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【ニュース】新型コロナウイルス海外での影響(15)~コロナ禍とサブプライムローン・リーマンショック これらの「危機」の比較から見えてくること~

新型コロナウイルス感染症の影響により、消費者の行動は世界各国で変化し続けています。今回の記事では、各国の状況をモニターし続けているニールセン インテリジェンスチームのスコット・マッケンジーより、2008年~2009年のサブプライムローンとリーマンショックによって引き起こされた世界金融危機と今回のコロナ禍、ふたつの危機の比較から見えてくるコロナ禍の特殊性について、そして今、小売企業やメーカーに求められる姿勢についてお届けします。

2008年~2009年に起こった世界金融危機では、住宅ローンの差し押さえや失業率の上昇など予測可能な範囲での影響も見られましたが、同時に、消費パターンにも世界的な変化が起こりました。

新型コロナウイルス感染症拡大による経済的・社会的な影響が世界中で大きくなる一方で、過去の不況との比較考察も増えています。ここでポイントとなるのは「その時と同じことが今回も繰り返されたのか?」ですが、10年以上前と今日の状況とを比較するのはいささか単純過ぎると言えます。過去の事例と今回の状況との違いを的確に把握し、企業は、変化する消費者の要求に対しこれまでよりもはるかに迅速かつ積極的にさまざまな対応を行う必要があると言えます。

過去の不況では、毎週何千もの人々が亡くなったわけでも、数百万人が即座に失業したわけでも、対策費として1兆ドルが一気に投じられたわけでもなく、また、自宅に引きこもって治療方法が確立するのを待っていたわけでもありません。より具体的な相違点としては、今回(米国)政府は資金援助の対象を中小企業や個人事業主に拡大していますが、金融危機では大企業と金融機関への対策が主だったことなども挙げられます。

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消費者の地元スーパーマーケットでの購買行動にも変化が見られます。当然のことながら、収入が減って使えるお金が少なくなると、消費者は値引きやプロモーションに引き付けられます。しかし同時に、認知し信頼しているブランドに対する購買意欲もまだ存在します。プロモーションを中途半端にしたり、ブランド強化を疎かにするメーカーは機会を喪失します。商品を店頭に並べることも重要ですが、価格も重要です。このふたつの要素をコンスタントに最適化していく必要があります。

コロナ禍では、消費者が買い物をする「方法」と「場所」も変化しています。人的接触を減らすための対策が強化されており、店舗に入るにも長い列を作らなければならないため、消費者はいろいろな店を回ることをやめ、買い物の回数も減らし、出来る限りワンストップで済ませようとします。少なくとも今のところは、直近のニーズを満たすことが重要なため価格を重視できていません。 

消費習慣の変化により、小売企業やメーカーも品揃えを再考し、棚も変化しています。メーカーと小売企業はプロモーションの実施を検討するかもしれませんが、プロモーションは大量購入を促すものです。金融危機では、小売企業はプロモーションによって消費を促進しましたが、供給が不足し来店数も少ない場合、この施策は通用しません。 

消費者は、オンラインでの食料品の購入を増やしており、オンラインでの購入は何週間にもわたり急拡大を続けています。このため小売企業は、サプライチェーンや供給における課題を考慮しつつも、これまでとは違ったプロモーションをカテゴリごとに実施する必要があるでしょう。

先の世界金融危機とコロナ禍とでは、飲食店への打撃も度合が異なります。金融危機では、レストラン、バー、パブは閉鎖されず、また、デリバリーサービスと拮抗することもありませんでした。コロナ禍では、こうした状況を考慮しないわけにはいきません。同様に、金融危機では職場や学校は閉鎖されませんでしたが、コロナ禍では、多くの地域で施設が閉鎖されており、消費財とメディアの家庭での消費に大きな変化が起こっています。

世界金融危機の際、燃料の価格は多くの地域で高騰しました。コロナ禍では皮肉なことに、近くの店舗へ移動する以外、車を利用する人がほとんどおらず、ガソリンも最低レベルの価格をマークしています。 金融危機では多くの市場で食品のインフレ率が高かったものの、コロナ禍では、小売企業が景気悪化を予測して足踏みを続けているため、特定のカテゴりーを除き同様の状況には至っていません。

これ以外にも、国境の閉鎖、作物の収穫、個人債務の延期措置や金利調整などが今後どうなるのかも考慮すべきでしょう。

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こうしたさまざまな違いがある一方、ふたつの「危機」に共通するのは、消費者が人間であるという点です。人間は、本能にもとづいて行動し、恐怖と感情を有します。人間の判断は常に合理的とも限りませんが、かといって常に直感的とも言えません。いずれにせよ各国の消費者には共通の特性があり、ニールセンが見出した6つのフェーズから成るフレームワークも感染の影響を受けた世界各国で確認されています。

この状況下で「待機して様子を見る」「正常に戻るまで待つ」というスタンスを取る企業はリスクを招いていると言えるでしょう。消費者は待ってくれません。リアルタイムで行動し、変化していきます。企業は、変化に応じて迅速にビジネスを再調整する必要があります。価格、品揃え、プロモーションキャンペーンなどさまざまな側面で消費者のニーズは変化しています。企業は、かつてないほどスピーディーかつコンスタントに変化を続ける状況に対応する必要があるでしょう。

消費者からのシグナルをリアルタイムで観察することに努力し、迅速に対応する企業だけが、変化を続ける「コロナ期」の消費者のニーズをキャッチし続けることができるはずです。 

ニールセン・カンパニー合同会社では、消費者調査、ショッパー調査、販売予測、マーケティングROI分析、コンシューマーニューロサイエンス分析、海外市場情報提供などを行っています。
お問い合わせ:JPNwebmaster@nielsen.com

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