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フリーランス、怒られたい

 フリーランスとして芸人をしていると、大抵のことは楽しく安らかに進んでいるが、怖いこともある。一番怖いことというのは、オーディションが来ないとか、繋がりが希薄とかそういうことではない。誰にも怒られないということである。これは芸人に限ったことではない。自営業の方もそう、プログラマー、デザイナー、動画編集者、などなど、組織に属していない人間は全部そうである。間違った方向に進んでいても、上方からそれは違うよと指2本でつまんで2マス戻してくれる人もいない。血相変えて、大きくふりだしに戻してくれる人もいない。ふりだしなんてたまったもんじゃないと思う方はよく考えてみてほしい。間違った方向に進んで、借金まみれ嫁子に逃げられ家なし孤独死まっしぐらロードよりましである。

 実際、仕事でオファーや色々するときに、この人どうですか?とか何も知らずに制作さんやスタッフに提案すると、「あ〜スケジュール忙しそうですもんね〜」などと避けられることがある。阿呆な私は、あ〜スケジュールか〜と思っていたが、寝坊して今起きたみたいに「ああ!スケジュールなんて聞いてもないのに!」と後から気が付く。呼びたくないからと、架空スケジュールが架空多忙にて現実NGになっていることがある。大人のやんわりである。

 多分この架空スケジュールを入れられていた人は、クライアントさんにあんまりよくないことをしたのだろう。でもそれを怒ってもらって改善するチャンスもなく、綺麗さっぱりフェードアウトだ。代わりはいくらでもいるし、気の合う人以外とやる必要はない。どれだけ実力があろうとも、ちゃんとする奴とちゃんとしない奴がいたらちゃんとする奴が勝つ。

 だからといって、我々は完璧にできるわけではない。何か粗相をすることもあるだろう。我々は粗相が多い。私の粗相は百貨店の上の遊園地。相方の粗相はテーマパークである。
 社会って、大人って、誰にも怒ってもらえないし、自分で自分の悪いところを省みて反省するべきだ、と頭の片隅では正論が冠付けて鎮座しているけれども、怒られなくてフェードアウトするならば流石に流石に怒られたい。怒られたいと言うこと自体がフェードアウト案件であるのはわかってる。自主的に5マス戻って2回休んでおくし、この回はお休みするので次やる時に混ぜてほしい。

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