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今日の夢

主題歌…True Blue(LUNASEA)

タイトル…ちんちむ

内容カテゴリ…ホラー

学生の男女5人が、夜の公園で呪いの携帯電話を偶然拾い、死の呪いがかかってしまう。
死の呪いを回避するには、それぞれ代償を支払わなければならない。
男女5人は、翌日話し合い、自らの左腕を切りつけるという代償を支払うことにした。
しかし、代償を差し引いた分の呪いが彼らを容赦なく襲う。
男Aは、痴呆の祖父と酒浸りの母の元で虐待をされながら暮らしていた。ある日、呪いが執行され、母が暴走。祖父を切りつけて殺し、止めようしたAは、母の逆鱗に触れ、指を全て切り落とされてしまう。

女Bは、普通よりも少し裕福な家庭で育った。一人っ子で両親に沢山愛され素直に育った彼女は、あまりの恐怖に支配され、呪いの代償として、精神崩壊してしまう。普段は普通だが、一日に一度は必ず発作を起こし、白目を向き泡を拭きながら訳の分からない呪詛を口するようになってしまう。

男Cは、乱暴な性格だった。いつも男Dを酷くいじめていた。代償を支払う時も、男Dに自分の代償を払わせようとし、彼を切りつけていた。男Cは、ある朝いつものように通学しようと踏切に差し掛かった。電車が来て、遮断機が下りた時、彼は後ろから誰かに押され、線路へと少しずつにじり寄っていく。周りの人は皆青白く虚ろな表情で、何かの儀式のような動きをしながら、男Cが線路に押し出されているのを見ている。線路の上で寝かされたCは必死に抵抗したが、それも虚しく、猛スピードで通過する列車に挽き飛ばされ、両目と片足を失ってしまう。

男Dは、気が弱く、いつも男C達に酷く虐められていた。実は、呪いの携帯が存在することも、呪われた者が死ぬことも唯一知っている人物だった。男Dは、辛い日々を終わらせたくなり、自ら進んで呪いを受けようと、いつも携帯を探していたのだ。だから、男Dは代償を支払いたくなかった。そのため、自ら代償を提案し、みんなで腕を切りつける時には、血糊とダミーナイフを使用した。しかし、男Cにより、Cの代償を肩代わりさせられたことで、その分D自身の呪いが免除されてしまった。男Dは、自分が本当に呪いで死ねるのか不安でたまらなかった。次々と呪いを受ける周りの人を目の当たりにし、こんな呪いを受けるのならばいっそ死んだ方がましな状況になっている様子を見て、Dは自殺することにした。
学校の理科室で、硫酸を手に入れ、屋上の端で背を向け立ったDは、硫酸を飲み込み、もがき苦しんだ拍子に足を踏み外して、溶けながら後ろ向きに地面に落下した。
しかしDは死ねなかった。病院で目覚めたDは、顎から胸にかけて酷いやけどと溶解があり、喉が完全に溶けてしまったため、声が出せず、食事を楽しむことも出来なくなってしまった。さらに、下半身が動かなくなっており、身動きが取れない。そんな中、病院の看護師から、わざと採血を何度も失敗されたりなど、陰湿なストレスのはけ口にされてしまう。

女Eは、呪いも代償も受けたくなかった。Eは、神社の神主の娘だったため、この世には様々な呪いが実在することをよく知っていたし、その恐ろしさを何度も目の当たりにしてきた。だから、自分が呪いを受けるのは絶対に嫌だった。彼女は、呪いを解くために、呪いの携帯の歴史を調べることにした。どうやら、E達が住む地域には、昔大きな5本の電波塔があったらしい。その電波塔を作る際、何度も関係者が謎の死を遂げており、土地の祟りだと恐れた建設会社、役所の職員、祈祷師、銀行員、通信会社の重役は、それぞれの電波塔の地中に人柱を立てた。
それいこう、不審死はなくなり、電波塔は無事に完成。その後通信技術の発展により現役を引退するまで日本を支えていた。
電波塔が稼働しなくなってから、ちょうど150年の月日が経っていた。
Eは、家の小さな倉に、鍵付きの棚があり、神主の祖父に1度だけ、呪いの危機にあった時、この棚を開けるよう言われていたことを思い出す。
Eは棚を開けた。するとそこには2冊の手記があった。
本を見ると、なんと、自分の先祖も同じような呪いにかかっていたことが記されていた。
1人目は、150年前。どうやら代償として指を1本捧げたようだ。しかし、代償を差し引いた呪いを受けてしまっていた。
2人目は、100年前。自分の祖父が、呪いを受けていた。そういえば、祖父には鼻がない。戦争で失ったと聞いていたが、実は代償として自らの鼻を捧げていたのだ。鼻のない祖父の顔は異様で、そのせいでEは祖父に近づくのが怖かった。親族にさえ恐怖を与え、距離を置かれてしまうような大きな代償を支払った祖父に対し、Eは尊敬すらした。同じ立場になった自分自身は、利き手でない腕のあまり目立たない部分に切り傷を入れただけだったから、代償を払う覚悟の違いを思い知らされていた。祖父は、寡黙で怖くて近寄りたくなかったが、明日からは優しくしようと思った。
だが、祖父呪いは受けなくて済んだのか。鼻以外は特に不足は無い。
手記を読み進めると、祖父は呪いを受けていなかったらしい。
祖父は、呪いを受けないためにEと同じように歴史を調べ、呪いを受ける5人に共通点があることを知る。人柱を立てることを決めた重役達の末裔が代々呪いを受けているようなのだ。祖父は、きっとこの呪いは、人柱とされてしまった5人により生み出されたもので、人柱を立てることを決めた5人に対して発動するのだろうと予想した。
この呪いを鎮めるためには何が必要か?
祖父は考えた。
その結果、自らの血縁を人柱とすることを決意する。

