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ゲームの遺伝子 解析記録 vol.11 天地創造~ファイナルファンタジーXIV~

皆さん、こんにちは!「ゲームゲノム」シーズン2の初回、『天地創造~ファイナルファンタジーXIV~』の制作を担当しました、ディレクターの平元慎一郎です。趣味は国会中継をラジオ代わりに聞くこと(小学校高学年から続く謎ルーティーン)と、「ゲーム教養番組」を立ち上げるくらいには大大大好きなゲームです。

…ちょっと、いや、かなり緊張しながら筆をとっています。あの『ファイナルファンタジーXIV(以下、愛を込めて『FFXIV』と呼ばせていただきます)』を扱った番組の取材後記。そして、私は「好きなゲームは何ですか?」と聞かれたら「『ファイナルファンタジー』です!」と答えるくらい“FFファン”でもあります。こりゃ、140%気合を入れて書くのはもちろん、読んでいただいた皆さんが本作を、そして「ゲームゲノム」をもっと好きになってもらえる内容にしなくてはいけません(ドキドキ)。―――とにかく!今回は、不肖ふしょう平元がディレクションをしました『FFXIV』の“ゲームゲノム”に至るまでの道のりを裏話としてつづりたいと思います。そして、テーマである“天地創造”=《豊かな世界を創るヒント》をひも解いたスタジオ収録のなかで、惜しくも番組には入りきらなかったトークも!読んだら絶対に「もう一度『NHKプラス』で見返してみよう!」と感じていただけるはずです、きっと(どっちだ!)。


【あなたが、うわさの冒険者ね。】 ~爆速解説!『ファイナルファンタジーXIV』とは~

そうです、ミンフィリアさん(from『FFXIV』)。私が本作の担当ディレクターで「このゲームには“天地創造”のゲノムがあるのだー!」と触れ回っている冒険者です。が、本当にただのうわさにしておいてはもったいないので、本編に入る前に超簡単に、できるだけコンパクトに『FFXIV』とはどんなゲームかを紹介させてください(放送を見ていない方もいらっしゃると思うので。あ、「記事を読む前に番組を見たい!」という方はぜひ「NHKプラス」で!1月17日(水)23:28まで見逃し配信中です!)。

言わずと知れた『ファイナルファンタジー』シリーズのナンバリング14番目である本作。その世界はインターネット上に構築されています。舞台は、魔法の力に満ち、神話が息づく「エオルゼア」と呼ばれる広大で幻想的な土地。プレイヤーは冒険者として、この地に降り立ち多種多様な民族や都市国家、さらには世界征服をたくらむ勢力とそれを阻止せんとする秘密結社などと出会い、やがて大きな運命の中心に立つことになります。そして、MMORPG(多人数同時参加型ロールプレイングゲーム)である本作は、世界中のプレイヤーとリアルタイムに協力プレイをしてボスを倒したり…はたまたさまざまな遊び、釣りや家を建ててお茶会をするなど交流したり…と、まさに“もうひとつの世界”が広がっています。発売から13年―――。数か月ごとに行われる《大型アップデート(ダンジョンやボス、アイテムが追加される等)》や数年に一度の《拡張パック(新たな物語がRPG1本分追加される等)》で、世界がさらに広大に、奥深くなっていきます。

しかし、その天地創造の始まりには、酷評の嵐が吹き荒れていました。さまざまな不具合やコンテンツのボリューム不足などが目立ち、期待していたプレイヤーたちの不満が爆発したのです。アップデートで改善を図るものの根本的な解決には、なかなか至りません。そんな状況の挽回を託されたのがゲームデザイナー・吉田直樹さん。吉田さんたち開発陣が下した決断は周囲の想像を絶するものでした。なんと…ストーリー上、この「エオルゼア」を破滅させ、冒険者たちを別次元へ転送させるという展開!その裏で、ゲーム自体全く新しい(世界観などは共有しているものの、ゲームとしては本当に別物の)『ファイナルファンタジーXIV』を創っていたのです。

