一発書き「風景〜朝〜」
風景描写と心情描写がえらく苦手なので、今回は風景描写の練習です。
冷たい風が顔に当たる。
ふと前を見る。
眼の前の窓の上側が空いている。
この車両で空いている窓はここだけだ。
誰かの携帯電話が鳴る。
それに気づいた数人がそれに振り向く。
音はすぐにとまった。
隣の窓は土埃で曇っている。
そこから見える景色は全くの別物のようだった。
空いた窓から飛び込んでくるのは景色だけではない。
音、空気、はてには匂い。
水面の反射に目を細める。
せせこましくならないよう譲り合ったような高層住宅。
一本跨げば交通量が変わる道路。
ゆっくりと電車が止まる。
また、冷たい風。
次の駅で乗り換えることをアナウンスで知る。
揺れに反応してつり革に手を伸ばす。
スファッ、スファッという風切り音。
誰かのイヤホンから漏れる音楽。
あぁ、降りなければ。
「前のお客様につづいて順序よくお降りください」
というアナウンスが、
行儀良くお降りくださいと聞こえる。
見たところ一番人の少ない列に並ぶ。
今度の窓は随分と綺麗だ。
映った自分の顔はもうとっくに旬を逃している。
寝癖を取るのを忘れた髪は随分とみっともない。
風景が住宅街から商店へと抜ける。
屋根からの反射がチカチカと目を痛めつける。
換気扇の音に隠れるように、話し声がする。
前の二人が寝ている。
学生と社会人。
なんの関係もない人だ。僕も彼女らも。
この時期の弱冷車の張り紙に違和感を覚える。
目の前の席が空いたので座る。
景色が変わる。
先程よりも遠くまで抜けて見える。
振り返ってみて、山があったのだと気付く。
英語のアナウンスはどの英語よりも聞き取りやすい。
そうこうしているうちに次が降りる駅だと電光掲示板が光る。
下り坂に体が軽くなる。
この記事の終わり方を考える。
駅につく。
いつもの坂道を通り、交通量の多い交差点に差し掛かる。
排気ガスの匂いが鼻につく。
また坂道を登る。
ハトの真横を通るが、人馴れしたハトは微動だにしない。
今日の予定を確認する。
昼過ぎまで忙しそうと目安をつくる。
そして、やっと目的地に着く。
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