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アシタカ(vol.1)

旅の始まり

冒険物語では、青少年が旅に出るというパターンは多い。
この映画を始めて観たのは、もう26年も前のことである。
その時は、開始直後から迫って来るおどろおどろしい怪物にある整った一族の村が襲われていくという切迫した状況で一気に惹き付けてゆく。
 しかも、その一族の若い女衆の機敏さや仲間を守ろうと刃を抜くところなど、しっかりとした統制の中で結束して生きているということがうかがわれた。また、彼女たちが言っていた、見張り台に残っていたじいじの様子を見ようとそこに向かったアシタカ。このじいじは、侵入してくる不吉なものに対して、それを見るなり「たたり神」だという。そして、アシタカが祟りをもらうことを怖れて、「『たたり神』に 手を出すな 呪いをもらうぞ!」と警告する。
 アシタカは、侵入してきた不吉なたたり神に対して「鎮まれ なぜそのように荒ぶるか」とさとし、村が襲われないようにと『たたり神』の前に進み出て治めようとするが、『たたり神』となった名のあるイノシシは、止めようもなかった。先の娘衆の一人が転んだことで、たたり神の意志がそちらに向いてしまい。アシタカは、やむなく娘と村を救うため‟矢”を放つ。一矢でイノシシを仕留めたアシタカは、たたり神の残された憎しみの血とも思えるヒルのようなものに腕が絡みつかれてしまう。
それを引きちぎるが、右腕に痣となって残ってしまう。
ここで、印象的な言葉は、これから巻き込まれていく対立を思わせるイノシシ神の言葉である。
「汚らわしい人間どもよ 悪臭と憎しみを知るがよい」そういって、息を引き取る。
当時は、このイノシシが、人間に傷つけられたことで憎しみをもち、それで『たたり神』になったのだなぁとやや単純に考えていた。
人間の石火矢により、肉にそれが食い込み骨を砕き、走りに走るうちに、呪いを集め『たたり神』になったのだと『ひいさま』がいう。
争いの中で、名のある力あるものでも鉄のつぶてを身体に受けて、肉の傷み骨の痛みを前にして、次々と何か対しての不要な暴力を生み、新たな憎しみを背負うことになってしまうのだろう。
倒れたイノシシにこの地の人々は、丁重に言葉をかけ、塚を築くと約束する。
この地で、巫女を務める『ひいさま』がいる。『ひいさま』は、占いをしながらアシタカのこれからの行動を自分で選ぶように導く。
「アシタカヒコやそなたは、自分のさだめを見定める覚悟があるか。
そのあ痣は、やがて骨まで届いて、そなたを殺すだろう」
それに対してアシタカは、「はい、ひいさま。矢を放つとき覚悟を決めておりました」と答える。
 あまりにも立派すぎる答えである。
一つにはそれだけ、村は切迫した状況で存立していて、常になんどき何が起ころうと一つ一つの行為が研ぎ澄まされた覚悟と共に行われているからかもしれない。
あるいは、アシタカの与えられた命に宿るものが、そうであるのかもしれない。そして、それを育むに充分な共同体としての村だったのかもしれない。
「誰にも定めは変えられない。
ただ、待つか 自ら赴かは決められる。
くもりのない眼で物事をみるなら、あるいは、その呪いを立つ道が見つかるかもしれぬ」
 その言葉を素直に聞く。少し考えてみるなら、聞くということについて、アシタカは、相当な聞き手となって育っていると考えられる。
 集会に集まっていた長老が、村の将来を心配しながらも、「長となるべき、人物が南へ旅立つのは、定めかもしれん」と発言する。
 その村の『存在』もしくは『造られてきた時』が厳しくもすがすがしい清らかさを持ったものであることがうかがえる。
アシタカはその中で育てられ成長していたからこそ、『たたり神』の現れた西へと向かって旅立っていくのだろう。
「おきてに従って、見送らぬ」これも劇的で、ある程度歴史ものが好きな方には、たまらない言葉だろう。
 この旅立ちに、「あにさま」といって駆け寄り息を込めた玉の小刀を渡す。この小刀の行方も私なりに考えてゆきたい。
 年月がたつと、こちらの事情も変わっていた。私自身、人、生きるそれらのことについて、幾分かのとらえ方の違いが表れてきたからだろかいろいろなことをいろいろに感じられることが面白い。
 倒れたイノシシ神に対して、ひいさまの「この地で手厚く葬らせて頂くので安心してくだされ」といった類の言葉、占い、さらには、そのこと(イノシシを倒したアシタカ)による『定め』の使い方。それは、どこか遥かむかしの日本にあった匂いを感じるし、かつてはこの地の人々(物語上ではあるが)はそう生きていたに違いないと思わせてしまうものがあるように思う。
 こうして、アシタカヒコは‥‥西で起きていることをくもりなき眼で見定めるために旅立っていく。
 孤独だろうが、彼にはヤックルという仲間がいる。『たたり神』にもらった痣など早く消えてほしいと願ったのは、私だけだろうか?
主人公のあまりの出来の良さにほれぼれする。おまけに誠実。
憎しみや恨みとは、かけ離れて見えるのに受けてしまったというスタート。
切なくなります。
続きは、また(@^^)/~~~

※しばらく「もののけ姫」の感想を書いていこうと思います。
よろしくお願いします。

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