その後も、吉田さんたち開発陣は、プレイヤーとの対話を大切に、綿密なコミュニケーションを取りながら、新生された世界に豊かさと驚きとつながりを創造し続けているのです。

―――はい、全然コンパクトにはなりませんでした!(笑)これだけだと「へぇ~、なんかいろいろあったけど復活したすごーいMMORPGがあるんだね~」とだけ思う方もいるかもしれません…が、そんなことはないのです!それは番組でご紹介した“ゲノム”はさることながら、私がたどった本作の“ゲームゲノムの解析”で明らかになりました。まずは、そのスタートから語らせてください。

【そして…… たんきゅうのたびは はじまった】 ~『FFXIV』の“遺伝子”探しの始まり~

と、初代『ファイナルファンタジー』のプロローグよろしく始まった『FFXIV』の“ゲームゲノム”探しの旅。その一歩を踏み出したのは、実は今回の放送からさかのぼること1年あまり。ちょうどシーズン1、全10本の放送が終わった2022年の12月末ごろでした。もちろん、まだシーズン2そのものをやるかどうかの議論もスタートしていません。…ですが!私としては、当然まだまだ視聴者の皆さんにお届けしたい作品と“ゲームゲノム”があると考えていたので、ひとり孤独に具体的な企画を模索していたのです。そこで、自らに問いかけました。「―――次、何やりたい?」、と。そして「やっぱり大好きな『FF』だろう!」と答えを出しました。ここで大きな葛藤が…。そう、「どのタイトルでやるのか」です。シリーズ累計売上1億8500万本を超える『FF』。外伝も含めてあまたの選択肢がありますし、言わずもがなそれぞれの魅力があります。さらに、基本的にはナンバリング作品は独立した世界観と物語があるので、シリーズとしてまとめることはできません(不可能ですし、やってみたとして番組として薄味になるのは必至。それだけは絶対にイヤでした)。しかし、そんな葛藤とともに、ある予感も脳天を直撃。それが「『FFXIV』なら…いける!面白くなる!」というもの。…なぜか?それはずばりサービスが10年以上も続き、かつ世界最大級のMMORPGにまでなった重厚な歴史があるからです。

「ゲームゲノム」では、“レトロ”とか“最新作”といった特徴は企画上ひとつの要素に過ぎません。が、こと『FFXIV』に関しては、ゲーム作品の誕生から進化、現在に至るまでの道のりそのものをひも解くことで《ひとつの作品で13年超に渡る大抒情詩じょじょうしを語り込む》という新たな挑戦になると踏みました。もっと言えば、視聴者の方が本作のプレイヤーであるかどうかにかかわらず、「遊んでみたい」「その“ゲームゲノム”を味わってみたい」と思ったときに、ある意味で【時世の壁】を超える力を持った作品だと思ったのです。だからこそ歴史と現在が強烈にリンクする構成にしたいと考えました。さらに、番組内では紹介できませんでしたが、本作は国内外を問わず、権威あるゲームアワードでさまざまなジャンルの賞を毎年獲得しています。その中でも目立つのが《コミュニティーの創出・醸成》に関する賞。つまり累計アカウント数3000万超というのは、単に数字が積み上がっただけでなく、それらが確かなコニュニティー=独自の世界・社会に成っていることを表しているのです。これは語るべき歴史がある証左でもあり、《新たな“ゲームゲノム”の形を示す》という、シーズン2初回を飾るにふさわしい内容になる天啓でもあったのです。

