ビニールクロスは体に悪いのか?

家の内装によく使われるビニールクロスですが、「ビニールクロスが使われているのは日本くらいで、海外ではその危険性から殆ど使われていない」という情報を最近よく見かけます。
ビニールクロスの家で育ってきた私からしてみると、「それは言いすぎじゃない?」と思う一方、実家が新築の頃に兄弟にシックハウス症候群の症状が出たので、健康に害が無いとは言い切れない材料だと認識しています。
この記事では、自分なりに調べたことをまとめます。

悪い成分は何?

悪い成分はVOC (揮発性有機化合物)という化学物質です。塗料、接着剤、洗浄剤などさまざまな物に含まれていて、シックハウス症候群以外にも光化学スモッグやオゾン生成の原因物質として住宅から産業界まで多くの分野で規制されています。
家の中ではビニールクロスだけでなく、合板や家具など様々な部材に含まれています。揮発性なので部屋の中を漂って人の皮膚や粘膜に付着し、目のチカチカ、鼻水、かゆみ、湿疹などの症状を引き起こすそうです。以下リンク先のイメージ図がわかりやすく、厚生労働省が出している室内濃度指針も載っているので、ぜひご覧ください。

VOC(広義)はその揮発のしやすさから厳密にはVVOC、VOC(狭義)、SVOC、POMの4つに分類されるそうで、特に沸点が常温より低いVVOC(ホルムアルデヒドなど)と、沸点は50℃以上だけど室温でも揮発するVOCが危険視されています。

国内の規制

現在、国内では制限されているのは、ホルムアルデヒドとクロルピリホス(防蟻材)の2つです。これらは発達障害や発がん性など人体への深刻な影響が示唆されているので規制されています。他のVOCについては、シックハウス症候群の原因という認識はされているものの、人体への深刻な影響は及ぼしていない判断されているため規制されていません。(・・もちろん人によっては深刻な被害を受けている方もいますが、国として対策を取るほどの深刻さは認識されてないようです)
その代わりに24時間換気設備の設置が義務つけられています。VOCは室内で色々な物から発生するので、ビニールクロスだけ規制しても取り除くことは出来ず、それより部屋全体を強制換気しましょう、ということのようです。
(背後にはハウスメーカーや壁紙メーカーのロビー活動があったのかもしれませんが)

海外の規制

海外で規制されているのか気になって調べてみましたが、海外も日本と同じくホルムアルデヒド以外のVOCに対する住宅系の規制は見つけられませんでした(※)。
海外でビニールクロスが使われない理由は、そもそも昔から漆喰を使用するのが当たり前で、ビニールクロスを使う文化が無いという主張のほうが合っていると思います。日本の住宅については、昔の民家からハウスメーカー住宅に切り変わる際にビニールクロスの使用が一気に広まったのでしょうね。

※中国については、質の悪いビニールクロスの使用により、室内VOC濃度が危険レベルを超えて健康被害が続出した時期があったそうで、明確に規制されています。これが「(規制していない)日本は(規制している)中国より遅れている」と言われる真の理由のようです。

自主表示制度

ただし、規制がないからと言ってメーカーが取り組んでない訳ではなく、各団体などで自主表示制度というものを作り、VOC発生が少ない製品をアピールする取り組みが行われています。
ホルムアルデヒドのFフォースターは聞いたことがある方も多いと思いますが、VOCについても4VOCという制度があるそうです。気になる方はこのような自主表示制度に登録している商品を選ぶとよいと思います。

漆喰は良いのか

本物の漆喰は全然問題ないそうです。私は「いい家は無垢の木と漆喰で建てる」で有名な東京の神崎建設の完成見学に何度か伺いましたが、本漆喰の家の空気は本当に澄んでいる感じで、凄く気持ち良かったです。
https://shikkui.denden-kyokai.com/2015/08/blog-post_3.html

ウェルネストホームは漆喰系塗料であるルナ漆喰を使ってますが、やはり室内の空気は気持ち良かったです。本漆喰とは少し異なる気もしましたが、ビニールクロスの家とは別次元だと思います。一応塗料なので壁紙同様にFフォー認定を取得していますが、本漆喰とどのくらい違うんでしょうね?

他には、人気のモールテックスは日本のFスターよりも厳しいヨーロッパのVOC認定を取得している健康面でも安心な商品だそうです。

自然素材の家の盲点

自然素材を主張しているメーカーの家でもVOCが出る可能性があります。
家具などは勿論ですが、私が気になっているのはフロアタイルです。新品のゴム臭さは強烈ですよね。あれは間違いなく化学物質の揮発によるものだと思いますが、どのメーカーのカタログを見てもFフォースターなどの表示はありません。壁紙はFフォースターでアピールしているのに、なぜフロアタイルは無いのでしょうね・・

気になって大手メーカーのサンゲツに質問してみたところ、「床材フロアタイルについては法律上シックハウス対策(ホルムアルデヒド発散性能等級の確認など)の認定は規制がないためございません。」という淡白な回答でした。法律うんぬんではなく、もう少し技術的に納得のいく回答が欲しかったです・・・・まぁ、あまり気にしすぎるな ということでしょうか。

結局ビニールハウスは悪いのか?

長々と書いてしまいましたが、結局のところ、シックハウス症候群になるかどうかは住む人の体質に依るので、一概には言えません。ハウスメーカーの場合は家全体をビニールクロスから漆喰に変えると値段が数百万アップするでしょうから、コストとのバランスも考える必要があります。
ただ、壁紙メーカーの推奨貼り替え時期は10年くらいであり、それに従うと数百万円の貼り替え費用を生涯のうちに何度か払うことにはなります。壁紙なんて一生張り替えないという方も大勢いらっしゃると思いますが、もし張り替えを想定するならば、初めから漆喰にしておくほうが生涯コストは抑えられると思います。
また、壁紙でもFフォースターや4VOCなどを取得している製品を選ぶなど比較的安くすむ対応方法も考えられます。
住んだ後で後悔するリスクを減らしたい方は、事前に家族の体質を調べるのが良いと思います。以下のサービスを紹介して終わりたいと思います。

①自分や子供が化学物質過敏症かどうか調べる

以下のようなサービスがあるそうなので、ネットで探して相談してみましょう。

②家のVOC濃度を想定する

体調不良がVOCによるものなのか調べたい場合は、以下のようなサービスもあります。気密測定と同じように空気品質も保証してくれるハウスメーカーがあると面白いですね。

参考文献 

住環境関連疾病に対する諸外国の取り組み状況
http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/2006/lecture060128.pdf

建材のVOC自主表示制度と住宅部品VOC表示ガイドラインについて

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/air/air_pollution/voc/event/voc/h26voc02.files/26summerorder0922_2.pdf

国土交通省住宅局 建築基準法に基づくシックハウス対策
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001465942.pdf 

国土交通省 室内空気中の化学物質濃度の実態調査結果
https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/07/070510_.html


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?