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#35 ベトナムで工事ストップ!?|そしてだれもいなくなった(前編)

■このマガジンについて


ベトナムにネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。
全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。


■工事完了まで残り2週間


ホーチミンにあるグエンフエアパート

ベトナムホーチミン市 42Nguyen Hue(グエン・フエ)アパート。
このアパートはサクセスストーリーが生まれる場所と言われている。

ベトナム政府によって近々アパートが取り壊しになる計画が出ている。

それをを知りながら、私はここでネイルサロンを作ることに決めた。

タンくんを紹介してもらい、色々手伝ってもらうようになって2ヶ月。

毎日のように初めての体験をしてきたからか「まだ2ヶ月しか経ってないのか、時が経つのは遅いな」と感じる。

彼とは、3年くらい一緒に働いている気分だ。

私:タンくん、工事もだいたい終わってきたね!長かった......。

タン:うん。工事予定は1ヶ月だったけど、結局2ヶ月かかったしねhihi

私:それはさぁ。資材調達に不足があったし、大工さんが図面通り作らなくて、1回で終わることが、ほぼ全ての工程を2回行ったからだよ!

タン:本当に色々あったね。

私:もうね。私は、2週間後のオープン日までに間に合えば、納得するよ...


■人は天井より床を見る時間のほうが長いから...


その日はフローリングを張る日だった。

この部屋は元々、塩化ビニールのフローリング床。

ベトナムでは、このようなフローリング、もしくはタイル張りの床が多い。

私は、内装を初めて見た時「もしここが借りれたとして、この床は絶対張り替えよう」そう思っていた。

なぜなら、塩化ビニールのフローリングを張っている店舗の床は、ことごとく剥がれや浮きがおきていて、チープな印象を受けていたからだ。

※ただ、これは「ベトナムでのフローリングの場合」ということを理解していただきたい。(日本とは薄さも質感もちょっと違う印象があります)

ビニールフローリング

ホーチミンの様々な店舗を回り床材を見てきた私的な感想
【塩化ビニールフローリング床】
高級感が無く、剥がれやすい。という印象。
安く施工できるが、メンテナンスにお金がかかるだろう。

【タイル張り床】
床が硬く疲れるし滑りやすい。また足が冷たい。(冷え性の人はつらい)
物を落とした時に、割れる心配がある。
(以前ネイルボトルをタイルの上に落としてバリバリに割れた経験あり)

お店作りを経験し、私なりに思ったことがあった。

「人は、天井はまじまじと見ないが、床はよく見る」

ホーチミンに出張している期間、時間のある限り他ジャンルのお店を見て研究した。

天井はどんなふうだか思い出せないのに、床は汚れてた、剥がれてた、硬かった、などは明確に覚えていたからだ。

だから、床材は多少お金をかけてもこだわりたいと、ベニヤ板にフローリングの木目をプリントした床材を選んだ。

ベトナムで用意したフローリング板

これなら、硬すぎず、柔らかすぎずでちょうどいい。
濃い色、薄い色とさまざまあったが、私はライトブラウンにした。

私がフローリングを選ぶ時に決めていたこと
黒・ダークブラウン・ミディアムブラウン・ライトブラウン・グレー・ホワイトとフローリングの色味は様々ある。
床の色によって部屋の印象はガラッと変わる。だから色選びは他の材料より真剣に選んだ。しかし、選ぶ系統はライト系〜ホワイトまでの間と決めていた。なぜなら濃い色は高級感が出るが、同時に暑さも感じる。年中温かいホーチミン、お客様には涼しさを感じてもらえるお店にしたかったからだ。
譲れないポイントはどこか優先順位を決めると、答えは出やすいね。


■作業は早かったのに...


いよいよフローリングを張る工程まで来たと思うと、今までの事が走馬灯のように頭をめぐり、感極まった。

フローリングを張る作業

とはいえ、まだまだ別の作業も同時進行なのだけれど...

ベトナム人大工の作業風景

新しい作業には、何かしらのトラブルや確認がつきものだったが、フローリングはすんなり貼り終わったらしい。

私たちが席を外した間に作業は完了していた。

「早く終わったねー」と関心しながら、私は床に傷や汚れがつかないように被されたビニールシートめくり、無意識に進捗確認をした。

フローリングを張った後

すると、フローリングのありとあらゆる端に見切り材が貼られていたのだ。

フローリングの仕上がり

見切り材が至るところについている

見切りとは?
フローリング床につける縁取りの事です。
家で例えると、キッチンとリビング、洗面所など、全てのお部屋が同じ床とは限りませんよね。貼る方向の違いや、フローリングとタイルなど素材や色のちがいが出る部分に見切りをすることで、美しく機能的に始末することを「見切りをする」や「見切り材」と呼びます。
ちなみに、私達の空間で見切りが必要なのは、タイル貼りのテラス席とネイルの部屋の境目くらいなのに、全空間の四隅に見切り材はついついていました。

【【【 ええ?なんで!? これは....非常に見栄えが悪いぞ? 】】】

タン:何がダメなの?

