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落選作品_54文字の物語〈節分〉

54字の物語。落選してしまったためここで成仏させる。
テーマは2月の節分。

< 解説 > 
解説も何もないのだが、家族で楽しく節分の行事を楽しんでいるという場面。「声を揃えて」とあるので、豆を投げているのはおそらく2人以上の子ども。妻も笑っている様子で賑やかな一般家庭の光景がみてとれる。「参った、参った。」おそらくお父さんが鬼役でもしているのだろう。

「もうお面はとったじゃないか。」

この一文で話の意味は一変する。普通は鬼のお面をつけているからこそ鬼は外と豆を投げつけるのであって、お面を外したお父さんに豆を投げる必要はない。
ということは、子どもにとってお父さんは素の状態でも鬼に見えているということ。そう思うと、豆まきのかけ声が遊びではなく、より一層真に迫ったように聞こえてくる。「参った、参った。」には鬼としてと父親としての2つの意味がありそうだ。また、この余裕ぶった反応をみると、父親は相当ヤバいやつであることが分かる。
よく見ると、妻が涙をぬぐっていたのは笑っていたからではなかったかもしれない…。


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そもそも母数も優秀な作品も多いだろうから仕方ない。
ホラーテイストが気に入られなかったのか、意味が伝わりづらかったのか、はたまた伝わってなお面白くなかったか…。
54字でしか表現できないため1文字も無駄にできない。その中で詩的リズムをとるために「鬼は外!」、ダブルミーニング的な意味を持たせて「参った、参った」と2回使う表現をしたのだが…正直もったいなくはあった。少ない字数で内容を膨らませインパクトのある物語をつくるのは本当に難しかった。

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