だいたい(代替)海鮮丼発売によせて~同音/同訓異議語問題
ファミリーマートが標題の商品を発売との記事を読んだ。
「だいたい」は本当にかっこ書きつきなのかな、とファミマ本体のページも確認。
ついている。
大体と代替をかけた、駄洒落風ネームなわけだけど、こういう言葉遊びは日本語にとても多い。
それは、日本語に同音異議語、同訓異議語が多いからだと思う。
同訓異議語(同じ訓読みの言葉で漢字が違う)
大学の授業で名詞「かみ」(髪が長い)が出てきたとき、一人の学生が
「かみは、Gott(髪)じゃないんですか?!」
と言った。
そう、それも「かみ」だけど漢字が違うんですよ、と、「髪、神」と板書し、ついでに「紙(Papier)」も「かみ」なんだよねーと話した。
なんでそれらが一緒?!と、学生たちはすっきりはしていなかったw
標準語では「髪」は平板アクセント、「神」は頭高アクセントなので、普通は聞き分けられる。
(「雨」「飴」は、関西は真反対と聞いたことがあるけど、「かみ」もそうなのか・・・?)
「紙」と「髪」は一緒だから、「髪の毛」と言うこともある。
また、「神様」と言ったりもする。
しかし、多くの場合は前後の言葉で判断していると思う。
「夕べ、『かみ』あらったんだよねー」
が、「神」だったらちょっと怖いし、「紙」でも、はあ?となる。
「そこの、『かみ』取って」
も、美容院とかならそういう発言もありえるのかもしれないけど、普通は用紙のことを指しているだろうと推測する。
だから、例え関西の人が関東に来ても、その反対でも、分かり合えるだろうと思う。
これは、日本語がハイコンテクスト言語だからだと思う。
「コンテクスト」を簡単に訳すと「文脈」になるけど、要は推して量るというもの。
今も、はて、「(推して)はかる」の「はかる」はどれだっけ?と思ったけど、「はかる」なんて、量る/計る/測る/図る/謀る/諮ると6つも選択肢が出てくる!
これについては、恐らく昔の日本で、計量したり、そこから転じて根回ししたり、慮ったりすることを「はかる」と言っていたけど、中国から色んな漢字がやってきて、我々のご先祖様方が
「じゃあ、重さをはかるときは、量を使おう!」
とか決めてくれちゃったからだと思われる。
暑い、熱い、厚いとかもそう。
正直、余計なことしなくてよかったのにと思うけど、ひらがなが発明されるのはそのあとなので、気持ち悪かったんだろうなあ。
大体留学生だの学者だの、とっても頭のいい人たちばっかりだったろうから。
同音異議語(同じ音で漢字が異なる)
一方で、「大体」と「代替」のような同音異義語が生まれたのは、まずは元の中国語に四声があるからだと思う。
有名なのは、「媽、麻、馬、罵」で、どれも「ma」と発音されるが、先ほどの日本語の平板アクセントや頭高アクセントのように、アクセントが異なる。
平板アクセントで「mā」はお母さんの意、
尾高アクセントで後ろにあげれば、「má」で麻、
下げて上げれば、「mǎ」で馬、
頭高にすれば、「mà」で罵るという意味になるそうだ。
でも、これらを日本に持ってきたときに、四声自体は失われてしまって、どれも「ま、ま、ま、ま」になってしまったのじゃないだろうか。
まあ、馬と罵倒は「ば」だし、「媽」は日本語にないしね、と思ったら、
「媽」の訓読みは「はは」だって!
日本人が当時間違って聞いたのかもしれないし、当時は中国でも「罵」は「ba」だったのかもしれない。
「行」には「ぎょう、こう、あん」の3つの音読みがあるけど、これはそれぞれ、呉、漢、唐と異なる時代の発音だというのだから。
標準中国語では失われた発音があって、地域によって多少残っていることがあるらしい。
例えば台湾で話されている言葉は比較的日本語の音読みが近いと聞くから、台湾語を調べたら、分かるかしらん。
さておき、「machine」がミシンと聞こえたり、マシンと聞こえたりしたように、人の耳なんて大して当てにならないという話だろう。
ちなみに「大」のピンイン(中国語のアルファベット表記)は「Dà」、「体」が「Tǐ」、「代」が「Dài」、「替」が「Tì」だそうなので、この推測は当たらずとも遠からずだろう。
ちなみにベトナムに旅行したとき、メニューのSeafoodの欄に「Hải sản」と書いてあった。
日本語の「海鮮」を中国語にしたら、上海の「はい」だし、これって元は漢字じゃん!と思った。
(ベトナムは元漢字圏。
漢字が分からないフランス人がアルファベット化したそう!
まあ、識字率ももちろんおかげで上がったと思うけど。
さらにちなみにベトナム語は六声!)
なお、中国語で「海鮮」は「Hǎixiān」だそう。似てる!
日本人はアクセントの問題をクリアできるなら、きっとベトナム語の習得は比較的楽だと思う。
でも、タイムマシンがあったら、ご先祖様方に「子孫のために音読みは捨てよう!」と進言しにいっちゃうよ、私。
ドイツ語の「同音異議」「同訓異議」
とまあ、「紙」と「神」のように、同じ音でアクセント違いという言葉がドイツ語にもあると言えばある。
コーヒーの意味の「Kaffee」は、「カ」にアクセントがある。
そして、それを飲むところである「Café」は、「フェ」に。
なんでそんな歯切れの悪い言い方をするかというと、「Café」はドイツ語じゃないからw
ご賢察の通り、フランス語です。
英語では「名前動後」と私が駿台予備校で習ったように、1つの言葉でアクセントの位置によって意味(品詞)が変わることがある。
「report」は「REport」なら名詞、「rePOrt」なら動詞だ。
しかし、ドイツ語は原則第一音節(母音)にアクセントが来ることになっていて、外来語だけが例外だ。
特に隣国であるフランス語は多く、レストランも「restaurAnt」とAに、「hotEl」もEにアクセントがある。
(分かりやすいようにアクセントの位置以外小文字で書いたが、通常ドイツ語では名詞の語頭は大文字です。)
また脱線しちゃうけど、だからドイツ人は外国語を第一音節アクセントじゃなく発音することが多くて、「忍者」は「ninjA」、「桜」は「sakUra」という。
発音指導でも、日本語はドイツ語や英語のような「強弱アクセント」の言語じゃなくて「高低アクセント」だから!と口を酸っぱくして言わないとあんらない。
ドイツ語に同訓?異議語が他に見つからないのですが、思いついた方はぜひ教えてください!
一方で、同音(?)異議語の例は、言語をまたがって起きている。
例えば人名。
Michalはドイツ語でミヒャエルだが、英語ではマイケル、フランス語では未シェール。
日本語ではミカエルとかミハエルとかも聞いたことあるから、そういう発音の言語もあるんだろうと思う。
こういう発音の違いは、方言レベルでも起きている。
言語は、発音が先にあって文字がついてきているものだから、多かれ少なかれそういうことは起きるんだよね。
とはいえ、ミヒャエルは人名のバリエーションだし、コーヒーとカフェも同じようなもんだから、やはり
「なぜ神(Gott)と紙(Papier)が同じなんですか?!」
という質問に、納得してもらえる答えを用意をできる日は来ないのか・・・
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