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全て無くしたとしても

 毎晩同じ映画を見ている。
おばあちゃんと少しイケてないと思い込んでいる女子高生が同じ趣味を共有する。という映画。
寝る前にこの映画見る、というか流していると凄く心が落ち着くのだ。
 
 アンデットが蠢き、国家機密を操り、恋愛で脳みそパンパンを膨らませ、異様な状況であらん限りの罵声を浴びせる、といった2時間非日常を味わう。いや!味合わなければならぬ!といった世界観はこのパンデミックでほとほと味わった。

 世界はそれで変化したかといえば、これが全くしなかった。全世界が総力を注いだウィルスとの戦い後はオオタニサンの祝砲だった。

 意外と、というまでもないまぁそうだね。っていう世界が続く中、やはり私は疲弊した。

 ほんの少しの焦りとか毎日同じ作業の中での一瞬の輝きとか、そういった個のフェースがとても心地良くなった。猫のめやにを取りながら、陰謀、上等じゃないの。世のフィクサー頑張って。と嘯く。

 個体が個体として穏やかに過ごせますようにと、日々祈る行為を愛せるようになった変化が映画の好みに現れた。この映画に出会えてとても嬉しいと思える。日常を過ごせるようになってよかったと思う。この天変地異の後ですら、それなりに生き抜く人間の逞しさを心から愛おしく思う。
 

#映画にまつわる思い出


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