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電車で読む本

昨日、帰りの電車でガタイのいいおっさん二人と、ガタイの悪いおっさん一人が4人がけスペースに座ってた。

なので0.8人分ほどの空きスペース。

前にそういう場所に座ってみて、あっこれはいかん。と
狭くてすぐに立つという悲しい思い出があるので、わたしは座らない。

一人のおばはんがグワシっとそこに身体をねじ込んだ。

おばはんは0.8というより1.3ほどのガタイのよい側の人。

ほぅ…やりますな。

と感心して見ていたのだが、おばはんの動きが何か気に障る。

自らねじ込んだ割には両隣のガタイ悪、ガタイ良が、
ほんの少しでも動くと大袈裟にビクッと動いて睨むのだ。

そうかと思うと大袈裟な動きで座席ポジションを直して、
快適スペースを広げようとグイグイと大袈裟に両サイドを押し広げる。

落ち着くと、大袈裟に薄目で周りを睥睨し始めた、とにかくやることなすこと大袈裟で、
私の対人危険人物カウンターの数値がみるみる上がっていく、準要注意人物。

こういう時、だいたい運命の女神様は私に試練を与えるのが定番で、
当然のごとく、ガタイ良二人組が同時に席を立った。仲良しか?

空いたスペースに見事なシンクロで尻を向けて意思表示したのは、わたくしと右に立っていた、文章による表現泣かせのフツウの人。

フツウと準要注意の間に収まる。

noteのコメントに返事を書こうと遡って読んでいると、フォロワーさんの、謀ったような笑えるコメントがでてきて、

ついつい笑いが漏れ、1cmほどスマホを持つ右腕が動いてしまう。

あっ…。いかん。

案の定、おばはんがわたしが犯罪行為を犯したくらいの驚きっぷりで10cmほど飛び上がった。

あぁ、めんどくせ。

おばはんの視線は感じていたが、反応するのもめんどくさいので、コメントを打ち終わりスマホを仕舞って鞄から本を取り出した。

もちろんおばはんにミリも触れないように、慎重に出し入れ作業に取り組んだのだがリュックの肩紐がパタリとおばはん側に倒れる。

あっ…。いかん。

おばはん飛び上がり睨む。
幽霊でも見たかのような、
隣から蛇がふいに現れたかのような、

そんな跳ねっぷりだ。仰々しいにも程がある(笑)
ここまでされるとほんとに周りから誤解を招かれてしまいそうだ。

思わずおばはんの方を見返すが、おばはんはサッと目を逸らす。

全身性感帯ですか?

と聞いてやろうかと思ったが我慢して本を開いた。

図書館から借りてきた、角幡唯介さんの「漂流」。ハードカバー。

と、こともあろうにおばはんが顔を突き出してむさぼるように、私の手元の本を見ている気配がする。

勘違いではない。すっかり車内も空いてきたので対面の車窓に写るおばはんの体位を視認したのだ。

な、なんだ…。

逆に怖い。

暫くするとおばはんは興味を失くしたかのように顔を正面に向けた。

ふっ、フィリピン沖で失踪したマグロ漁船の真相を聞き込みするシーンに興味が沸かなかったようだ。

しかし、しばらく、私が頁をめくっても見ていたので、
まるで私がどんな本を読んでいたかを確認していたかのように思えた。

こんなことなら秘蔵の「はぐれ奥様旅情派 アヤ子編」でも読んでいればよかったぜ。
果たしておばはんはどんな反応をしただろう。

「まぁ!なんて破廉恥なオヤジなの!」
と吊棚に頭をぶつけるほど飛び上がり、そのままプンプンと去っていったかもな。

わはは、勝者わし🙌✨

が、もしおばはんがヨダレを滴しながら
「は、はやく次のページ見せて💕」
なんて不測の事態が起きてしまったら、私が吊棚に頭をぶつけて逃げることになりそうだ。

敗者確定。


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