今僕は芸人をやっている。推されてなんぼの稼業だとは思うのだが、この“推し”という言葉が何か嫌だ。
ファンとか応援とかそれではダメなのかな?と思ってしまう。

そもそも自分じゃない誰かのファンになったり、熱烈に応援したり、ましてや推したことなんかはほとんどない。なのでファンや応援というモノを丸っと含み,飲み込んだ“推し”という言葉に全然ピンとこない。

先に“ほとんど”と書いたのには訳があり、中学の頃にバナナマンにハマっていた時期はあった。リリースされたDVDはほとんど買って、手に入らないモノはTSUTAYAでレンタルして空のDVDに焼いたりもした。だからと言って、生のバナナマンに会いたいとは思わなかった(バナナマンライブを見に行けたら行きたいな〜とふんわりと思ったりはした)。

そんなバナナマン熱がぴたりと止んだ瞬間をハッキリと覚えている。期末試験期間中に試験勉強をしているフリをしてKOCを観ていた、バナナマンを応援しながら。
その決勝戦バナナマン vs バッファロー吾郎
勝者の名前が呼ばれる、TVの前で祈る僕

結果発表〜!優勝は・・・バッファロー吾郎!!

心底ガッカリし、同時に妙に冷静な自分もいて、何やってんだろうなと思った。そんな時に読んだ漫画、福本伸行さんの『最強伝説 黒沢』

刺さった、そういうことか!と腑に落ちた。本当にそれ以来、誰かの推しになったことはなく、本当に良くないんだけど・・・推しとか言う奴は馬鹿で、漫画の受け売りでしかないけど、自分の人生に感動できない愚鈍な者共が推しとか言っちゃって、推しという言葉の流行は、自分の人生に熱くなれない奴が増えたからだ!と思っていた。

そんな考え方がガラッと変わる動画を観た(厳密には聴いた)。その動画はコレだ

芸人仲間の白れんがというコンビのろきちゃんという奴が推しへの熱い思いをむせび泣きながら語っている。馬鹿にする気マンマンで聞き始めたんだけど、不覚にもグッときてしまった。細かい内容については聞いて欲しいので割愛するが、ザックリ説明すると、ろきちゃんの推しである岡田梨奈さんがアイドルを引退する。引退前夜の握手会で起こったことについて話している。

握手会での岡田梨奈さんの文字通りの神対応には聴いてるコッチもビビった。それを受けたろきちゃんは尚のことで、本当情感たっぷりに語っていて、誰かが何かを熱烈に好きだという話は何だか元気が出てくるな〜と思ったりした。

この動画に出てくる2つのパンチラインを紹介したい。1つは

(アイドルを推すことは)茶化しやすく、馬鹿にされる的になってしまう。こういう思いを共有してくれる友だちがいないから、今こうして一人で語ってます

現にろきちゃんと会った時に(芸人ノリとはいえ)めちゃくちゃ茶化してた。ろきちゃんもろきちゃんでソレに乗ってくれていたし、茶化されることに快感すら覚えていたとは思う(マジで)。
でも、人間って同時に色んなことを思うもんだから、そうは言っても、真面目に真正面から自分の思いを聞いて欲しいな〜という思いも同時にあったのだろう。そんな風に考えたら、マジでちょっと申し訳なくなったので、金輪際ろきちゃんのことをイジったり,茶化すのは止めようと思った。例え舞台上であってもだ!!

もう一つは

芸人を始めた理由は最早どうでもいい、今となっては続ける理由こそが大事

岡田梨奈さんがろきちゃんが芸人を続けていく理由になっていて、これからもそう有り続けるだろうと言っていた。これを聴いて“推し”というモノの輪郭を自分なりに僅かではあるが掴めたような気がした。
漫画の黒沢では、自分の中に一切無い“熱”の代替品としてワールドカップの熱狂を取り入れた。しかし、その熱は他人のものであって、自分のものでないことに気づいてハッとする。
ろきちゃんの話では、既に自分の中には熱がある、確かに燃えているものがある、推しの岡田梨奈さんによってその熱はグングン上昇し、推しがハッキリとより良く生きるための活力になっている。そんなことに気づかされた。

良いじゃない・・・推し

そんな清々しいほどに熱い思い、パンチラインだらけの動画を観ていたら、ふと僕の名前が出てきた。
この動画に至るまでに、ちょいちょい岡田梨奈さんのことを熱っぽく、時に泣きながら語っている動画をあげていて、それを僕がイジったもんだから、この動画を見られたらまたイジられるかも・・・と危惧していた。
もう!マジで僕のこととか気にしなくていいから!語りのノイズにしかなってないから!あと絶対茶化したり、イジったりしないから!杞憂だから!お前の熱い思いを引き続き喰らわせてくれよ!!なんて思っていたら、ろきちゃんはこう続けた

今あんな地下芸人の名前出さなくていっか、それで握手会での出来事なんだけど・・・

やっぱりキモいもんはキモい。出禁です。

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