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解説『Cube』について

今回、2023年9月17日にて”FRENZ 2023" 2日目深夜の部で上映された新作『Cube』について解説します。


1.経緯

2022年に『Gallery』を公開してから2023年に入って、私はコマ撮りアニメ(ストップモーションアニメ)をあまり作っていませんでした。『Letter』のような手描きアニメを作りようになりました。最近ではPhotoshopとAfterEffectsを使ったコラージュアニメを作ることにハマりました。
そうしていく内に私自身『コマ撮り職人』というイメージが次第に『趣味で活動している映像クリエイター』になるようになりました。
ただのクリエイターという個性があまりない形になって気がしました。
だから、今年のFRENZではコマ撮りアニメを上映したいと考え、初心に戻って『Cube』を作ることになりました。

2.撮影環境への工夫

今回『Cube』は立方体が真っ白な空間の中で動き回るシンプルな実写系コマ撮りアニメです。
以前制作した『B→W』のような雰囲気で作りました。

ただ、『B→W』では全編一点固定による撮影で数パターン毎に撮影したとは違い、『Cube』では様々な視点から立方体の動きやパターンを複数撮影しました。こうした理由としてはコマ撮りは全編一点固定による撮影が大半で、私自身似たり寄ったりの演出に好きではなかったです。私の映像制作は固定概念が壊してみたいスタイルなので、『Cube』は多方向での視点撮影を入れました。

素材については画用紙がメインで黒色の画用紙で立方体(ブロック)を作りました。当初は立方体を大きくさせる演出を入れたく、通常の2倍、3倍の立方体をつくりました。しかし、撮影してみると画面の枠が飛び出してしまいました。撮影枚数も少なくなってしまい、表現を出しにくいので却下しました。そのため、数十個近い黒い立方体を作り、大きさが統一された立方体で数パターンの動きや配置を入れ込み撮影しました。

大きさを変化する演出を捨てる代わりに、立方体の一部が伸び縮みする演出を入れたくなりました。そのため、1段階・2段階に伸びているブロックを作成しました。それを追加したことに新たなモーションを展開することができました。

今回使用した画用紙による立方体(ブロック)
一部伸びているブロック(実物大きさが分かるよう1円玉を入れています)

舞台セットは部屋そのままにせず、真っ白な空間を作りました。ただ、コマ撮りの撮影は少しの動きにズレが出てしまうと、違和感が出てしまう恐れが発生します。なので、均等な動き・パターンを見せるよう方眼紙にしました。真っ白な空間とはかけ離れてしまいますが、『B→W』の雰囲気に近づけようにしました。
方眼紙を床(テーブルの上)や壁の代用として使ったプレゼント用段ボールに貼り付けました。デジカメカメラの配置や舞台セットを調節して一点固定ばかりではない視点撮影をカット毎に行いました。

撮影する舞台セット

本編を撮影する際、立方体(ブロック)1個でチェックします。真っ白な空間に余計な物(背景)が映り込んでいないか、ブロックがバランス良く入り込んでいるか、動き・パターンが分かりやすく映っているかとチェックします。そうしないと世界観・雰囲気が壊れてしまいます。そうした中で本編の撮影を行い、ワンカットに対して50~70枚撮影して本作全編計20カットで約1000枚近く撮影しました。

一日に2~3カット分の撮影をして、チェックして納得しなかったら没にして納得するまで取り直しました。実質はかなりの枚数を撮影しました。なので、3月に素材作りをして4月から5月中旬ぐらいには撮影を終わらせていました。この時はタイトルを『Cube』として固めていました。

3.編集作業において

編集作業において去年の『Gallery』の時のような大きな事があまりありません。『B→W』の雰囲気を出しつつ、普段使ってAfterEffectsのエフェクトの一つ「ノイズ」は”ノイズHLSオート”にしました。色収差、明るさは今まで行ったエフェクトを入れました。周囲の暗さは背景レイヤーから円周に切り取り、透明度で全体に馴染ませました。それらの作業は5月中旬から6月半ばまで編集をしていました。

