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大学受験生応援コラム4月・評論(3)

評論文を読むとはいかなる作業なのか?(3)


’*** 0 はじめに   ***

当コラムに目を留めてくださり、ありがとうございます。

本コラムは、高校生や大学受験生の役に立てればとの思いから書かれています。主に大学入学共通テストの国語を素材として、問題の解き方や勉強法のヒントになりそうなことを書いていきます。

今月は、2022年度共通テストの大問1(現代文・評論)を用いて、評論文を読むという作業の実際をご覧いただいています。

’*** 1 前回の答え合わせ   ***

前回の最後に、一つチャレンジ問題を出しておきました。

「第7段落(「食べるという主題が~」で始まる段落)の第2文~第4文です。ここを今までの要領で分析し、図式化するとどうなるでしょうか?」 

この答え合わせを簡潔にしておきます。

なお、前回記事はこちら。

第7段落第2文~第4文の分析及び図式化

第2文:むしろ まずよだかにとって問題なの、どうして…ならないのかという問題であった
*シンプルな「SはVだ」の文。「まず」とあるから、この「問題」が第一段階。「むしろ」は前文を否定して後文に読者の注意を移す。英語のnot…but…に当たる。
(図式化)よだかの問題=① みじめな自分が生き続けることへの苦悩

第3文:そしてその問いの先に…、ふと…ことが気にかかる
*「そして」「先に」とあるので、この文が問題の第二段階。「気にかかる」という述語表現が、この文の主語もまたよだかにとっての問題であることを示す。
(第2文の図に追加)よだかの問題=【 ① みじめな自分が生き続けることへの苦悩 →② よだか自身も虫を食べて生きていることに気付く 】

第4文:そして…に対し、…「思ひ」を感じるのである。

*「そして」は添加の接続詞。問題がさらに追加される。
(さらに図に追加)

よだかの問題=【 ① みじめな自分が生き続けることへの苦悩
 →② よだか自身も虫を食べて生きていることに気付く
 →③「せなかがぞっと」する 】

さて、ここからが今回のお話です。

’*** 2 今回のお話~範囲を広げて分析する   ***

以上で完成した図は、前回第5段落を読んで作った図

「よだかの星」の展開=【 A:生の困難を抱えるよだか →B:よだかの気付き(自分も他の生き物を食べて生きている) →C:よだかの決意(絶食、生物としての死) 】

とよく似ています。というより、ほとんど同じです。この二つを合成して、図をもう少し詳しいものにしておきます。

「よだかの星」でのよだかの思考の展開=
【 A+①:みじめな自分が生き続けることに苦悩する
 →B+②:自分も他の生き物を食べて生きていることに気付く
 →C+③:「せなかがぞっと」し、生物としての死を決意する 】
*Cと③を分けてもよいですが、どちらの図も3段階で構成されているので、合成した図も3段階にして、Cと③を一体化する方が一般的。

前回のコラムのテーマは、
助詞に注目して、一文の構造を確認する
接続表現などに注目して、前後の文の関係をつかむ
でした。
今回はこれに、段落どうしの関係を加えて、問2の答えを出す準備をすることを目指します。

傍線部A「ここからよだかが、…思考を展開していく」に戻ります。問いに解答するために、傍線部の重要語句をチェックしなくてはなりません。このチェック作業をきっかけにして、今まで確認していなかった段落にも目を向けてみます。

受験的には指示語「ここ」の指すものを確定しなければなりません。「指示語の後ろはヒント」の鉄則にのっとり、まずは述語の「展開」という語に注目したい。

「展開」にはいくつもの意味がありますが、国語では「次の段階に進めること、次の段階に進むこと」の意味で用います。

段階…? ついさっき、どこかで見たような…??

そうです。前回のコラム、及び今回の冒頭で作成した図は、よだかの思考の展開を段階を追って整理していたのでした。

従って、傍線部Aの指示内容は第2段落の第2文(「よだかは、みなから~」の文。ここから物語のあらすじの説明が始まっている)からA直前までとなります。そうでないと、よだかの思考の第1段階が含まれなくなります。

なお、実際の試験場では、今回のように傍線部の後ろから分析することはせず、冒頭から読み進めて指示内容を考えるはずです。その際は直前の引用だけを指すのかな? と最初思ってしまうのは、本文形式上やむをえないと考えます。しかし、前回分析した第5段落まで読み進め、いざ問を解く段階に至っては、直前だけでなくもっと前から…「よだか」のあらすじ冒頭から…を指していると、考えを修正できている必要はあります。

話を戻しましょう。「よだかの星」あらすじ冒頭から傍線部A直前までは、先に図示した第1段階から第3段階の「ぞっと」したところまで書かれています。そして傍線部Aの後も引用文。どう展開するかと言えば、

ああ、~・・・殺される=第2段階
それが~つらい。・・・=第3段階前半の「せなかがぞっと」したときの心情と考えられる
僕はもう~最後まで・・・第3段階後半

Aの前までで、第3段階前半まで到達していましたので、ここで第3段階の最後まで思考が展開された、ということになります。

以上の検討から、本文はまずあらすじと引用によってよだかの思考の展開を示し、後からその展開を筆者の言葉で2回(第5段落と第7段落)説明し直していたことが分かります。これで、本文第2段落から第7段落までの関係性もつかめたと言っていいでしょう。

今回も2000字超。最後までお読みくださり、ありがとうございました。次回で完結編とします。次回は26日(水)にアップ予定です。




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