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2023年度 共通テスト「古文」に思うこと(3)~完結編

’*** はじめに ***

当コラムに目を留めてくださり、ありがとうございます。

本コラムは、高校生や大学受験生の役に立てればとの思いから書かれています。主に大学入学共通テストの国語を素材として、問題の解き方や勉強法のヒントになりそうなことを書いていきます。

前回は文法問題の解説を行いました。今回は単語や文法などの基礎力で解ける問題をもう一問取り上げた後に、失点の原因を考えてみます。

毎回、長くならないようにと思いつつ、今回も2600字ほどになってしまいました。長いですが、今回で3月分のコラムは最終回です。よろしければ最後までお付き合いください。

なお、第一回のコラムはこちら。
2023年度共通テスト「古文」に思うこと(1)|初老の塾講師|note

第二回のコラムはこちら。
2023年度 共通テスト「古文」に思うこと(2)|初老の塾講師|note

’*** 2 「基礎力」で正解にたどりつける設問(その3) ***

◆問4(ⅰ) 追加された文章中の俊重の句「釣殿の下には魚やすまざらむ」を口語訳します。「魚ーすまざらむ」が主語ー述語。「すま」はそこから考えて「住ま」、「や」は先述の疑問の係助詞「~か」、「ざら」は打消の助動詞「~しない」、「む」は助動詞で、疑問文中ですから推量の意味「~だろう」。以上を組み合わせて、「釣殿の下には魚が住んでいないのだろうか」。

単文の口語訳は、ある程度学習を積んでいる方ならまずまずの訳文が作れるケースが多いようです。これができれば答えの④にたどり着けます。配点7点。

今まで述べてきた問題を全て正解できたら29点獲得できます。これで平均24点を超えることができます。

’*** 3 検討結果  ***

実際の出来については、今まで書いてきた問題だけができて、他は一切できなかったということはおそらくないと思います。自信のほどはさておき、読んで分かったことを答えて正解した場合もあるでしょうし、場合によってはエイや! で選んだものが…という場合も。

ただ、今回はあくまで「基礎力」だけで解ける問題をターゲットにしています。以下に、ここまで書いてきた説明を踏まえて、これらの設問で失点する原因について考えてみます。考えられる理由は二つではないかと。

(1)選択肢に使われている日本語の意味が分からない可能性

問一の「ことごとし」の説明で触れた内容です。正解の「もったいぶる」という日本語の意味が分かっていないと、自信を持って選べません。私は本コラム執筆中に、何人かの高校生に意味を知っているか試しに聞いてみました。なんと、全員が知りませんでした。ちなみに、「ぎょうぎょうしい」も似たような結果です。

最近の現代文の単語集には、この手の単語が掲載されているものが増えてきたように思いますが、一つの理由は、「そうでもしないと、『もったいぶる』みたいな語の意味を知る機会がない」からかもしれません。もしそういう単語集をお持ちなら、いわゆる評論用語以外の単語暗記にも時間を使ってみましょう。この辺りは、英単語の暗記と同じです。しつこく繰り返して頭に入れていくしかありません。

また、読書が推奨される理由の一つにも、この「普段の生活では触れることの少ない語彙に触れることができる」というのが挙げられるでしょう。

現実的には、手元に辞書を置いて本を読むことはあまりないでしょう。辞書がなくても、前後の内容から推測して読むのが普通ですから。しかし、特に評論文ではその推測が的外れで、文意を全く取り違えたというケースも散見されます。

読書はしているものの、語彙力がないと言われ続けているあなた。語彙力のなさを痛感しているあなた。

そんな「あなた」は、取り敢えず受験勉強の一環と割り切って、辞書を使って読む時間を作ってみるのもいいかもしれません(全ての読書についてそうしろというつもりはありません)。辞書はちょっと、という場合は、スマホで検索しながらでもいいでしょう。案外、違う意味に取っていて文章を誤読してしまっていることも多いんですよ。

(2)「基礎力」の運用が出来ていない可能性

特に問2で問題になる可能性があるのは、基礎力を使えているのかということです。

例えば選択肢④で、私は主語と述語という、最初は小学校で習う考え方を使って答えを出しました。この問いは内容理解から攻めていっても解答は出せますが、該当箇所を含む一文を文法的に解析できたかどうか、一度振り返って考えてみるのも悪くないのでは?

何しろ、古文の読解では、「主語の省略が多いから、誰が主語なのか気を付けて読みましょう」と、おそらく多くの方が言われているはずです。授業などでそれを聞くと、最初のうちは気を付けて読みます。しかし、それをずっと続けられているかどうか…?

また、選択肢②③で用いた「に」の識別も同様です。おそらく、識別の手順は習うはずです。しかし、例えば今、「に」の識別を正しく出来るかどうか…?

本文すべてを厳密に分析する必要はないし、またその時間もないですが、傍線箇所あるいは意味が取りにくい箇所に遭遇した際に、習った技術を使える状態になっているかどうか。また、特に意味の取りづらい箇所でどれだけ粘って自分で納得できる口語訳を導き出すのか。

基礎力や技術はクセ付けしないと、常に使える状態にはなりません。何事においても同様です。

これから古文の読解練習に本格的に入ろうというあなた。意味が分かりにくい箇所で適当に意味の見当をつけたり、すぐに投げ出して先に行ったりするのではなく、少し粘って考えてみましょう。練習ですから、分からなければ調べてみましょう(ちなみに、分からなかった部分を特定して自分で参考書や文法書を調べることができるのも立派な技術です)。同じミスを何度もしないようにすれば、点数は必ず上がってきます。

以上で、共通テスト古文の検討を終えたいと思います。

当コラムは、あくまで勉強のヒントを提示しようというものです。解説を読んだから出来るようになるわけではありません。身につくまで、クセになるまでトレーニングが必要です。

じゃあ、ちょっとやってみようかと思ったあなた。まずは一週間、例えば主語と述語をきちんと把握するというところから始めてみましょう。そのうち、第2第3の課題が見えてくるかもしれません。そうしたら、今度はそれを克服すべく手を打っていくのです。そのサイクルが出来たらしめたものです。

4月は現代文を取り上げる予定です。最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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