#36 ベトナムで工事ストップ!?|そして誰もいなくなった(後編)
■このマガジンについて
ベトナムにネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。
全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。
■前回までのあらすじ
ベトナムホーチミン市 42Nguyen Hue(グエン・フエ)アパート。
このアパートはサクセスストーリーが生まれる場所と言われている。
ベトナム政府によって近々アパートが取り壊しになる計画が出ている。
それをを知りながら、私はここでネイルサロンを作ることに決めた。
オープン2週間前のある日、フローリングの張り方について問題が起きた。
そして工事担当者たちとの意見のすれ違いからいざこざになり...。
私とネイルサロンオープンまでのことを色々手伝ってくれているタンくん以外、現場から立ち去ってしまう。
シーンと静まりかえった部屋で、私の頭の中では「これから...どうしたら...」という言葉だけがぐるぐる回り続けていた。
工事もあと2週間で完了!頑張るぞ!!
↓(からの...)
フローリングの張り方に問題発生
↓
フローリング施工担当者:「打合せ通りにやったから問題ない」と主張
↓
日本にいる空間デザイナー:現状を報告すると「図面と全然違う」と激怒
↓
フローリング施工担当者:「とにかく今すぐ費用を支払え」と激怒
↓
様子を見ていた工事施工者:一緒に怒りだし、全員を連れて現場を立ち去る
↓
タンくんと私は板挟みになりフラフラな上、工事現場に残され放心状態
↑(いまここ)
■頼れる女神現る
私:どうしよう。みんな帰っちゃった。私はどうしたら良かったんだろう。
タン:ゆうちゃんはちょっと甘かったね。こういう時、不安な顔をしたら相手はもっと要求が厳しくなる。それに、お金についての話はもっと上手く進めないと、ベトナムでも上手くやっていけない。
タンくんの言葉がグサリ。
確かに、至らない所が沢山あったと思う(泣)
この一件で私はそうとう気が滅入った。
まだ店もできていないのに、こんなに追い詰められることがあるとは...。
とりあえず私の恩人で、初期から関わってくれているNgocさん(ゴック)に現状を共有しておかないと。
私:ゴックさん、工事のみなさんは全員、現場から帰ってしましました。
ゴック:えぇ?ゆうこさん、何があったの?
私は事のいきさつを彼女に全て話した。
ゴック:ゆうこさん、私は今から工事監理者に電話します。少し待ってね。
私:かなり怒って帰っちゃったから....。簡単には帰ってこないと思います。
ゴック:心配しないで。また連絡するから、甘いものでも食べて元気を出してね。
私:うぅ...(泣)ゴックさん、ありがとう。
彼女の優しい言葉が泣ける。やっぱり異国で頼れるのはその国の友達だ。
■女神のおかげで工事再開!
ゴックさんに相談してから約1時間が経った頃。
ぞろぞろと工事担当者たちが現場に戻ってきた。
私:ええ!?!? みんな戻ってきた!!!
タン:ほんとだ!良かった。ゴックさんが説得したね。すごいね。
工事監理者はちらっと私達を見た後、何も言わず作業を再開した。
私:ゴックさんみんな戻ってきました!!あなたのお陰です。
ゴック:それは良かった。工事はあと少しだから、ゆうこさん頑張って!
私:はい。そうですねありがとう。ところで。どうやって説得したの?
ゴック:契約書ですよ。工事を完了しないと彼らにはお金は支払われませんと書いていますから、私は彼らにそれを説明しました。
私:なるほど。ド正論で説得したのか...
ゴック:はい。ですがそれだけじゃないよ。あなたは工事中、みんなに協力してきたし、毎日現場を見に来ます。そんなオーナーあまりいません(笑)工事担当者は全員そのことを見ているし、そのことを評価し感謝もしています。その上で「優子さんは日本人だから、今回は上手く意思の疎通が取れなかった」と説明しました。
私:なんて、嬉しいことを言ってくれるんだゴックさん...
ゴック:私達の目標は1つ。それは残り2週間で工事を完了することです。
互いに我慢も不満もあっただろうけど、ここまで進めた工事を今ストップするなんてもったいない「こんなに素敵な空間を作ったんだから、最後までやりましょう」と言いました。
ゴックさんに彼らへの説得内容を聞き、私は涙があふれた。
■フローリングのその後
今回の事の発端は、壁とフローリングの間全面に見切り材をつけたことだ。
「私がベトナムに行くまで工事をストップして!」と一時は激怒していた空間デザイナーだったが、いくつか解決策を紙に書いて写真を送ってくれた。
1.見切りの上に腰壁を貼って、その前に幅木を張る。(見切りを隠すため)
2.幅木の上から腰壁を張る。
しかし、1.2の両方をやってみたが、なんだかあまり良くなかった。
結局、腰壁を張る壁面は腰壁だけ。
幅木を張る壁面は幅木だけを張り、ひとまず解決した。
デザイナー:色々プランを考えてみましたが、最初の計画のまま行きましょう。見切り材は全く必要なかったですが、仕方ないです。
私:指示どおりに管理できずごめんなさい。
デザイナー:いえいえ。起きてしまった事は仕方がありません。
こういう時に解決方法を提案するのも私の仕事です。
私:工事担当者達は一度現場から帰ってしまいましたが、戻ってきました。
今から作業に入ります。
デザイナー:そうですか。それは良かったです。さっきは無謀な事を言ってしまいすみませんでした。3日後にベトナムへ行きます。応援していますから、頑張ってくださいね!
なんだかんだ言って、みんな優しい。
この工事の一件で、私の役割は、きちんと意思決定し、全体をコントロールすること、そしてそれに責任を持つことだと分かった。
そのためには、工事の大まかな流れはもちろん、細かい作業の把握も必要。
そして、自分がフラフラした気持ちで対応したら、みんなもフラフラしてしまうんだと気づいた。
きちんとコントロールすれば、必ず工事は完了する。私はそこに集中しなければ......
■各自の仕事に集中していき仕上がった
色々あったフローリングだったが、互いの妥協点を見つけてみんなが納得する形で終えることができた。
腰壁を張ったあとは、幅木の準備
フローリング、腰壁、幅木の施工が終わり、家具を置いてみた。
見切り材は下から少しはみ出てはいるが、あまり気にならないような感じで仕上がった。
私が「うれしいな」と思ったのは、空間が出来上がるつれ、みんなの表情も生き生きとしてきたこと。
ゴミが落ちていたり、汚れを見つけると掃除してくれるまでになっていた。
それは「自分たちが作った空間が良いものに仕上がってる」という気持ちの現れだと思った。
インプットしたこと
・意思決定し、全体をコントロールする。そして責任を持つのが私の役割。
・もっと、工事担当者とコミュニケーションを深めるべきだった。
・自分ひとりで解決できることは少ない。みんなに助けてほしいと手を上げるのも大事。
・お金の話をする時は、きちんと自分の中でまとめてから相手に話す。
・「できない」より「どうすればできる?」を考えるチームをつくりたいな。
とにかく、工事が再開できて良かった!
オープンまでもう少し!もう何も起こりませんように...。
KawaiiNail&Eyelash sns (@kawaiisaigon)
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