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CBCラジオ『#むかいの喋り方』と配信文化によせて - たまにのエッセイ テレビとラジオ no.11

 黒いマスクを身につけるハードルが下がったのと同時に、音声や動画を配信する事へのハードルも随分下がった気がする。その一方で、自分の声や顔をネットへ晒す事に抵抗がある人も一定数いるだろう。自分の見られ方や投稿した後のリアクション数も気になる上に、どこかの裏で大ディスをかまされている怖さもある。今まで配信をしようと思うキッカケが無かったり、テレビ電話に触れてこなかった人も、仕事の都合上、自宅の部屋を晒さなければならなくなり「まじご勘弁〜」と思いながらもテレワークをしているのではないだろうか。僕自身こんなエッセイをたらたら更新しているが、正直ネットへ自分の考えを晒す怖さがある。どうせなら褒められたいし、ディスられるのは得意じゃない。

 そんな思いで毎日を頑張る人にはぜひ「中部地方盛り上げプログラム」というちょいダサフレーズにも引けをとらないCBCラジオ『#むかいの喋り方』を聞いてほしい。お笑い芸人のパンサー・向井慧がパーソナリティのラジオ番組だ。この番組ではよく向井くんの承認欲求が爆発する。自らが出演しているバラエティ番組での裏回し技術を自身の口で明かしてしまい、リスナーから褒めメールを募集してしまう程だ。それでも聞いていて嫌悪感は全くなく、むしろ元気がでる。なぜなら向井くんは「俺もみんなも毎日めっちゃ頑張ってるよね」というスタンスで話しているからだ。僕と同性でかつ歳上、しかもギャンブルが大好きな芸人さんではあるが、くん付けして呼びたくなるほどの親近感と愛嬌が向井くんにはある。なのでこの際、くん付けなのは許してほしい。

 向井くんが学生の頃からお笑い芸人のラジオに憧れていたからなのか、この番組にはリスナーとのコミュニケーションを超えて、リスナーとの駆け引きを楽しんでいるラジオなのも面白い。リスナーがクイズメールを送り、スタジオに居る聴き手リスナーが投稿を読み上げ、向井くんが回答する「弱クイズ王」というクイズコーナーがある。回答を大喜利のように募集するのではなく、お笑い要素のないクイズメールに対して向井くんが頭をひねり回答する。よくあるラジオや動画配信とは違い、悩む悩まされる関係が逆転している構図であるため、その産物としてリスナーの子供からもクイズの投稿がやってくる。リスナーが番組に参加するハードルが低く、極めて優しいコーナーだ。

 radikoのプレミアム会員を退会しようかと悩んでいたが、退会を渋っているのはこの番組が理由でもある。先日の放送で向井くんが渡辺麻友の芸能界引退について「真面目に頑張っている人が評価されない世の中なわけないからね」と言っていたが、その言葉は向井くん自身、そしてリスナーにも言える事なのだと思う。向井くんの声で再生されるLINEスタンプの「今日も1日頑張ろう!」という言葉は、毎回この番組の締めにも放たれるネタフレーズと化しているが、妙に信念が宿っていて僕は大好きだ。珍しく早起きをして、テレワーク勤務の前にこの文章を書いている今、今日も1日頑張ろうと思う気持ちのそばに #むかいの喋り方 の存在がある。

2020.6.14



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