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18ピアノの思い出 習い事の副効用

ピアノでもエレクトーンでも何でも良いのだが、音楽を習っていると、子供でも学校や家庭以外の人間関係を築くことができる。これは、家と学校の往復しかするしかない子供にとっては、世界が広がり、息抜きの場にもなる。

ある時、武蔵野音大の卒業生たちの演奏会にH先生が出るというので、T先生と一緒に大きな花束を持って横浜の市民ホールまで聴きに行った。ちょっとした遠足のようで、ワクワクした。現地では、教室の他の生徒たちとも合流した。大学生だった。

H先生は、自分に与えられた曲が好きではない、面白くない、と言っていたのをとてもよく覚えている。プロコフィエフの「束の間の幻影」だった。私は、「束の間」を「床の間」と読み違えていた。床の間の曲だなんて、変な曲だなー、と思って聞いていた。

私の好きなショパンの曲を弾いた人もいた。確か、英雄ポロネーズだったと記憶しているが、何度も止まりながら弾いていた。先生なのに、なんで止まるんだろう?と思いながら聞いていた。ブーニンで聴き慣れていた演奏とはかけ離れていて、不思議な気持ちがした。今思えば、当然ではあるのだが。

他には、この演奏会には、H先生の婚約者も来ていた。挨拶はしなかったが、あの人が婚約者だ、とT先生から教わった。しかし、その婚約者が女性と一緒に来ていたのが、子供心ながらにとても不思議だった。

間もなく、H先生はその婚約者と婚約破棄をすることになる。婚約者が、「僕は結婚しても女性と遊ぶことはやめませんから」と告げたかららしい、とT先生から聞いた。どうりで、女性を連れて演奏会に来ていたわけだ、と子供ながらに合点がいった。大人の世界も色々あるな、と思った出来事だった。

この日は、大好きなH先生の晴れ舞台を見られたことに大いに満足しただけではなかった。小学生の私が、親の同伴なしに先生と他の大きな生徒と遠足のような1日を過ごしたことが、とても嬉しかったのだった。

このように、習い事は家庭や学校以外の人間関係を築くことになる。年齢層も広いので、子供にとっては世界が広がって精神的に良い影響があると、私は思っている。学校と家の往復だけでは、息が詰まるからだ。

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