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2023 蟹座の言葉 ヘルマン・ヘッセ┃臆することなく、悲しむことなく新たに向かいくる絆へと歩み入る

占星術における12サインは、12か月の季節の移り変わりに照応し、その時期に感じやすい心のテーマがあります。心理占星術家nico (ニコ)が、古今東西の著名人の言葉から12サインそれぞれの象徴を見出し、心理的葛藤と成長を考察したエッセイ。

2023年の蟹座期は、はドイツの作家/詩人であるヘルマン・ヘッセに注目。蟹座の知られざるエネルギーは、決して安住することのないアグレッシブさにある。人がたどり着いてない場所、人がやっていないこと、まだ自分が見たことのない風景へと「未知なる方へ動きをつくっていく」その源泉を考えます。

蟹座の言葉


 

花はみなしおれゆき、青春は必ず老いに道を譲る
いかなる人生の段階も、いかなる知恵も、いかなる徳も、
それぞれの盛りがあり
永遠に永らえることはできぬ
それゆえ人生のどの段階にあっても
別離と新たな始まりへと常に心を準備させ
臆することなく、悲しむことなく
新たに向かいくる絆へと歩み入らねばならぬ
すべての始まりには魔法が宿っており
それが我らを守り、我らの生を助けてくれる
常に新しい場所へ、ほがらかに歩まねばならぬ
どの場所にも故郷のように固執してはならぬ
世界精神は我らを束縛して狭めようとはせず
一段一段引き上げて広やかな心を与えてくれる
人生のひとつの場所になじんで居つくならば
そのときにはもう弛緩がはじまっていると心せよ
出発と旅へと心の準備を整えている者のみが
習慣によって麻痺することを逃れうるのだ

おそらくはやがて訪れくる死の段階すらも
我らを新しく瑞々しい場所へと送り届けることになるだろう
我らへの生の呼びかけは決して尽きることがない
それならばよい、心よ、別れを告げよ、すこやかに

ヘルマン・ヘッセ全集16「段階」より


占い本の中で扱われている象徴と、実在する人物の中に見出したときの「蟹座らしさ」の表現のギャップにいつも驚いてしまう。

今をときめく藤井総太棋士や大谷翔平選手は共に蟹座生まれだが、母性、保守的、安心、共感力といった星占いで語られる「蟹座らしさ」が彼らの魅力や才能を正しく表現しているとはとても思えない。

この違いは一体何なのだろう。
蟹座とはどのようなサインなのだろう。

伝統占星術には、エッセンシャルディグニティという天体の力や状態を測定する考え方があり、その中のトリプリシティ(エレメントに関係するエッセンシャルディグニティ)を見てみると、水エレメントはいわゆる戦いの天体である火星が優位になっている。

水エレメントである蟹座は、つまり他のサインに比べて戦いの力が優位になっているということだ。負けず嫌いの性質を持ち、勝つための努力を惜しまず、勝負にかける情熱を維持することができる。
 
このように占星術的な構造からも蟹座の好戦的な面を説明することができるわけだが、それだけだと何か物足りない。蟹座の素晴らしさは、そこだけにあるわけではない。

蟹座の支配星である月から考えると、よくある表現のもう一つに「感情の豊かさ」というのがある。それを彼らに当てはめてみると、枯れることのない情熱、将棋や野球に対する深い信頼や愛情などと表現することもできるだろう。

少し表現が豊かになった。でも、まだ何か足りない気がする。

ここで私は、蟹座の別の表出の仕方として、同じく蟹座生まれであるジョルジュ・サンドやフリーダ・カーロ、マララ・ユスフザイ、上野千鶴子や元日経新聞記者でAV女優の鈴木涼美といったフェミニストの女性たちの中に、非常に知的で社会派な側面、既存の社会に対してNO! を突き付ける勇気ある生き方を見つけることになる。

