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医療従事者の処遇改善のために診療報酬をあげるべきか~一人の医療従事者の立場から思うこと~

今年度の診療報酬改定は、医療・介護の同時改定ということもあり、色々な駆け引きがあるであろうと思ったが、この一年の物価上昇の影響もあり、「医療従事者の処遇改善」「医療機関の経費の増大」ともからめて活発に議論されており、新聞やニュースにも取り上げられている。
 
ここからは、ある中規模病院に勤務する一人の看護師の意見として。
 
病院の経営は確かに厳しい。
看護師長のため、診療部長などが出席する部長会にも参加しているが、光熱費の高騰、医療材料の高騰(医療材料は輸入品がとても多い)もあり、たしかに経費はかさんでいる。
私の勤務する病院は超過勤務時間については、ホワイトであるようであるが、2024以降の働き方改革を推進し、超過勤務時間をどのように扱うかによっては、人件費も増大する病院も多いのではないだろうか。
 
私の勤務している病院も赤字だ。
そのため、看護師長として緊急入院を断らず、いかに空ベッドを作らないかが至上命題となっている。今年度の目標は達成したが、それでも赤字ということなので、私からするともはや別の問題ではないかと思うが、執行部からはひたすら稼働率上昇を言われている。
 
私は中間管理職として、目標を達成するために努力するが、結果、現場はカオスとなる。
自部署は外科であるが、外科で空床があれば他の科の緊急入院も受け入れる。手術当日や、侵襲度の高い手術の術後患者を看護しながら、
認知機能の低下した患者さんが点滴を自己抜去したり、気づいたら裸でベッドの横に立っていたなんていうことも普通にある。術後患者の検温や状態観察を3時間ごとにしながら、緊急入院を受け入れ、せん妄の患者さんが転倒しないように、安全に過ごせるように、動き続けている。
特に、夜勤帯は、3人で50床近くの患者を看護しており、疲労しているスタッフの姿を見ているので、管理者としてもつらい。
看護師だけでなく、今の医療はチームで行われているため、理学療法士・管理栄養士・診療放射線技師などそれぞれがこの煩雑な環境で、とにかく仕事をこなしている。
 
それでも多くの病院は赤字なのだ。
というか、まともにやっていては赤字、もしくはトントンなのではないかと思う。
こんなにギリギリでも収益を得ることができない状態で働くことは、給料以前に、疲弊して退職してしまうのではないかと不安になる。
 
診療報酬をあげて、もっと余裕をもって看護をできるように、次に続く世代の人にも十分な報酬がもらえる仕事だと伝えられるようにしてほしい。
これは本音だ。
 
しかし、一方で日本が考えるべきことは、果たして社会保険料にお金をつぎ込む社会でいいのか?ということではないかではないのか。
こんなことを言うと身も蓋もないが、私達医療・福祉の分野は、保険制度の中でやっている限り、その産業自体でお金を生み出すことは基本的にない。
OECD加盟国の中でも、国民あたりの病床数は多い。それなのに、COVID-19が流行したときに、まともに人工呼吸器も扱えず、重症患者を受け入れることができない病院が多数あった。
 
診療報酬を増やすことと、病床を減らすことを両立することはできないのだろうか。
つまり、トータルとしての国民の社会保険料を増やさず、医療従事者の報酬を増やせるようにするには、病床数を減らすしかないのではないかと私は思う。
これは一時的とは言え、潰れる病院が出てくることを容認することであるから、反対されるだろうけれど。
しかし、想像してほしいのだ。私が住んでいる地域はまだまだ人口が増えているが、人口減少社会の日本では今後20年間で20%近く人口が減る地域はたくさんある。私の住んでいる県でも、地域によっては今後20年で人口が40%近く減少すると試算されている都市もあるのだ。
今、無理やり引き伸ばしても、結局、患者数が減少し、維持できない病院は今後増えてくる。厚生労働省も病床機能報告制度などを見ると、この問題について考えているのがわかる。「診療報酬を増やす」と同時に「病床数を減らす」これを国民のコンセンサスを得ながら進める時期ではないかと思う。
(浅知恵かもしれません。きちんと分かっている人から見ると浅い意見であればどうぞご意見してください) 

もう一つ思うのは、医師以外の医療従事者はたしかに給料が低いが、医師は基本的に守られている。医師の給料をこれ以上あげず、普通の仕事よりは高級取り、くらいにすれば、結果として偏差値の高い若者が、医学部をひたすら目指す社会も変わるのではないかと思う。
息子の学校を見ていても、理系のクラス分けは医学部進学コース→国立難関理系→理系進学という位置づけになっているので、「頭がいい子」=「医者」という図式が子供にも刷り込まれえいる。
実際、医学部に何人受かったかが、高校の進学実績となっている。優秀な人がそんなにこぞって医者にならずに、もっと他の産業を活性化してくれれば日本の未来ももっと明るくなるのではないかと思うのだ。
 
ということを考える週末であるが、私としてはどうやら下がるらしいという噂のあるボーナスについて、どのようにスタッフに伝えるのか、伝えたあとに士気を下げずに看護の質を保てるような管理者としての関わりが悩ましい。

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