【…今 考えている事の逆が正解だ。】 ~MMORPGをひも解く、ということ~

と、セッツァー(from『FFⅥ』)に言われたような気づきがあったことも、今回の制作で印象的でした。というのも、私は、『FFXIV』を取り上げることを決意したものの、一方で「あれ、でもこの《MMORPG》ってジャンルを紹介すること自体が大変なのでは…?」という不安があったのも事実だからです。でも少し悩んで、その不安を解消できる取材をして、わかりやすくおもしろい構成を考えればいいんだと素直に思いました。番組全体、ひいてはシーズン2をやるうえで、これまで「ゲームゲノム」で取り上げてこなかった《MMORPG》をひも解くこと自体に意味があると考えたからです。そして『FFXIV』ならそれができるはずだ、と。困難は醍醐だいご味がある証拠、不安はまだ見ぬ可能性の裏返し、苦悩は一発逆転のアイディアへの布石―――。私は、これまでの『FF』の物語からそれを教わってきたはずだ、と気づいたのです。

そうは言っても皆さんのなかで、もしかしたら「《MMO》ってハードル高そうで、手が出ないんだよなぁ」という方が少なからずいるのではないでしょうか?(実際に、昔の私もそうでした)そんなイメージを払拭ふっしょくしたいとも考えたのです。『FFXIV』は、その点で初心者にとっても優しい作りになっていることも有名です。そもそも本作は一度足を踏み入れれば、ハードルがどうとかはもはや関係なく、驚きの連続です。例えば…

「なんだ、この世界観と物語の複雑さは!」
めています、もっと知りたい、どんな展開が待っているんだろうと思うんです)」
「今すれ違った人の装備カッコいいなぁ…それに比べてまだ自分は…よーし!」
(褒めています、ゲームを進めていくと、“カッコいい”とかを超越して、だんだんと“個性”を出したくなります)」
「他人にしゃべりかけるのに勇気が要るなぁ…いざ!でも…やっぱり…」
(褒めています、いざダンジョンで「ナイス!」「ありがとう!」「お疲れさま!」のチャットの応酬にホクホクします)

というMMORPGの醍醐味だいごみがギュッと詰め込まれた世界がプレイヤーを待っています。きっと多くの人が抱いているかもしれないイメージや誤解…“やりこんでいる人だけがブイブイ言わせている世界”とは全然違うということに気づくわけです。

ちなみに、本作はMMORPGでありながら、いわゆる《ソロプレー(他プレイヤーとパーティーを組まずに遊ぶこと)》でも全クリできるシステムもすばらしい! ひとつは、優秀なAIキャラクター。本作では、いわゆるダンジョンの攻略や強大なボスとの戦いでは、必ず複数人でパーティーを組む必要があります。ただし、それは世界中のどこかにいる他のプレイヤーでもいいし、AIキャラとでもOK。しかも、番組で紹介したように、『FFXIV』のバトルは《役割分担》が超重要です。誰が“たて役”になって敵の攻撃を引き付けるのか…誰が“支援役”となって味方を回復するのか…誰が“攻撃役”として大ダメージを与えるのか…。こうした役割分担をAIキャラもしっかり全うしてくれるので、仲間感が強いというか、本当に誰かと協力している気分になります。

さらに、「まだ自分のレベルは低いけど…フレンドもまだいないし…でも他のプレイヤーとの共闘を味わってみたいなぁ」という初心者さん安心のシステムも!それが『コンテンツファインダー』です。簡単に説明すると…「このダンジョン行きたいよー!」と<呼びかけるプレイヤー>と「いっしょに行ってもいいよー!」と<応じるプレイヤー>を自動でマッチングしてくれるのです。「いや、でも頼もしい人たちは、その呼びかけに応じてくれないんじゃ?わざわざすでにクリアしたダンジョンとかさ…」と思ったそこのあなた(過去の平元!)。実は、このシステムには、『コンテンツルーレット』なる概念も!これは「『コンテンツファインダー』で行くダンジョンがランダムになる代わりに、特別な報酬が手に入る」というもの。つまり、レベルが高くても、もうクリアしたダンジョンやボスに挑む理由ができ、初心者さんも助けられる、というわけです。「いや、待った!ありがたいけど、すごい人が来てバッサバッサ敵を倒してくれて、自分はダンジョン攻略の醍醐味だいごみを味わえないんじゃ…?」―――大丈夫!本作には、さらに『レベルシンク』というシステムが導入されています。《適正レベル》が設定されているダンジョンなどで、それを上回っているプレイヤーがいた場合に、「自動的にキャラクターや装備が《適正レベル》に調整される」のです。例えば、レベル60のプレイヤーが、適正レベル20のダンジョンに参加するとなった場合、自動的に“弱く”なります。これで良い意味でバランスの取れたパーティーを組むことができ、みんなが役割分担をきちんと果たす意味も担保される、というわけです。うーん、ビギナーにも至れり尽くせりなMMORPGとは、まさにこのこと。

