おばあ ばばあ

 パソコンを使うとき、私はスクリーンリーダーを用いている。これがないと文字を打ち込むのも、読書もネットも、全盲の私にはお手上げだ。
 例えば〝ki〟と打って変換キーを押すと、「キアツの気」「ヨウキの器、うつわ」「オウゴンの黄」というふうに読み上げる。打った文字にカーソルを合わせても、同じように解説読みする。文章は、上下矢印キーで、一行読みするように設定してあり、この場合は、普通に音読するように、なめらかに読み上げてくれる。音声には、男性音、女性音、さらにその中にも、いくつか種類があり、好みの声を選択できるようになっている。ちなみに私は、〝みさき〟さんに読んでもらっている。
 文章を公開する前には、なるべく誤字脱字がないように、一文字ずつチェックするのだけれど、それでも、晴眼者の人が読むと、ほぼ必ず間違いが見つかる。やはり、見える目ってすごいと思う。
 以前、こんなことがあった。文章を書き終えて、文頭から一文字ずつカーソルを送っていくと、途中で『おばあばばあ』なんて言うじゃないか。ききずてならんと思い、その行の初めからなめらか読みさせてみて分かった。〝オーバー〟の〝ー〟を〝バー〟と読んだのだ。確かそのときは、「予算オーバー」のような、限度を超えるという意味で使ったオーバーだったが、仮に、オーバーコートの略で、次のような文を書いていたら、ちょっと笑い話にはしづらくなる。
「私は昨日、古いオーバー〝おばあばばあ〟を処分した」

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