祖父は、自らの息子を手にかけた。そして、電波塔の下に埋めたのだ。

Eは絶句した。
Eの両親は健在だ。祖父の子供は息子一人だったはず。



では、今Eと一緒に暮らしているEの父親は一体誰なのか?


底知れぬ恐怖にEは粟立った。
父親が何者なのか、人なのかそうでないのかも分からない。
祖父は我が子を手にかけ生き延びた人間だった。
母親は何をどこまで知っているのか。

Eは自分の家に戻るのが怖かったが、為す術なく、帰宅した。
いつも通りの我が家に、Eは吐き気を催す。
夜も眠れず、自分はどうしたらいいのかも分からず、何日も苦しんだ。
もうすぐ卒業の季節だ。


居場所が無くなったEは、毎日学校や市の図書館で携帯電話の呪いについて調べていた。また、既に呪いを受けた者達もそれぞれ学校に復帰していたので、再び5人で呪いについて解き明かそうと集まった。
呪いを受けた4人は、今更またあの恐怖を思い出すことは懲り懲りだと言っていたが、Eの説得に根負けし、また、自らの呪いとの決着をつけるために、再び協力することにした。
そして、男Cの父親の建設会社の書庫に、電波塔建設当初の資料があるという情報を手に入れる。

建設会社に潜入した5人は、古い書庫を漁り、機密文書を発見する。
中を見ると、人柱にされた5人の素性が分かった。
彼らは、自分たちとは、特に関わりもなさそうな、本当に何の落ち度もないただの市民だった。ただ、電波塔建設の不審死を止めるために無作為に選ばれ、命を利用されていた。

人柱の素性を知った5人は贖罪の涙を流した。人柱の恨みを晴らすことで、人柱も、自分たち一族も苦しみから解放したいと思った。
でも、自分たち一族はこの罪をどう償えば良いのかというわだかまりも感じていた。

5人は、先祖への怒りや恐れ、呪いへの恐怖、人柱への罪の意識に苛まれていた。
5人はそれぞれ悩んでいた。
そして、電波塔に行って、一生懸命謝ることにした。
5人は休日の昼に電波塔に向かった。
それぞれ1つの棟の麓に立ち、手をついて人柱となった人へ謝罪をした。
すると、頭の中に知らない人が浮かんできて、それぞれが語りかけてきた。人柱となった人たちだと、彼らはすぐに理解できた。
そして、5人は人柱といつまでも語り合い、お互いの気の済むまで話を続けた。
話を終えた5人は、街へと戻る。
明日は卒業式だ。


Eは、相変わらず吐き気のする我が家で、自らの代償を差し引いた呪いが何なのか、呪いを回避してよいものか、人柱との対話で事態が好転したのか、考えていた。
そして、父に問いかけた。
「あなたは誰?」
父は何も答えない。
母も何も答えない。
ただ、自分の語りかけた言葉が宙で霧散したように、父も母も、私の問いかけなどなかったようにいつも通りの二人だった。

Eは嫌な予感がした。
明日は卒業式だ。

卒業式当日。
指のない男Aは、卒業証書が受け取れない。
精神崩壊した女Bは、式が終わったあと、ホームルームで発作を起こす。
失明し足を失った男Cは、友達の様子が分からない。
自分がみんなの輪に入れていないことに自分だけ気づかずに、ひとりで喋り笑っている。
声を失い下半身が動かない男Dは、空気のようにその場に佇んでいる。
でも、みんなそんな自分を可哀想だとは思っていなかった。
呪いを受けても、苦しみながら精一杯生きることで、人柱に償おうと、5人は示し合わさずとも同じ思いでいた。

卒業式が終わり、5人は駅に向かう。
女Eは走り出した。
そして、電車に飛び乗った。
電車は、どこまでも晴れた空の中を走り続けていった。


おしまい

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