日本橋中央法律事務所

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金融法務及び不動産法務を得意分野としつつ、信託法務、債権回収などの幅広い業務を行っている事務所です。 契約書、約款等の作成等の予防法務はもちろんのこと、訴訟・紛争業務についても特に力を入れて取り組んでいます。http://nihonbashi-chuo.com/

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弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」の解釈

1 弁護士法72条本文は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない」と規定しており、弁護士でない者が「その他一般の法律事件」を行うことを禁止している。そのため、「その他一般の法律事件」の解釈(どのような行為が該当するのか)が問題となる。  2⑴ まず

    • 債権差押えを被差押債権の不存在により取り下げた場合の時効中断の効力

      1 債権差押えをしたところ、被差押債権が不存在であったため、債権差押命令の申立てを取り下げた場合に時効中断の効力は失われるかが問題となる。 2⑴ まず、新民法(2020年4月1日に施行されたもの。以下同じ)において、旧法における「時効の中断」及び「時効の停止」の概念が整理され、①時効の完成を猶予する効果を有するものを、「完成猶予」として、②時効を新たに進行させる効果を有するものを、「更新」として、③旧法における時効の停止を「完成猶予」として、再構築されることになった。  

      • 定期建物賃貸借契約における賃貸人からの中途解約権

        1 定期建物賃貸借契約において、賃貸人(賃借人ではなく)からの中途解約権を留保する旨の特約を付した場合に、その特約が有効であるか否かが問題となることがある。当該特約が無効と解される場合には、定期建物賃貸借契約の期間の途中に中途解約権を行使したときであっても、借地借家法28条に基づき正当事由が認められなければ、賃貸借契約の解除が有効にならないと解されることから問題となる。 2 まず、借地借家法は、 ⑴ 第3章「借家」の第1節「建物賃貸借契約の更新等」において、   (ア) 2

        • 匿名組合出資(匿名組合契約)における営業者の義務

          1 商法535条は、「匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる」と規定している。そして、当該契約に基づいて行われる匿名組合員の出資を匿名組合出資という。また、出資を受けて営業を行う者を営業者という。そして、営業者は、出資者である匿名組合員に対してどのような義務を負うのかが問題となる。 2 まず、営業者は、匿名組合契約に基づき、出資を使用して営業を行い、その営業から生じた利益を分配す

        弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」の解釈

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        • 金融
          7本
        • 賃料の増減額
          3本
        • 不動産の再開発
          5本
        • サブリース
          4本
        • 債権回収(民事執行)
          2本
        • 金融サービス仲介業
          3本

        記事

          賃借物件内の残置物を廃棄する条項の有効性

          1 店舗を賃借して飲食店を営んでいた者が、音信不通になった上に、賃料 もしばらく支払っていない。そのため、賃貸人としては、賃貸借契約の解除通知を送った上で、店舗の賃貸借契約書に、「賃貸借終了後、借主が本件建物内の所有物件を貸主の指定する期限に搬出しないときは、貸主はこれを搬出保管又は処分の処置をとることができる」(以下「残置物廃棄条項」という。)旨の条項があるため、店舗の入口を強制的に解錠した上で、残置物を廃棄処分したいと考えているが、このような対応が適法であるか否かが問題と

          賃借物件内の残置物を廃棄する条項の有効性

          美容外科(美容整形)を巡る医師の説明義務

          1 美容整形は、病気の治療や予防を目的とせず、患者の主観的な願望の実現のために行われることから、医師に要求される法的な説明義務は、通常の医療行為における医師の説明義務と異なるか、異なるとしてどの程度のものが求められるのかが問題となる。 2⑴ この点、通常の医療(医学的な必要性及び緊急性がある事例)の場合、「右手術の内容及びこれに伴う危険性を患者又はその法定代理人に対して説明する義務があるが、そのほかに、患者の現症状とその原因、手術による改善の程度、手術をしない場合の具体的予

          美容外科(美容整形)を巡る医師の説明義務

          原状回復工事を実施しない場合の費用負担

          1 賃借人が借家契約の終了に伴い原状回復費用を支払ったものの、賃貸人がその後、原状回復工事を実施しないまま、当該建物を第三者に売却した場合又は第三者に賃貸した場合、賃借人は、支払い済みの原状回復費用を返還するように求めることができるか。 2 下級審の裁判例では、賃借人は賃貸人がその主張する補修工事をしないまま次の賃借人に賃貸しているため、その場合に原状回復は不要であったはずなどと主張した事案で、原状回復費用は、明渡し時の状態において客観的に算定されるものであり、その後貸主が

          原状回復工事を実施しない場合の費用負担

          オンライン診療の沿革と今後

          1 スマートフォンの普及や、新型コロナウイルス感染症の拡大下に鑑み、オンライン診療の社会的な重要性が見直され、今後も社会的に普及していくことが期待されている。そのため、オンライン診療の法的な問題点と解釈について、これまでの沿革を踏まえて検討する。 2 情報通信機器を応用した遠隔診療(テレビ電話や、FAX等の情報通信機器を組み合わせたもの)は、医師法20条に違反しないかどうかが、従来から問題となってきた。医師法20条は、「医師は、自ら診察しないで治療をし」てはならないと規定し

