたいと思います。」

加奈:「では、エルシーハブとサウスピークが連携して、セクハラ防止の取り組みを進めていきましょう。具体的なアクションプランを立てて、従業員やテナントに周知し、教育を徹底していくことが大切です。」

奥寺:「ご指導ありがとうございます。エルシーハブと協力して、セクハラ防止に取り組んでいきます。それにより、風評も自然と収束することでしょう。」

加奈:「そうですね。問題を根本から解決することが、風評被害の収束につながると思います。奥寺さん、これからも協力し合って、エルシーハブを成功させましょう。」

LCH(エルシーハブ)セクハラ防止アクション

加奈:「先日のサウスピーク セクハラ風評対策として、根本解決のためセクハラ防止のアクションプランを立てましょう。
これは単に問題への対応ということにとどまらず、自社やサウスピークさんはもちろん、全てのお取引先様・お客様にも公開して周囲の目の中で我々が遵守していくものになります。
まず、エルシーハブおよびサウスピークのセクハラ防止ポリシーを策定しましょう。具体的な行動指針や禁止事項を明記することが重要ですね。」

川勝常務取締役(開発関連全般管掌): 「その上で、セクハラ防止の教育・研修プログラムを開発し、全従業員やテナントに対して実施しましょう。」

松本執行役員(新宿店店長): 「セクハラ被害や不適切な行為を報告するための内部報告制度も整備する必要がありますね。匿名で報告できることや、報告者が不利益を被らない仕組みが重要です。」

加奈:「 それから、セクハラに関する問題が発生した際の対応手順を確立し、全従業員に周知徹底させましょう。」

押尾取締役(営業管掌): 「定期的なフォローアップと改善を行って、問題点を洗い出して改善していくことが重要ですね。」

川勝常務: 「社内外のコミュニケーションを促進し、働く環境を改善していくことも大切です。従業員同士の信頼関係を築くことが大切だと思います。」

松本店長: 「最後に、セクハラ防止の取り組みを定期的に評価し、必要に応じて見直していくことが重要です。状況に応じて柔軟に対応し、効果的な取り組みを継続していきましょう。」

加奈:「 皆さん、良い提案をありがとう。これらのアクションプランを実行して、エルシーハブとサウスピークの風評対策をしっかりと進めましょう。」

千葉店収益回復

千葉店店長(唐津賢三): 「高橋社長、お疲れ様です。千葉店でアウトドアアドベンチャーフロアを導入してから、いくつか素晴らしい変化が起こっていますので、ご報告させていただきます。」

加奈: 「おお、それは良いお知らせですね。どのような変化があったのですか?」

唐津: 「まず、新たな客層が獲得できています。アウトドアアドベンチャーフロアに魅力を感じたお客様が千葉店を訪れるようになり、従来のお客様とは異なる客層であるファミリー層が増えています。」

加奈: 「素晴らしいですね。その影響で、他のフロアにも良い変化があったのでしょうか?」

唐津: 「はい、実はアウトドアアドベンチャーフロアの導入により、屋上と最上階の集客が高まりました。その結果、各フロアの売場を通過するお客様の数が増加しました。これにより、従業員の意欲も向上し、他のフロアでも売場改善が行われるようになりました。」

加奈: 「なるほど、それは素晴らしい連鎖反応ですね。そして、その結果収益にも良い影響があったのでしょうか?」

唐津: 「はい、お陰様で他のフロアも売場改善が進んだことで、来客数に加えて購買率が上がり、全体の収益が改善されました。アウトドアアドベンチャーフロアの導入が、千葉店全体の業績向上につながったと言えます。」

加奈: 「それは本当に嬉しいお知らせです。これからも千葉店のさらなる発展に向けて、一緒に頑張りましょう!」

唐津: 「はい、社長。これからも千葉店をより良いお店にするため、全力で取り組んでまいります!」


新宿LCH(エルシーハブ)開店

千葉店へのLCHの部分導入が成功して3ヶ月後、いよいよ全フロアをライフスタイルでキュレーションした新しい百貨店エルシーハブ(LCH)が開店することとなった。

新業態ということで、認知拡大が重要と考えた加奈は認知拡大策として、以下を候補に挙げた。
インフルエンサーとのコラボレーション:人気インフルエンサーに商品を紹介してもらうことで、ファン層への認知を高める。

