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寒い日本を脱出してベトナムでワーケーションしてみた@ニャチャン(ロシア人で溢れかえる街編)

皆さんこんにちは。今私はベトナム南部のビーチリゾートのニャチャン(Nha Trang)という街で、極寒の日本を離れて、一カ月のロングステイをしながらリモートワークをしています。
今回は、なぜかニャチャンの街にあふれかえるロシア人について紹介してみたいと思います。

徴兵逃れのロシア人

ニャチャンビーチを歩いているとやたらに目立つのがロシア人です。カップルから家族連れ、単独行動の男性まで街で見かける白人の大半がロシア人という感じです。逆にタイなどで目立つ英仏独やアメリカ人の姿は殆ど目立ちません。

建国の父ホー・チ・ミン

ベトナムとソ連(ロシア)の関係は100年以上前にまで遡ります。ベトナム独立の父であるホーチミンは、第一次大戦のときにフランスに労働者として渡り、共産党に入党しました。その後できたばかりのソ連に渡り、革命理論やゲリラ戦などの軍事訓練を受けました。そしてベトナムに帰還すると、ソ連や中国の援助の元で、フランス植民地からの独立運動に取り組みました。

SAMとカラシニコフ

有名なベトナム戦争でも、ソ連からの軍事援助は続きます。アメリカ軍の度重なる激しい空襲から首都ハノイを防衛したのは、当時のソ連から供与されたSA2と呼ばれる地対空ミサイル(SAM)でした。

当時の北ベトナム軍は、ソ連製SAMとミグ戦闘機の組み合わせで、1000機以上のアメリカ軍の戦闘機や爆撃機を撃墜しています。
ちなみにトム・クルーズの主演で有名な映画の”トップガン”の中に出てくる海軍の戦闘機学校が出来たのも、このベトナムでの航空戦が原因と言われています。当初は世界最強と思われていたアメリカのジェット機が、弱小国家のベトナム上空で次々に撃墜されたことアメリカ軍は強い衝撃を受けました。そして空中戦での劣勢を挽回するために設立されたのが、ドッグファイト(空中戦)専門の学校、トップガンです。
またジャングルでも、大ヒットしたプラトーンやフルメタルジャケットなどのハリウッド映画で描かれたように、古タイヤから作ったゴムサンダルを履き、自転車で物資を運ぶベトコンの兵士に、重武装のヘリコプターで移動するアメリカ軍が敗北しました。そのベトコンのゲリラや北ベトナム兵は、ソ連や中国から供与されたカラシニコフ小銃やRPGロケット弾で武装していました。
ベトナムにとってソ連(ロシア)は、独立を助けてくれら恩人なのです。そして、その友好関係は今も続いています。

ロシア人はVISAなしで滞在可

ベトナムとロシアの浅からぬ関係もあり、今でもロシア人は日本人や韓国人と同じようにVISAなしでベトナムに滞在できます。興味深いのがベトナムはアメリカや中国、それからオーストラリア人にはVISAなし滞在を認めていません。
ニャチャン最寄りの空港であるカムラン国際空港も元と言えばベトナム戦争時代にアメリカ軍が築いた巨大軍事基地の一部です。また空港があるカムラン湾は、ベトナムでも有名な良港で、フランス統治時代から軍港として使われてきた歴史があります。冷戦時代にはカムラン湾には、旧ソ連海軍の太平洋艦隊の分遺体が常駐していました。
そういった歴史的経緯もあり、冷戦終結と旧ソ連の混乱が収まった2000年代に入ると、徐々にベトナムにもロシア人が戻ってきました。
特に厳冬のロシアの冬を逃れて、シベリヤや極東ロシアなどから多くのロシア人観光客が避寒のためにニャチャンを訪れるようになっていたそうです。

ウクライナ戦争の徴兵逃れ

元々ロシア人になじみのあったベトナムですが、最近増えているのがウクライナ戦争に絡んだ”徴兵逃れ”のロシア人だそうです。
ロシア人は、日本人と同じようにベトナムにビザなしで滞在できるため、多くのロシア人が徴兵逃れのためにベトナムに滞在しているようです。特に一昨年になりロシア政府が30万人の予備役招集を発表してからは、徴兵逃れとみられるロシア人が急増しているそうです。
ニャチャンでは、一カ月程度から家具付きのローカルアパートを借りることが出来ます。家賃は1万円~3万円程度です。食事もフォーやコムなどで済ませて、贅沢しなければ、月に10万以下で生活可能でしょう。現在VISAなしで45日間、電子VISAを申請すれば3カ月まで滞在できます。
VISAが切れそうになったら、いったんお隣のタイやカンボジアにVISAランして、再び入国することになります。これを繰り返しているそうです。

経済制裁逃れの富裕層も

ただニャチャンのロシア人を眺めていると、徴兵逃れと思われる若いロシア人男性以外にも家族連れで長期滞在している人も多く見かけます。もちろん単純に避寒のバカンスの人も多いと思います。しかしそれ以外に経済制裁逃れでベトナムに滞在している人もいるようです。
また噂ですが、アメリカの中国に対する制裁の抜け穴としてベトナムが人気化しているようです。本当は中国製の製品をベトナムにいったん持ち込んで、ベトナム製として輸出しているらしいのです。
同じように、西側の経済制裁で輸入がストップしている製品が、ベトナム経由でロシアに流れている、その逆もあるようです。

バランス感覚の素晴らしいベトナム

ベトナムは、フランスとアメリカ(そして日本)という二つの大国(一つは超大国)を長期のゲリラ戦で蹴散らしたというある意味恐ろしい国です。以前はアメリカからベトナム自身が経済制裁を受けて苦しい時期もありましたが、現在では、ロシア(そして中国)とアメリカの間でバランスよく立ち回っています。さらに日本や韓国からも上手に経済援助を引き出しています。はたから見ていても中々したたかです。
ロシア人が闊歩する光景は、同じビーチリゾートでもハワイなどでは見られない光景です。

今日もビーチはロシア人だらけ

ということで今日もニャチャンのビーチはロシア人で溢れかえっています。遠いヨーロッパのウクライナ戦争が、美しいビーチが続く常夏のベトナムにも影響していると思うと妙な気分になります。

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