向こう側の友達

今日は歩いたね、と私たちは耳にイヤホンを突っこんで席を倒す。

東京に帰る新幹線。
とにかく疲れて眠いからふたりともすぐ静かになる。音楽はかけっぱなしだけど、もう止める気力もない。

途中で彼女がお手洗いに行ったことで私も目が覚めてしまった。戻ってきてまたすぐに目をつぶってしまったのでそっとしておく。

外に目を向けて、街のネオンを見ようとする。
彼女がむくっと起きて、窓にもたれるように寝てしまったから半分しか見えなくなった。

「私、この前お酒飲みすぎて本当に酔っぱらっちゃって。だから最近断酒してるんだよね」と友達は教えてくれた。危ないから気を付けて、と思ってそう言ったけれど、私は別のことも考えていた。

今まで友達と朝まで寝ないで外で遊ぶとか、お酒を飲むことが目的で遊ぶとか、酔っぱらってどうしようもなくなっちゃうとか。
そういうことをしたことがなかった。しようと思ったこともないし、しようと誘ってくる友達もいなかった。

そういう彼女と一緒に旅行するくらいだから、いるかもしれないのだけど、「理来は純粋だからそういう所に連れて行きたくない」と言われてしまっている。

なんとなく、彼女は向こう側で私はこっち側なんだろうなと思う。

車内のアナウンスが流れて、彼女が起きた。
綺麗なピンクに塗られた彼女の爪をなでる。ふたりで外を見ながら、ネオンや建物が増えてくるから東京に近づくのを感じる。

よく彼女は友達とお酒を飲んだ時のおもしろいエピソードとか、失敗談とかを話してくれる。私は会ったこともない彼女の友達のお酒の席での失敗を知っている。誰と誰が付き合って、誰の浮気で破局したかも知っている。

私の知らない世界にいる彼女も好きで、私をそれから遠ざけようとする彼女も優しくて好き。「もし変な人が寄ってきたら絶対に理来の腕を引いて守るから」と言ってくれた。

夜の街に光るネオンが眩しい。

手に取ることが出来たらなと思う。

持って帰って、自分の部屋に飾れたらと思う。

ちょろい女子大生の川添理来です。