見出し画像

さびしいから愛したい

Q.好きなファッションは?
A.動物園です!

いつの間にか20年くらい経ってしまったけれど、若かりし頃のわたしのセンスはちょこちょこひょっこり顔を出す。例えば今年の誕生日プレゼントにリクエストしたのは、石黒亜矢子とグラニフのコラボレーションロンTだ。

かわいい。35歳が着ても、たぶんかわいい。

物持ちがいいので、20年前に買った服たちもサイズが合えば着ている。小鹿ちゃん柄のパーカーとか、そんなの。

いま着ているのは、そういえばユニクロとシュタイフのコラボレーションUT。そう、シュタイフのロゴとテディベアがバーンと描かれているやつ。メンズなので色は地味だけれど、テディベアがバーンである。買ってきたものの夫が難色を示したので仕方がなく着ているというわけではなく、コラボレーションといううわさを聞きつけて自分用に買いに走ったものだ。

アクセサリーだってそう。いつの間にかどこかへ旅立ってしまったものもあるけれど、動物小物がとても多い。人生初のアクセサリーは、革ひもでつながれたすべすべした木の魚だった。

置きものを集めるのも好きだ。10センチメートルくらいの、小さな世界。
うさぎや鹿や猫や、そんなかわいらしいのにはじまり、いまは民芸品に興味をひかれている。鮭を背負った熊というモチーフが好きで、いつか本物の木彫りの熊をお迎えしたいと思っているのだが、民芸品にはちょくちょく沼があるので気を付けている。
こけしには手を出すまいと思っていたら、こけ女の友人がご丁寧に金魚模様のものをプレゼントしてくれた。うれしい。かわいい。

むかしから、つねにさびしさを感じてきていた気がする。さびしいから、自分で服を買うようになって以来フリルやレースや花柄よりも動物ものを集め、おとなになってもそれは続いている。

相棒のテディベアは、ノーブランドながら長持ちで、寝るときにメガネを預け続けて25年になる。

さびしさは長じて、育てるという行為に快感を覚えるようになった。
休職して家にいる時間が増えてからは、ライトな園芸を始めた。シソやバジルやミントの芽吹きに心を躍らせ、多肉植物を腐らせ、それでも懲りずに砂漠のバラの種をまいた。

無計画に増えた鉢を減らしに減らしたいま、うちにあるのは25年物のスパティフィラムと、15㎝の棒切れ状から程に10倍ほどに大きくなったエバーフレッシュ、水やりをさぼって奇妙に伸びた砂漠のバラ、それから夫母が贈ってくれた小さいランだ。
庭にもオリーブやらムラサキシキブやらトキワマンサクやら、名も知らぬ多年草が風に揺れたり花を咲かせたりときには実をつけたりもしているが、それらはちょっと持て余している。どう剪定したらいいのかわからないし。

家にいる時間が増えて、育てるという行為はとうとう脊椎動物に及んだ。
それが金魚である。
タイミングよく友人が簡単に飼える!という金魚の飼育本を貸してくれたため、気軽に飼い始めたところ、まんまとはまってしまった。
賃貸では、小鳥やハムスターは無理でも金魚なら契約書の抜け道をかいくぐって飼うことができる。
断っておくと、あくまで興味があるのは個々の金魚そのものであって、金魚を美しく魅せるアクアリウムには興味がない。金魚の快適さを追求していたら、どんぶり金魚だったのに、いつの間にか水槽飼育になってしまった。それでも年老いた姿は愛らしい。

育てるという行為に快感を覚えると書いたが、ゆえに、ひとのもとで年老いた生き物が好きである。
金魚はほかの小動物に比べると案外長生きする生き物なので、そこがいい。色も抜けてひれもよれよれ、泳ぎ方もふらふらしているが、愛しくてたまらない。
若い動物が嫌いというわけではない。自分の手元で育てるのが好きなのだ。

保護猫を譲渡してもらった。
うちに来たときで4か月、いわゆる仔猫のいちばんのかわいい盛りは過ぎて、仔猫と若猫の間くらいだった。これが、かわいい。
ちょっと描写が思いつかないくらい、すべてがかわいい。なんならウンチすらかっこいいし、ウンチそのものに対して声に出して褒めちぎっている。なお夫はさすがに引いている模様。

子育てについては興味がないではなかったが、夫婦してのんびりなもので、いつかするんだろうなあと思っているうちに、体調やらなんやらで時機を逃してしまった。親には悪いことをしたと思っているが、親のために産むものでもなし、と自分を正当化している。いまは友人の子たちが、その代わりというわけでは断じてないが、日々成長がかわいい。

名付けが好きだ。
生き物はもちろんのこと、ぬいぐるみや鉢植えに至るまで名前があり、その数はゆうに50を超えている。ねこの名前を決めるときは10以上の候補を出して家族会議をしたものだ。まじないめいた話になるが、ぬいぐるみは名前を付けて抱きしめたその日が誕生日になるそうだ。

とうとう架空の動物園に住むことになってしまったというお話。

(以上、ちょうど2000文字)

文章が下手なもので、情報量が多くなってしまいました。


ふみーさんの#みんなの2000字 に参加します。




スキもコメントもフォローもとても励みになります。サポートは本を買うために使わせていただきます。