いい感じなやつら『トゥルースシーカーズ』

 ゾンビ映画のベストに『ショーン・オブ・ザ・デッド』を選ぶ人はいる。

 警官映画のベストに『ホット・ファズ』を選ぶ人はいる。

 侵略もの映画に『ワールズ・エンド』を選ぶ人は……きいたことはないが、まあ、いてもおかしくはないだろう……きいたことはないが。

『トゥルース・シーカーズ』は上の通称”コルネット三部作”の主演二人組、サイモン・ペッグとニック・フロストが手を組んだドラマシリーズだ。アマゾンプライムなのでテレビドラマシリーズではない。1話30分、全8話。

 物語のあらすじはこう。ニック・フロスト演じる電気修理のガス・ロバーツは仕事のかたわらYouTubeで心霊チャンネルをやっているユーチューバー。大した心霊現象にも巡り合えず仕事はそこそこ順調という毎日を送っていたガスだがある日、サイモン・ペッグ演じる上司から仕事の相棒として黒人のエルトン・ジョンをつけられる。はじめは相棒などいらないとすげない態度をとるガスだったがなんとなく打ち解けたその夜、とつぜん現れた女性、アストリッドから”幽霊に追われている”と縋られ……という感じ。

予告編(英語)

 この人たちの作品はどの作品もパロディチックなところがあって、物語の筋自体にはこれといった捻りがあるわけではない。(ホット・ファズは警官ものと見せかけて実は田舎ものホラーという捻りはあるが)ショーン・オブ・ザ・デッドでは伝統的な遅いゾンビの新たな可能性をつくりだし、ワールズ・エンドでは古典的な侵略ホラーをカンフーを交えたアクションで古臭さを払拭した作品としていた。

 しかし、上のコルネット三部作の成功には、ある一人の人物が関わっている。そう、監督のエドガー・ライトだ。今や”出せば売れる”監督となった彼の、奇跡的ともいえる、テンプレにムリなく自分の要素をいれられるバランス感覚があってこそ、作品の成功があったと言っても過言ではない。

 そう、では、今回のトゥルース・シーカーズはどうなのかというと、エドガー・ライトは関わっていない。サイモン・ペッグとニック・フロストの二人でやったものだ。確認していないが、制作もたぶん二人が立ち上げた制作会社が関わっていると思う。

 なので、最初にあげた”最高の~”という三つの文章は、実は適切ではない。ただしくはこうだ。

『変態小説家』を最高のナンセンスコメディとする人はいるか?

『スローターハウス・ルールズ』を最高のモンスターパニックとする人はいるか?

『宇宙人ポール』を最高の未知との遭遇系映画とするひとはいるか?

 答えは”いない”だ。残念ながら。(ごめんなさい。上にあわせて三つにしたかったんだけどなかったから。宇宙人ポールはたぶんそこそこいるし、そもそも上の二作品とは扱いが違うね。あれにはグレッグ・モットーラとセス・ローゲンが関わってるから)

 トゥルース・シーカーズもまた、それほどの作品ではない。過去に彼らを見た、金字塔とまで言える二作品や、かなりよかった一作品とは違う。小粒で、それほどではない。ギャグは温め、スリラーはなく、ドラマもすごく濃いわけではない。でも楽しい240分だった。

 うん。楽しかったのだ。トゥルース・シーカーズは。ニック・フロストを見ているだけで安心感があったし、マルコム・マクダウェルはやっぱり名優だった。新人と思われる二人も悪くない。物語上のつながりを楽しめる部分もある。

 これはファン・ムービーなのだ。ドラマなのでファン・シリーズか。可愛い作品なのだ。すごくよかった。シーズン2が楽しみ。

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