FRENZの参加応募開始するまではエンコード作業以外の工程を終わらせていました。応募開始後にエンコードを済ませ、1次提出の時点で上映できる完成版を提出しました。

前から映像イベントに参加する際は余裕のある時期に提出します。色々なイベントに参加すると、ギリギリに切羽詰まって作り上げるのが苦手です。作り上げたら、よほど運営からの指摘がない限りは修正しないです。修正すると永遠に終わらない気がするので終えたら気持ちを振り切って即提出します。

シーンの流れは四コマノートでメモをして演出との被りかないかチェックしていました。

4.編曲について

本作は去年同様にAudiostockから楽曲を使用しました。私はコマ撮りを作るにあたり、映像から始めるのでよほどの限り楽曲を先に決めることがありません。Audiostockから数曲ダウンロードし、映像に読み込み比較した結果、Akaseさんの『シンセとローファイビート、時々おしゃれ』が映像との雰囲気や同期にマッチしました。

楽曲パート毎と映像のシーン毎を書いて、雰囲気に合っているかチェックしていました。

5.上映された気持ち・登壇での思い

2日目深夜の部 開演前の状況

数ヶ月前に完成した映像作品で上映されるまで公に見せることができないのでソワソワしていました。
当日、FRENZ2023 深夜の部が始まり、クオリティとしては早い段階で上映されると思いました。しかし、第1部は呼ばれませんでした。過去第2部以降で呼ばれることがなく、第1部で呼ばれることが大半でした。一回2015年に第2部で呼ばれた事がありましたが、当時は会場にいませんでした。この事態によりソワソワしました。

第二部、いちいいずさんの作品上映・登壇トークを終え、次の出展者パートで私の名前が出てきました。「やっと来た!」という気持ちでした。
今回、上映前コメントは『原点回帰してみました』です。初心に戻って思ったコメントがそれでした。

上映後に2分間の登壇トークに入りました。私は緊張+深夜の部での睡魔を対処するために、早朝ホテルでメモを書きました。上映前の休憩時でも書き忘れ、言いたい言葉を見落としがないか何度もチェックしました。

私は伝えたい作品の解説を語りました。心の中から何か解放した気分でした。

私は、今回FRENZには『人』『環境』『自主制作』が直接感じさせるイベントだと語りました。3つの言葉は以前FRENZに出展され、今年6月に開催されたMotion Plus Design Tokyo 2023で登壇された松岡勇気/_hekiさんのお言葉からいただきました。私はそのアーカイブを視聴して素晴らしいお言葉と思いました。また、私は先月イントゥ・アニメーション8に参加した体験から3つの言葉を思い出しました。FRENZ以外の上映イベントは雰囲気が全くの別物で、普通の上映会では味わえない『人』『環境』『自主制作』がFRENZには揃っていると感じました。今年は例年以上に初参加者が多かったです。参加理由として多く出展者が『人』との出会いからでした。私は何かのキッカケを出会えてほしいので3つの言葉を使いました。

やんわりさんから『最後に伝えたい事がありますか』について、私は返答しましたが、ここでは書かないことにします。内容によっては不適切になるからです。私としてはモヤモヤした気持ちが残っていたので、本音の感情を思い切り出しました。涙目になりそうでした。

6.最後に

イベント後、SNSでFRENZの公式ハッシュタグを検索して自身の上映作品での感想を見ました。

原点回帰とコメントに対する反応が伝わっていた事、1000枚撮影した事への驚き、飯田二歩さんの世界観が見られた事が書かれたので目的が達成したと感じました。

今後はどうなるか決めていませんが、イベント関係なく自主制作していきたいと思います。イントゥ・アニメーション8で80歳過ぎのクリエイターさんも完全新作を作っていたので、数十年経っても映像制作を続けたいです。

以上で解説について終わらせたいと思います。

FRENZスタッフたち、出展者、一般参加者ならびに会場のLOFT/PLUS ONEのスタッフたち、イベントお疲れ様でした!


EDの寄書きとして提出した画像

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