いうなれば、これらは「MMORPGをやってみたいゲーマーへの“参画支援事業”(『FFⅪ』にもレベルシンクの概念があったので個人的に《ニュー・ヴァナ・ディール※政策》と呼んでいます、勝手に)」。出会いや交流がMMOの神髄でもありますが、こうしたシステムのおかげで「頑張って、気負って、パーティーを組まなきゃ…」みたいな絶対的なプレッシャーはないわけです。これも本作を取り上げる理由の1つとして大きかったです。

※ヴァナ・ディール…『ファイナルファンタジーⅪ』の舞台となる世界の名称

【……まだ間に合う。……だから来た。後悔したくない】 ~“新生”のために“破局”を決断した男~

スコール(from『Ⅷ』)の決意と未来を変えるための行動力―。同じように『FFXIV』という作品を未来につなげるため、かつて一人の男がとった行動が“今の『FFXIV』”を創りました。その人物こそ、スタジオにお越しいただいたゲームデザイナー・吉田直樹さん(『FFXIV』のプロデューサー 兼 ディレクター)です。冒頭でも触れましたが、本作はサービスが開始された当初―13年前は、ずばり“不評”だったのです。それを吉田さんがリーダーとなって立て直し、徐々に豊富なコンテンツや行き届いたサービスが続いていくことになりました。

実を言うと、私は《プレイヤーとして》という目線以上に「なぜ『FFXIV』というゲームがこんなにも愛されているのか?」というところに妙にかれ続けていました。そして、その理由をひも解かんとすると、そこには必ず吉田直樹さんの存在があったのです。番組では、“破局”の状況と“新生”へのひらめきの一端をご紹介しましたが、収録現場ではもっと重く熱いトークが展開されていました。それは、どうして通称『旧版』の運営を続けながら、『新生版』を創るという前代未聞の決断ができたか、ということです。一部を抜粋します(読みやすいように少し加筆しています)。

吉田さん
そもそも「(今の)『XIV』の状態をどうしようか」っていう議論があって。会社側に出したプランが2つで、1つは“本当はあるべき、今の時代のMMORPGとしての『ファイナルファンタジー』は、ここまでのシステムとコンテンツがそろってないとだめだ、そこまでアップデートを続ける”っていうプランA。ただ、到達できるかどうかの検証をやったら、どうあがいても3年半ぐらいかかる。しかも、サーバーのぜい弱性とかを考えると3年半ぐらいで多分クローズっていうことにはなっちゃう。でも、死力は尽くします、と。もう1つが、“アップデートは続けます。これもやります、死に物狂いで。でもその裏で、もう1個、まったく新しい『ファイナルファンタジーXIV』を作って、途中で差し替えます”っていう。これがBプラン。

三浦さん
そのアイディアというか情熱というか、思いを支えていたのは何だったんですか?

吉田さん
僕自身まず、やっぱり『FF』ファンなので、すごくつらかったんですよね。プレイヤーの皆さんが怒っているのも当然だと思うし…やっぱり開発チームもすごいダメージを受けていて。失敗の部分だけ聞くと「自業自得じゃん」って思われるのかもしれないですけど、スタッフって好き勝手に好きなものを作れるわけではないので。やっぱり「このままじゃまずい」って思っていた人たちもたくさんいたし、泣いてくやしがっているスタッフも多かったので、なんとかしてあげたいっていうのもありました。何より一番大きかったのは、「それでも俺たちは『XIV』がきっと良くなると思って応援するから!遊ぶから!十分これだって世界のすばらしさはあるじゃん!」って言ってくださっている方たちを本当に裏切ってしまったら、それこそ次回作どころじゃない。だったらできればチャレンジはさせてもらいたい、と。そのチャレンジは、仮に失敗したとしても、挑戦したことはたぶん見てもらえるだろうから。