          オンライン診療の沿革と今後

          法人の信用を毀損した場合の無形損害の賠償

          1 従業員、取引先、ライバル企業、マスコミ等によって企業の経済的な信用を毀損する行為が行われた場合、具体的な損害の証明がない場合であっても、民法上の不法行為(民法709条、710条)に基づき、信用毀損による無形損害の賠償が認められるか否かが問題となる。 2⑴ まず、最高裁昭和39年1月28日判決(民集18巻1号136頁)は、「民法七一〇条は、財産以外の損害に対しても、其賠償を為すことを要すと規定するだけで、その損害の内容を限定してはいない。すなわち、その文面は判示のようにい

          法人の信用を毀損した場合の無形損害の賠償

          医療法人の持分の払戻請求権について

          1 医療法の改正により、平成19年4月1日から持分ある医療法人は設立できなくなったが、それ以前は、そのほとんどが持分の定めのある医療法人であった。現在も、経過措置によって既存の出資持分のある医療法人はその存続を認められている。そして、当該医療法人の定款においては、退社時及び解散時に「出資額に応じて」返還を請求することができる旨の規定が存在することが多い。そのため、当該医療法人を創業した持分を保有する理事が死亡し、その配偶者等が持分を相続した上で、医療法人を退社する際に、払戻し

          医療法人の持分の払戻請求権について

          相続税対策のため銀行借入れで不動産を取得した場合の評価方法(最高裁令和4年4月19日判決)

          1 相続人らが、相続財産である不動産の一部について、財産評価基本通達に定める方法により価額を評価して相続税の申告をしたところ、税務署長から、当該不動産の価額を鑑定評価額をもって評価すべきとして行われた更正処分の適法性が裁判で争われた。   結論として、最高裁令和4年4月19日判決は、当該更正処分を「適法」と判断した。上記判例を法的に分析した場合にポイントとなる点を、以下に述べる。 2 最高裁で口頭弁論が開かれたこと  (1) 本件は、一審判決(東京地裁令和元年8月27日判決

          相続税対策のため銀行借入れで不動産を取得した場合の評価方法(最高裁令和4年4月19日判決)

          宅建業免許なき者が名義を借りてその利益を分配する合意の効力(最高裁令和3年6月29日判決)

          1 宅建業免許を有しない者が同免許を有する者の名義を借りて不動産取引を行い、当該不動産取引に係る利益を、両者で内部的に分配する旨の合意をした場合に、当該分配合意の効力が私法上有効であるかについて、最高裁判所で判断が下された。 2 最高裁令和3年6月29日判決(民集75巻7号3340頁)は、「無免許業者が宅地建物取引業を営むために宅建業者からその名義を借り、当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は、同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして、公

          宅建業免許なき者が名義を借りてその利益を分配する合意の効力(最高裁令和3年6月29日判決)

          譲渡担保の被担保債権の範囲

          1 動産譲渡担保及び債権譲渡担保を設定する場合、その譲渡担保契約において、「被担保債権」が必ず設定される。実務上、被担保債権を抽象的な文言のみで記載する事例もあるが、その場合に、被担保債権の範囲、すなわち、どの債権まで被担保債権としての対象に含まれるのかが争いになることがある。 2 この点については、明確に法律に定めがあるわけではなく、また、議論としても十分に尽くされていない状況である。ただ、「債権譲渡担保権設定契約書(参考例)解説書」の2頁によれば、「『担保権者(乙)が設

          譲渡担保の被担保債権の範囲

          不法行為における金銭賠償の原則

          1 加害者から不法行為(民法709条)を受けことによって、被害者が大切にしていた財物が毀損した場合に、金銭的な賠償を受けることは意味がないと主張して、当該財物を原状に回復するように求めることができるかが問題となる。 2 不法行為を受けた場合の損害賠償の方法としては、金銭賠償の方法と原状回復の方法が考えられるところ、民法722条1項は、不法行為による損害賠償については、原則として金銭賠償の方法によることとしている。   金銭賠償の方法を採用した点について、「本来、損害賠償は、

          不法行為における金銭賠償の原則

          不法行為時における被害者の損害軽減義務の程度

          1 加害者から不法行為(民法709条)を受けた場合、被害者においても、社会通念上、損害回避又は損害減少措置を執るべきことが合理的な行為として期待されると一般的に解されている(損害回避義務又は損害軽減義務)とされ、判例においてもこれを認めたものがいくつか存在するところ、当該義務は、どのような場面で、どのように課されるのかが問題となる。 2(1) そもそも、交通事故によって車両が損傷し、車両を買い替えた事案において、修理不能な状態であったか否かを確定せずに、買い替えに係る費用(

          不法行為時における被害者の損害軽減義務の程度

          仮想通貨の不正アクセスにおける免責特約の効力(東京高裁令和2年12月10日判決)

          1 東京高裁令和2年12月10日判決(金融・商事判例1615号40頁)は、仮想通貨交換業者が提供する仮想通貨の取引等に関するサービスにおいて、その利用者のアカウントが不正に利用され、第三者によって行われた仮想通貨の送付に係る取引について、当該サービスに係る利用契約中の免責条項が適用されることによって、当該取引の効力は当該利用者に及ぶ旨判示した。 2 本判決において、「本件規約5条2項(免責条項をいう。筆者註。)は、民法478条の適用により登録ユーザーに損害が生ずることになっ

          仮想通貨の不正アクセスにおける免責特約の効力(東京高裁令和2年12月10日判決)