  1. SNSでの情報発信:InstagramやTwitterなどのSNSを活用し、エルシーハブの魅力を伝える。

  2. 限定商品の販売:エルシーハブ限定商品を販売し、話題性と希少性をアピールする。

  3. 入店イベント:人気アーティストや著名人を招いてのイベントを開催し、来店者を増やす。

  4. 地元メディアとのタイアップ:地元のテレビやラジオ、新聞などとタイアップし、地域密着型の情報発信を行う。

  5. フリーペーパーの配布:店内で無料配布されるフリーペーパーに、最新情報やお得なクーポンを掲載し、ファンを増やす。

  6. ポイントカード制度:独自のポイントカードを導入し、リピート顧客を増やす。

  7. オンラインショッピングサイト:オンラインでの販売も行い、多くの人に商品を届ける。

  8. 体験型イベント:各フロアで体験型イベントを開催し、来店者に楽しい思い出を提供する。

  9. チャリティーイベント:地域や社会貢献を目的としたチャリティーイベントを開催し、ブランドイメージを高める。

  10. メルマガ配信:登録者に最新情報や特別なプロモーションを届けることで、顧客とのつながりを強化する。

  11. 季節限定イベント:季節ごとのイベントを開催し、来店者に季節感を感じてもらう。

  12. ワークショップ開催:各フロアで実施するワークショップを通じて、来店者との交流を深める。

  13. 広告活動:駅構内や街頭広告を通じて、エルシーハブの存在感を高める。

  14. 口コミ戦略:来店者に良い口コミを広めてもらうため、サービスや商品の質を高める。

  15. コラボレーション企画:他ブランドや企業とのコラボレーションで相互認知を高める。

全てをやるには準備の時間も人も不足していたため、効果的と考えられる施策に集中して、オープン前後に割り振ることとした。
オープン前には期待感を高めることが重要であり、オープン後には実際に来店したお客様に満足度の高い体験を提供することでリピートや口コミを図る施策に集中した。

オープン前認知拡大

エルシーハブのオープン前に、各フロア責任者がSNSで自分たちの担当フロアの魅力や商品、サービスを発信した。
その結果、多くのフォロワーがエルシーハブのオープンに期待し、話題性が高まった。
同時に、各ライフスタイルのインフルエンサーとコラボレーションし、彼らがエルシーハブのプロモーション動画を自身のSNSに投稿した。それにより、さらなる認知拡大が図られた。

オープン後認知拡大

オープン後、エルシーハブ内で体験型イベントを開催した。
参加者には、各フロアのアクティビティや商品を体験してもらうことで、エルシーハブの魅力を直接伝えた。満足した参加者はその経験をSNSでシェアしてくれたので、口コミで更なる広がりを見せた。
さらに、ワークショップも開催し、参加者が実際に各フロアの商品やサービスを体験しながら学べる環境を提供した。参加者はワークショップで得た知識や体験を友人や知人に伝えたくて広めてくれた。

各フロアで起きたこと

千葉店でアウトドアアドベンチャー機能を導入した経験を持つ唐津店長の活躍もあり、LCH新宿店は順調なスタートを切った。
唐津店長の報告によると以下の概況であった。

地下2階フィットネスフロア:
プロのトレーナーによるパーソナルトレーニングやフィットネスクラスが大好評で、多くの人々がリピート利用し、口コミで評判が広がりました。そのため、従来の百貨店にはない新たな客層が増え、従業員の士気が向上しました。

地下1階ヘルスケアフロア:
オーガニックレストランがテレビで紹介され、一気に人気店となりました。その結果、ヘルスケアフロアの集客が増加しました。

1階ミニマリストフロア:
シンプルなデザインの家具や雑貨がSNSで話題となり、特に若い女性を中心にファンが急増しました。これにより、他のフロアへの関心も高まり、売り上げが伸びました。

2階ハンドメイド&クラフトフロア:
一流職人による革製品のカスタマイズサービスが話題となり、来店客が増えました。また、ワークショップも盛況で、来店客が他のフロアにも足を運び、全体の売り上げが伸びました。

3階地域密着フロア:
地域オリジナル商品や東京都の意外と知られていない特産品が評判を呼び、観光客が多く訪れるようになりました。

テクノロジーフリークフロア:
クラウドファウンディングで話題となった最新のガジェットが販売され、テクノロジー好きが集まるようになりました。また、ガジェットカフェでのデジタルアートやインタラクティブな体験が評判となり、他のフロアへの関心も高まりました。

5階ペット愛好家フロア:
駐車場直結でペット連れ来店できるカフェやイベントが大好評で、ペットを飼っている家族連れが多く訪れるようになりました。その結果、ペット愛好家層が増加しました。また、6階・屋上のアウトドアアドベンチャーフロアとの相性も良く、ペットを飼っていない来店客がペットに興味を持つきっかけにもなりました。

フロア同士の相乗効果

これらの報告の後に、千葉店店長からLCH新宿店店長・執行役員に昇進した唐津店長から、フロア同士の相乗作用について説明があった。

唐津: 「皆さま、お疲れさまです。LCH新宿店のオープン以降の成果について報告させていただきます。すでに報告ずみの各フロアの状況に加えて、各フロアが相互に集客力を高める効果が見られています。」

加奈:「 そうですか、それは素晴らしいニュースですね。具体的にどのような効果があるのでしょうか?」

唐津:「 例えば、フィットネスフロアで来店したお客様が、ヘルスケアフロアの商品に興味を持って購入されるケースが増えています。また、ヘルスケアフロアで来店したお客様が、ミニマリストフロアの商品を購入することも多くなっています。」

川勝常務:「おお、それは面白い効果だ。」

押尾取締役:「フロア間の連携が生まれて良かった。」

加奈:「 すごいですね。新たな客層が獲得できているということですね。」

唐津:「はい、そうです。新たな客層の獲得に加え、口コミによる効果も大きいです。お客様同士のつながりやSNSでのシェアによって、さらに多くのお客様が来店されるようになっています。」

押尾取締役:「この調子で他の店舗でも取り入れられる要素があるかもしれませんね。新しい取り組みを模索しましょう。」

加奈:「これからもこのような相乗効果を最大限に活かして、LCHの業績をさらに伸ばしていきましょう。唐津さん、引き続き頑張ってください。」

唐津:「はい、ありがとうございます。引き続き、LCH新宿店はもちろん業態としてのさらなる発展のために努力いたします。」



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