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《OPINION INTERVIEW》HITV療法     (樹状細胞療法)で進行がんに挑む       医療法人社団 珠光会 理事長       蓮見 賢一郎 先生

 免疫療法で知られる蓮見賢一郎先生は、樹状細胞による免疫療法を行う『ICVS 東京クリニック』、幹細胞による再生医療を行う『Tokyo Clinic V2』、お父さまが開発されたハスミワクチンによる免疫療法を行う『HASUMI免疫クリニック』の3医院を運営する医療法人社団 珠光会の理事長を務めていらっしゃいます。今回は先生のご専門である、進行がんに特化した「HITV療法(樹状細胞療法)」をメインに、さまざまなお話をうかがいました。

1948年東京生まれ。埼玉医科大学卒業。
東京大学医科学研究所を経て、現在は米国法人 蓮見国際研究財団理事長。
世界各国で『国際がんワクチン・シンポジウム』を開催し、がん免疫療法の啓蒙と研究活動を推進。米国Thomas Jefferson 大学 Kimmel Cancer Center に研究講座を開設、同大学の客員教授。
主な著書に『免疫力でがんと闘う』。

ビスカとのご縁は ホームページがきっかけ

 蓮見先生とビスカのご縁は、系列クリニックのホームページ制作のお問い合わせをいただいたことがはじまりです。ディレクターの意欲と知識が高く評価され、結果としてビスカには3つのクリニックのホームページを任せていただきました。
 ホームページの評判をたずねると、「患者さまにもスタッフにもすこぶる好評ですよ」と蓮見先生。さらに、「他の施設のホームページと比較しても、差別化が十分にできていると思います」とうれしいお言葉もいただきました。
「ICVS 東京クリニックのホームページを検索される方は、がんの病状が切迫している方が多いんです。治療適用外の方からのお問い合わせに対して、窓口をどう分けていくかが今後の課題と思っています」。患者さんお一人お一人にとても誠実に対応されている様子がうかがえました。

ビスカ制作のホームページ

1.樹状細胞による免疫療法を行う「ICVS東京クリニック」のホームページは、赤と白を基調に先進技術をイメージ。患者さんへの情報を整理して、わかりやすく構成。
2.幹細胞による再生医療専門クリニック「Tokyo Clinic V2」のホームページは、内装デザインの洗練されたイメージを生かし、再生医療への可能性が感じられる作り。
3.がんの再発予防を行っている「HASUMI免疫クリニック」のホームページは、ハスミワクチンの充填をリアルな動画で表現。機能的かつ専門的なイメージに刷新。

共通の理解を大切に 患者さん主体の診療

 ICVS 東京クリニックでは、ステージⅣと再発がんの患者さんのみを受け入れています。そのため患者さんには、丁寧に時間をかけたオリエンテーションを実施。進行がんの治療には戦略が必要なため、標準治療と免疫療法を組み合わせる適切な順序とタイミングをまとめたプロトコール(手順書)が提供されますが、「治療の最終的な決定権は、患者さまとそのご家族にあります」と蓮見先生。患者さんにはなるべく平易な言葉で説明されているそうです。
「治療は、共通の理解で進めることが基本です。登山にたとえるなら、“いま何合目にいますよ”ときちんと説明することが大切。患者さまはご自身の命に関わることですから、“9合目まで来ているので、もう少しですよ”と伝えると安心されますね」。

新紀尾井町ビル4Fにある、ICVS東京クリニックのロビー。
治療の前後は、隣接するホテルニューオータニに宿泊する方も多いそうです。

先代の研究を引き継ぎ 新たながんワクチン開発へ

 蓮見先生のお父さまである蓮見喜一郎博士は、“がんウイルス説”に基づく「ハスミワクチン」の開発者として広く知られている存在でした。「私は大学の理学部で有機合成を学んでいたのですが、父の跡を継いだほうがいいと教授から強くすすめられたことが、医師になるきっかけとなりました」。埼玉医科大学卒業後、東京大学医科学研究所を経て、お父さまの珠光会診療所で約2年間、一緒に診療にあたられたそうです。
 「父の仕事で最もユニークだったのは、子宮頸がんのウイルスを発見したことですね。しかし、父は他と連携を取るタイプでなかったこともあり、ウイルスの属の同定をしなかったんです。詰めが甘かったんでしょうね」と笑う蓮見先生ですが、親子2代続くがんワクチンの研究と臨床実績が高い評価を受け、米国Thomas Jefferson大学には「HASUMI」の名を冠した教授席が設けられています。
 そしてお父さまが開発された「ハスミワクチン」は、HASUMI免疫クリニックで今もなお多くの患者さんのがん再発予防に役立ち、信頼に応え続けています。

とても穏やかなお人柄の蓮見先生。「父は研究熱心で、
自分の考えを絶対に曲げないタイプでした。私は父の良くなかった部分をなるべく
出さないように仕事しています(笑)」とユーモアたっぷりにお話くださいました。