私:白の壁面には腰壁板を張るし、ほかの壁面だって幅木をするよね。
見切りの上から腰壁板や幅木をつけたら、見切りがはみ出てめっちゃダサくなるじゃん。

タン:なるほど...。腰壁と幅木のことは図面を見せたし、口でも説明したから知ってるはずだけど、担当者は忘れちゃったかなー?

私:忘れちゃったって...そんなことある?これは、自分で判断できないな。空間デザイナーに相談してみるよ。

「見切材を外せばよくね?」と思う方もいるだろう。
しかし、見切材はコの字型になっていて、ここまで仕上げた後に外すのは結構たいへんなのだ(実際、無理だと断られた...)

見切材

ベトナム人は忘れっぽい?
ベトナム人と仕事をするようになって、自分の癖になった事がある。
それは頼んだことをやったかどうか、または、覚えているかの確認を相手にすること。
私は日本↔ベトナムの遠隔経営だ。「頼んでた仕事、どうなった?」とチャットで聞いても「忘れていた」や「今やっている」(一ヶ月前とかのお願いでも)と返事が帰ってくる率が多いです。
本人に悪気は無いんだろうけど、1回話しただけでは覚えてくれていない印象があるので、数日後もう一度同じ話をしたり、できたと連絡があるまで何度も確認します。これを管理するのが結構大変。


■フローリングでこんなに揉めるとは


私:この見切り材は全部に必要ありません。上から腰壁や幅木をすると説明しましたよね。予定と違う仕上がりなので、見切り材を外せますか?

担当者:これで良いんだ!僕は間違ってない!作業は終わったんだから現金を今払ってください。こんなに文句を言われると思わなかった!!

私:えぇ?そんなに怒る??とりあえず、日本にいるデザイナーに解決方法を確認するから、お金はその後まで待ってください。

担当者:いや!今すぐ払ってほしい!

押し問答が続く私達の間に挟まれ、タンくんは右往左往していた。

私は急いで空間デザイナーさんに連絡し、指示を仰いだ。

デザイナー:うわぁー!!こんな事になったんですか!?私がデザインした通りに仕上がってないことが今までにも沢山ありました。これは納得がいきませんよ(怒!怒!怒!)

私:はい...。ごめんなさい。そうなんですが、なんとか解決方法ありませんか?(いつも優しいのにめちゃくちゃ怒ってるじゃん。怖えぇ...。)

デザイナー:もう!あまりにも上手く進んでないので、私がベトナム行くまで工事をストップしてください!!

私:ひぃ〜!!!

今度は私がデザイナーとフローリング担当者の間で板挟みになった。


■そして誰も居なくなった


私達が慌てふためく様子を見ていた周りの作業者たちは
「なにやらややこしい状況になってきたぞ?」と勘が働いたようだ。

私:ちょっと、タンくん。みんなの目線がなんだか怖い。

タン:うん。フローリングのお金をすぐに払わないって言ったから、みんな怒ってる。

私:いやいや、張り方を間違ったのは担当者だよ?私は、解決方法がないか聞くから待ってと言ってるのに。

タン:多分だけど...今回の工事はやり直しも多かったし、何かしらみんな不満があるね。フローリングのことで気持ちが爆発しちゃったかも。

私:(なんと理不尽な!)自分たちが図面通りにやらないからじゃん!こっちだって不満がいっぱいあるよ!!

やっと工事の終わりが見えてきたのに、最悪なタイミングで互いの不満が爆発した。

施工監理者:僕が紹介したフローリングの会社にお金を払わないなら、僕たちはもう工事を辞めます。

私:ええ!ちょ、ちょっと待って!ちがう!!(絶対勘違いしてる!!)

施工監理者:みんな、道具をまとめて帰ろう。


私とタンくんは「落ち着いて、説明を聞いて!」となだめるも、道具をまとめてぞろぞろと帰りだす工事担当者たち。(片付けるのが超早い)

それから5分も経たないうちに、私とタンくんだけが現場に立ち尽くしていた。

インプットしたこと
・人は天井より床を見ている時間の方が長い

・ネットを通じ、ベトナム↔日本の遠隔でも連絡は取れるが、確認や指示の待ち時間は対面の方が安定してるし早い(これは何に価値を感じるかだね)

・お金が絡む話は慎重に進めよう。外国人同士なら、さらに注意が必要だ。

・第三者に通訳をお願いし問題無く進むことも多いが、ちょっと歯車が噛み合わなさそうな状況時は、自分の言葉で相手に伝えることができる方がいい。(私はそれができていないから、事が大きくなる)

あまりのドタバタ劇に放心状態の私だったが「あー。やっちゃったなー」というタンくんの顔は今でも忘れられない。

さてさて、オープンまであと2週間。

こんな状況で本当にオープンできるのでしょうか!?

続きはまた来週!


KawaiiNail&Eyelash sns (@kawaiisaigon)


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▼お店づくりで起こったバタバタエピソード▼





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