そこには“愛”がありました。『ファイナルファンタジー』への愛です。吉田さんをはじめとする開発スタッフ、シリーズや本作を遊んできたプレイヤーそれぞれの愛が幾重にも重なり、新しい世界は生まれたのです。より良い、豊かな世界を一緒に作り続けるためには、こうした気持ちがとっても大事なのだと気づかされました。

【思いを伝えられるのは言葉だけじゃないよ】 ~ゲーム開発者はプレイヤーへかく語りき~

ティファ(from『Ⅶ』)が最後の戦いの前にクラウドに投げかけた思い。そう、誰かに大切なことを伝えられるのは決して“言葉”だけじゃありません。なにかしらのアクションも重要です。究極、伝われば何でも良いんだとも思います。ただ、大事なのは互いに思いを伝え合おうとする場がきちんとあること、だとも思うのです。それが番組でも紹介した吉田さんたちが13年間に渡って欠かさずに開いてきた“対話の場”です。

今回の放送では、VTRパートにも吉田さんがガッツリ出てきます(番組をご覧いただいた方はわかったと思います)。そう、いわゆる「ライブ配信」を定期的に行っている本作では、吉田さんはアップデートの情報などを自らの言葉で丁寧に発信しています。加えて、時折プレイヤーたちからの要望や質問に直接答える、なんてことも。こうしたライブ配信を13年間で200回以上やっています。

一般的には、タレントさんを起用して番組っぽくしたり、名物広報担当者を立てたりすることが多いような…。でも、私はここに吉田さんの覚悟を感じます。モノ作りをして誰かに届ける―――そこには「どういうつもりで作っているのか」というスタンスを誰かが示すことがとても大事だということ。それをプロデューサーとしてディレクターとして、きちんと前に出て言葉にする(ときには《謝罪(!!)》の場面もあります)吉田さんはとてもカッコいいのです。そして尊崇そんすうの念を込めて、本作は《ゲームにおける民主主義》に挑戦しているのだ、と解釈しています(くしくもスタジオで吉田さんは、本作のサブスク料金のことを「住民税」と例えておられました)。だから吉田さんたち開発陣は、“創造主”であっても決して“創造神”ではないのです。それをプレイヤーと共有していることは、まさに「みんなで世界を豊かにしていこう!」という精神性の極致であり、“天地創造”という言葉を、概念を、解釈を変えるものなのでは―。これが番組タイトルに込めた、私のメッセージと覚悟でした。

【「王女らしく」ではなく 本当の自分を確かめたいの… …でも…】 ~“『FF』らしさ”とは~

ガーネット(from『FFⅨ』)は、世界の命運が懸かった冒険の中で、ずっと「王女である自分」と「ガーネットという純粋な自分」のはざまで戸惑い、仲間とともに困難を乗り越えることで“本当の自分らしさ”を見つけていきます。

