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エッセイ『サヨナラの魔球』

人は別れと出逢いを繰り返す。
別れほど悲しいものは無い。
恋人と別れる時、ペットと別れる時、僕はそのいづれにも「サヨナラ」と言ったことはない。サヨナラとは、本来自分が人生を離れる時に用いる言霊だから。心の中でソッと(サヨナラ)を繰り返してきた。
むかしむかし、ある一組の夫婦が結婚をした時にこう誓い合ったそうだ。
ー私たち夫婦は同じ棺桶に入ることを誓います。
何とも潔い。
先に死ぬだの死なないだの、何かを遺す遺さないだのは必要がないということだ。それならば、お互いサヨナラを言い合うこともない。
サヨナラは言ったほうも、言われたほうも激しい悲しみが残る。悲しみは、残さないほうがいい。
もし、別れにふさわしいセリフがあるとすれば「ありがとう」。
人間の営みに悔いなんか要らないから。
だから、今を精一杯生きる。
頑張る時には一生懸命に頑張る。
悲しみも、そして悔いも残さない人生を。

【了】

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