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修士です。

今年の9月に父が永眠しました。
おかげさまで看取る事ができました。

生前、実家に帰った時
父は必ず
「ご飯食べたか」
と聞く。
食べたよと答えると
「ちゃんと食べれてるんか」
と笑う。
お腹は減ってないか、
お金がなくて食べるのに困っていないか、
その両方を確認するのである。

亡くなる少し前から
アルツハイマー認知症と
パーキンソン病と診断されました。

僕は三人兄弟の末っ子で、
姉と兄が実家の方にいます。
二人が介護してくれてました。
そんな二人でも認知できてない日が
あったと聞きました。
末っ子で東京に住んでいる
僕のことを誰かわからなくなってしまうのは
しょうがないことでしょう。

病室に入った時、
この人は誰やろう?という
顔でした。
日に日に体は悪くなっているけど
手を握る力は強いと聞いていました。
さすが、父だなと思いました。
父は船乗りだったので昔から力は
強い方でした。
ただ、僕は父の手を握ることが
できませんでした。
コロナ禍でワクチン接種は済ましていたものの
東京から来てるし、何があるかわからないし、
というのもありますが、本当のところは
僕が握った時、弱々しい力だったら
どうしようと恐れてしまったし、
別れが来ようとしている、
そういうことを
容認する覚悟がなかったからです。

代わりに僕は父の
頭をそっと撫でてみました。
初めての行為でした。
親が子の頭を撫でることは
たくさんあるでしょう。
僕も娘たちの
頭を撫でることはもちろん経験しています。
親でなくても大人になって
小さい子供の頭を撫でることは
ここを読んでいる方で経験されてる人も
いるでしょう。
でも親の頭を撫でるなんてことは
なかなかあるものではない。
僕はこの時、初めてでした。
すると、
父の目が少し大きくなり焦点が
定まった感じのように見えました。
そして僕に
「ご飯食べたか」
と小さい声で言いました。
食べたよと答えると また、
この人は誰やろう?という顔に戻りました。

これが
父と交わした最後のやり取りになりました。

父ちゃん
最後まで心配かけて
申し訳なかったな。
でも安心しておくれよ
僕には困った時、苦しい時、
助けてくれる妻がいる、家族がいる、
助けてくれるたくさんの先輩や後輩がいる、
僕を応援してくれる人達もいるんやで。
大丈夫、なんとか食べていけてるよ。
大丈夫、これからも食べていけるよ。
だから、なんも心配せんでええよ。
ほんで、耳元で何度も言ったけど、
父ちゃん 
いっぱい、いっぱいありがとうございました。
母ちゃんが亡くなって20年ぐらい
あの世とこの世で遠距離恋愛してたけど
ようやくまた夫婦一緒になれるな。
母ちゃんによろしくな。
仲良くやるんやで。

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