―――ふと思ったのです。「私が大好きな『ファイナルファンタジー』らしさって何だろう?ひいては『XIV』らしさとは?」と。この自問自答が生まれたのは、それを番組内で表現したいと考えたからではなく、「ゲームゲノム」で最初に取り上げる『ファイナルファンタジー』が『XIV』であることの理由を自分の中ではっきりさせたい、と思ったからです。といっても不肖平元なんかのバーバルではなく、もちろん吉田直樹さんたち開発陣の皆さんが掲げ、目指し続けている本作の在り方の1つです。というのも、先述した《MMORPGにハードルを感じている一定数のプレイヤーの存在》に加えて、『ファイナルファンタジー』シリーズは、世代によって好きな作品に違いが出ることがよくありまして…(もちろんシリーズが長いこと続いていることの証左なわけですが)。要するに、プレイヤーによって「あの『FF』のMMORPGなんだ!」の“あの”が違うわけです。それはシンプルに《体験してきた作品が異なる》ということでして、例えばグラフィックであったり、はたまた物語やキャラクターの雰囲気、そしてもちろん当時プレイした自らの年齢や環境なども“あの『FF』感”を醸成するうえで大きく影響していると思います。実は、試しに職場で「好きな『FF』ってなに?」と聞いて回ったことがありました。すると、私と同じ30代は『Ⅵ』~『X』あたり。40代以上は当然ファミコン時代のタイトルも入ってきて、逆に10代・20代はそういった初期の作品にはなじみがない人が多い。で、たまに世代と全く異なる時代の作品を挙げる人もいる―――。となると、くだんのハードルを超える方法としても、どうやって多くの世代に「これ(『XIV』)も“あの”『ファイナルファンタジー』なんだよ!」と伝えるか、感じてもらうかに、吉田さんたちはとても注力しています。

『FF』シリーズおなじみの“ジョブ”も!20種類もあるんです!

そのために開発陣が掲げたコンセプトが【FFのテーマパーク】です。これ、すごくざっくり説明してしまうと…『FFXIV』には、歴代の『ファイナルファンタジー』作品のオマージュがたくさん登場するんです!例を少しだけ挙げると…『Ⅲ』の伝説のダンジョン《クリスタルタワー》、『Ⅵ』の象徴ともいえる兵器《魔導アーマー》、『Ⅶ』でプレイヤーが入り浸った遊技場《ゴールドソーサー》、『Ⅷ』の裏本編と名高いカードゲーム《トリプルトライアド》などなど(本当に一部です)。これは、吉田さんいわ「ここ(『FFXIV』)に来れば、さまざまな世代や性別に関係なく『FF』ファンが集まれる」―――そんな場所にしたいと考えたそうです。確かに、『FF』ファンである私も至るところに散りばめられているオマージュに思わずニヤリ。もちろん、「ポーション(回復薬)」「ファイア(炎の魔法)」や「チョコボ(ク、クェ~!)」「モルボル(臭い息)」、さらには「ビッグス」「ウェッジ」「シド」と言ったシリーズにずっと登場してきたおなじみのアイテムやキャラクターもちゃんといます。

吉田さんは番組の中で、「作ったのは“公園”だ」と話されていました。「あ!あの遊具、前に遊んだことある!」という公園=世界こそが、それぞれの『ファイナルファンタジー』らしさを彷彿ほうふつとさせ、それぞれの『XIV』らしさを見つけていく足がかりになっているのだと感じました。

【ほかの誰でもない これは お前の物語だ】 ~誰もが主人公として生きていける“豊かな世界”の姿とは~

アーロン(from『FFX』)が“死の螺旋らせん”に立ち向かうことになる主人公=プレイヤーに放つ言葉です。私たちは、自分の人生を“主人公”と感じる瞬間のために生きているのかも、と時々思います。もちろん、そんな強烈な出来事や鮮烈な感情となかなか出会えないのも人生です。間違いなく存在するのは、「自分」と「世界」―――その関係性。そして「世界」は自分ひとりでは決して捉えることはできません。大切な家族、励まし合える友人、落とし物を追いかけて渡してくれた誰か。一方で、どうしてもムカつく上司、バチバチなライバル企業、目的を見失った派閥、いつまでもわかり合えない国家同士―――。それでも私たち人間は、“つながり”によって“豊かな世界”を目指す“希望”も見出すことができます。

『ファイナルファンタジーXIV』は、そんな可能性に満ちた“終わりなき天地創造”を私に教えてくれました。番組を通して、皆さんそれぞれが大切にしている“世界の在り方”に思いをせていただけたら、こんなにうれしいことはありません。この“ゲームゲノム”が世界中の主人公に届きますように。

このたびは、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ディレクター 平元慎一郎

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