見出し画像

【感想】★★★★★「青い炎」貴志祐介

評価 ★★★★★

内容紹介

■秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹の三人暮らし。その平和な生活を乱す闖入者がいた。警察も法律も及ばず話し合いも成立しない相手を秀一は自ら殺害することを決意する。

感想

前半:主人公である秀一を始め、櫛森家の苦悩が描かれている。母·友子の元夫である曽根が居座り、怯える生活をしていた。いつしか曽根の欲望が妹に向かうのではないかと思い、秀一は一家を守るため、完全犯罪を企てる。
櫛森家内の描写に終始することなく、学校でのエピソードなども入り、重すぎない印象にしてくれている。また、曽根の振る舞いの描写もグロテスクなものはなく、読者の想像力にある程度委ねてくれている所が読みやすさを与えている。
完全犯罪の企図から実行までを紆余曲折を踏まえ、物語の半分強まで割いている。
後半:秀一が犯行に使用した機材を砂浜に隠していたが、それが無くなっていた。
実は、秀一の同級生である登校拒否中の拓也が秀一を尾行しており、証拠品を掘り起こしていた。
拓也は秀一を強請ろうとするが、秀一は再び完全犯罪を計画する。その計画中に二人の思い出の描写があるが、急に出てきた感があるので、前半にも登場させた方が良かった。
そして、ついに秀一は実行する。
その後、秀一は罪悪感に悩みながら、クラスでも浮いていく。それでも同級生の紀子は変わらず秀一と接していた。
紀子は秀一と関係を結び、秀一の犯行に気付いていく。
また、警察に追い詰められつつあった秀一は自殺を決意し、紀子を利用した事を謝罪し、紀子を好きだと言った事も嘘だと伝えた。
二人は別れ、秀一は自殺に向かう。
自殺理由は家族をマスコミから守るためであり、被疑者が死亡すれば警察もこれ以上の追及はしないだろうとの思惑からだった。
重い内容だが、文体は読みやすく、テンポもいいので、どんどん読み進められる。
人物の心情も細かな表情変化や行動で表現しており、イメージを煽ってくれる。最後の自殺方法も綿密に練られた方法であったら、より面白かった。
単純にトラックに突っ込んでいくので、ドライバーさんに迷惑が掛かるだろうなと想像してしまう。自殺方法も前半部分からサーフィンや自転車などを使って伏線を敷き、展開していたらとても良かったとは思う。
それでも、非常に素晴らしい作品だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?