彼女たちは、違和感や憤りといった憤懣をそのままにしておくことはない。沸き上がる思いを活動の力に変え、世界に揺さぶりをかける力を持っている。

蟹座の感情の豊かさ、戦うことへの情熱、そこに加えて、最後の個人サインとしての勇気の見せ方、小さき存在である「個人」が、持てる力を存分に生かし既存の社会に向けてハサミを振りかざす。

何と勇ましく、美しい姿だろう。
私は、いつもこのように蟹座から力強い生き様を学ばせてもらっている。

でも、これだけでも蟹座を表現しているとは言えない。水エレメント・活動サイン・蟹座の中には、何かもっと別の勇気、別の魅力が潜んでいる気がする。

その私が感じている「何かもっと」を言語化してくれたのが、今回お伝えするヘルマン・ヘッセの「段階」という詩である。

詩なので、自由に好きに読んでもらえればいい、そこから各々が感じる「蟹座らしさ」を見つけてくれれば、それで十分だと思うが、私が皆さんと共有したい「蟹座らしさ」を少しだけ解説しておく。それは以下だ。

それゆえ人生のどの段階にあっても
別離と新たな始まりへと常に心を準備させ
臆することなく、悲しむことなく
新たに向かいくる絆へと歩み入らねばならぬ

この詩は、「2023年牡羊座期 赤ペン12サイン占い」で蟹座を担当したやえさんのテキストで知ったのだが、この部分は、まさに私が言わんとしていた「何かもっと別の勇気、別の魅力」だった。
 
そうなのだ、蟹座は決して安住するサインではないのだ。保守的とは真逆のエネルギー、常に濁りなく澄み渡った清流を求め続ける、それが活動サイン・水エレメント・蟹座の性質なのだ。

そこにとどまっていれば安心かもしれない。けれど、自分の想いも状況も刻々と変わっていくではないか? 実際、何度も脱皮をし、こんなにも成長しているのに、同じ環境にとどまるのは自分をごまかすことになるのではないか? 本当に自分の心に忠実であれば、アメリカンリーグを目指し、高校を退学し、新たに向かいくる絆へと歩み入ることができるのではないだろうか。

実際、清らな水を保つためには、定期的に水を入れ替える必要があるし、できる限り人気がない場所のほうが静かで気持ちがいい。みんながこぞって足を踏み入れる場所になど魅力を感じない。

人がたどり着いてない場所、人がやっていないこと、まだ自分が見たことのない風景へと、つまり未知のほうへと動きをつくっていく、そういった欲求を蟹座は間違いなく持っているはずなのだ。

出発と旅へと心の準備を整えている者のみが
習慣によって麻痺することを逃れうるのだ


もしかしたら、「心の安心」というのは、自分の心に偽りのない状態ということなのではないか。いつも心地よく自分を保つためには、固執せず、弛緩せず、常に人生に健やかな戦いを挑む姿勢を持つことなのではないだろうか。

私の蔵書、ヘルマン・ヘッセ著「庭仕事の愉しみ」の中にもこのような詩がある。

休息するかわりに 横になっているかわりに
私は慣れ親しんだ軌道からもぎ離される
走り去り、飛び去るために
無限へと旅するために
鳥の翼をひろげて私は飛び立ちたい
私を束縛する絆から逃れて

ヘルマン・ヘッセ著「庭仕事の愉しみ」より

心に忠実になったとき、私たちはどのような環境を求めるのだろうか。一段一段引き上げて広やかな心を与えてくれる、そのような場所へと歩めるだろうか。そうするために、私たちは何に別れを告げる必要があるのだろうか。

2023年蟹座期は、すべての始まりには魔法が宿っていると信じ、常に新しい場所へ、ほがらかに歩んでみたいと思うその時、どんな「わたし」の心を発見できるだろうか。とても楽しみだ。



ヘルマン・ヘッセ(Hermann Karl Hesse)
1877年7月2日ドイツ・ヴェルテンベルク州生まれ。太陽、金星を蟹座に持つ。
詩人/作家。
20世紀前半のドイツ文学を代表する文学者。1946年ノーベル文学賞受賞。代表作に「郷愁」「車輪の下」「デーミアン」などがある。


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