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アシタカ vol.3

「そなたは きれいだ」

 タタラバを出てしばらくすると、アシタカは地面に倒れてしまう。それをサンは救うことにする。
それには、アシタカの言葉が大切な役割を果たす。サンの生い立ちにも関係しているのだろう。サンは、人間が山犬への捧げものとして投げられた赤子だったという。
 モロは、サンを大切に育て扱っていることがうかがわれる。母(たとえ 実の母でないとしても)から充分な愛情を受け取っているように思うが、実母ではないという壁は大きいだろう。また、人間ではない”山犬”という神にもたとえられるような大型の山犬。
サンは、モロの一族に対しての誇りを持っていると考えられる。だからサンは、モロの一族が森を守ろうとするその一翼をしっかりと心に刻んで生きている。
 もとに戻ると倒れたアシタカが気が付くと、「なぜ助けた」というサンに
喉元に剣を突き立てられる。その時、アシタカが発した言葉にサンはたじろぐ。
サンは、モロの一族に自分を同一化しているので他者は”敵”という立場にいる。その他者の一人が発した言葉に不意打ちを喰らう。
私の想像ではサンは”意識し始める”という時を迎えたようである。
その第一歩として、山犬の兄弟たちを先に戻し、自分で始末するというが、ヤックルと一緒にアシタカをシシガミの森に連れていって、池の小島にアシタカとまるで玉串のようなものを捧げて、その場を去る。
 シシガミは、アシタカの命を助けたので、正確に言うなら命を吸い取らなかったので、そのことがサンに道を示した。
アシタカへの小さな道が開けた。
サンは、アシタカに元気が出るように食料を与える。干し肉である。アシタカはそれを噛んで飲み込む力も残っていなかった。
そこに一つの運命があるのかもしれない。シシガミが示した道かもしれない。サンは、干し肉をかみ砕き柔らかくして、口移しでアシタカに命の食を与える。アシタカの命は、サンに握られていてサンは、アシタカの言葉に応えていっているのかもしれない。一つの返歌であるのかも。


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