樹状細胞のパイオニア スタインマン教授との出会い


 「ハスミワクチン」は予防型のワクチンであり、進行がんの治療には適用がありません。そこで蓮見先生は海外の研究者らと連携して新たな治療法に取り組み、2000年頃ようやく成果が現れ始めました。
 治療型ワクチンである「HITV療法」の確立に大きな役割を果たしたのは、樹状細胞の発見者であり、のちにノーベル生理学・医学賞を受賞する故ラルフ・スタインマン教授との出会いでした。「スタインマン教授との出会いは、東大の医科研時代にさかのぼります。その後も国際シンポジウムに一緒に参加したり、私どもの技術顧問も務めていただき、良きアドバイザーでしたね」。
 そう語る蓮見先生ご自身は、お父さまとは異なり、国内外のネットワークのなかで活発に活動なさっています。「人間一人じゃ何もできません。お互いに助け合って協力していかないと、発展もありませんから」と謙虚におっしゃる姿が印象的でした。

ラルフ・スタインマン教授と蓮見先生。
スタインマン教授は、すい臓がんを患いながらも自らを研究対象として闘病。残念ながら2011年9月ノーベル生理学・医学賞受賞の3日前に逝去されました。

樹状細胞が切り拓く 進行がん治療の未来

  2008年に先進的な免疫療法「HITV療法」の専門施設として、ICVS東京クリニックが開設されました。
 「HITV療法」では患者さんの血液の単核球から免疫システムの司令塔と呼ばれる「樹状細胞」を誘導してがん情報を与え、がんと戦うリンパ球「CTL」を誘導する働きを強化します。そののち、がん自体に「樹状細胞」を直接注入することで、「CTL」ががん細胞を攻撃。がんを縮小・消失させると同時に、がん自体を「CTL」を生産する“工場”に変え、血液中の目には見えないがんにも働きかけて転移を抑制します。これこそが、“がんのワクチン化”という革新的な免疫療法のしくみなのです。
 ICVS東京クリニックでは、未治療の場合は病巣が10ヶ所までの場合、現在の治癒率はなんと7割(すでに標準治療を受けている場合は病巣が5ヶ所以内などに限定)。今日も国内外から、進行がんの患者さんが続々と訪れています。

採取された血球や血漿は院内の「細胞培養加工施設」に送られ、
樹状細胞と活性化T細胞が約4週間かけて培養されます。

免疫療法の臨床試験へ 普及にも期待が高まる

  “QOL向上や延命が期待できる程度”と見られがちだった免疫療法は、今や「治癒」を実現させるフェーズに入りました。
 「免疫療法の最大のメリットは、副作用がない点。ただし、免疫療法単体でも、がんへの縮小効果を証明することが今後の課題だと思っています」と蓮見先生。「HITV療法」の発展には、免疫の過剰反応の制御という課題がありましたが、炎症メカニズムの解明により、治療結果が予測通りになってきたとのこと。そして現在、ドイツとアメリカで臨床試験の準備が進められています。
「医師主導型の臨床試験を経ていないと自画自賛の治療になってしまうので、客観的な評価を得ることがとても重要です。臨床試験を受けることは、免疫療法が広く普及するための一歩だと考えています」。
治療法の進化に伴い、がんに樹状細胞を直接投与する穿刺ロボットの開発も、早稲田大学工学部と共同で進行中とのことです。

院内で培養した樹状細胞をCTガイド下で画像確認しながら腫瘍に直接投与します。
投与された樹状細胞は約24時間で抗原認識を終えます。

「標準治療」との連携が 進行がんに挑む最適戦略

 標準治療と免疫療法は、いわば車の両輪のような関係だそうです。「それぞれの役割をよく理解して、標準治療の先生と私ども免疫の医師が連携することが、治癒への最善の道です」と蓮見先生はおっしゃいます。「標準治療を優先して、がんが耐性化した状態で免疫療法をやっても組める相手がいない。だからまずは“がんのワクチン化”を先行させてから標準治療を組み合わせると、結果がすごくいいんですよ」。この考えは、標準治療を行っている先生方の間でも、徐々に広がりつつあるそうです。
 また、注目の再生医療についてもうかがいました。「傷んだ組織を修復するという機能を、もっと目に見える形にしていかなければと思います。世界中でやっている研究なので競争は激しいですが、私どもでもTokyo Clinic V2で幹細胞による疼痛治療や再生美容に取り組んでおり、今後はより力を入れていくようになると思います」と、お話しくださいました。

あきらめずに努力を続けて 医療の礎を築いていく

 ご自身も父・喜一郎博士の跡を継ぎ、「HITV療法」を確立された蓮見先生。今年4月には、ご子息の淳先生がICVS 東京クリニックの院長に就任されます。
「親子で働くのは難しいものですが、見えない部分で切磋琢磨していると思います。息子には息子の良さがあるので、それを伸ばしていってほしいですね。患者さまを中心に考え、患者さまの意思に沿って最大限努力をする。その姿勢だけは、忘れずにいてほしいと願っています」と、継承への想いを話してくださいました。
 そして最後に、読者の先生方へのメッセージもお願いしました。「医師には臨床がメインの方も研究がメインの方もいますが、自分が興味を持ったことに対して、最後まであきらめず努力し続けることが大切です。その努力は必ず報われる時期が来ます。私自身、樹状細胞の研究を通じてそのことを実感しているところです」。
 蓮見先生の力強いお言葉は、日々研鑽を積まれている先生方にとって、心の指針となるのではないでしょうか。

蓮見先生のご子息である淳先生は、東京慈恵会医科大学を卒業後、放射線の専門医としてキャリアを積み、2024年4月からは医療法人社団ICVS東京クリニック院長に就任。
3代にわたり、先進治療の最前線で活躍されています。

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