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バイリンガル児の「わたし語」

「わたし語」というのは、バイリンガル児に限らず、幼い子どもが言葉をうまく言えないことから、発音などをまちがえていたのが定着したり、誤って覚えていたり、自分で創作したりしたもの。

「となりのトトロ」のメイちゃんも「とうもころし」と言っていたが、こういうアナグラムも「わたし語」になるだろう。
長女はテレビを「テベリ」と言っていた。
ひらがな単位でなく、アルファベット単位でアナグラムされていて、TEREBIがTEBERIになっているのだ。

あとは、「パクリタ」。
パクリみたいだけど、これはパプリカのこと。
母音は「A-U-I-A」で合っているけど、子音はあってない。

世界中の子どもたちは幼いころはどんな音でも聞き、覚えられるという。
3才までという説と7才までという説があるが、この時期に聞いていた音は将来聞き分けられる、と。
そういう意味では、楽しむレベルで日本で幼児英語教室があるのはいいと思う。

バイリンガル児特有なのが、「ぱせない」。
ドイツ語のpassen(合う)に、日本語の否定形「ない」がついてしまっている!
なんだったか、長女がおもちゃを持ってきて、「これとこれ、ぱせない」と言ったのが意味はすぐ分かったけど、すごく面白かった!!
それでしばらく「ぱせない」を使っていたら、そこから「ぱせる」という新しい日本語の動詞も生まれてしまったw
下一段活用の動詞で、しかも可能を表す(書く→書けるのような)動詞だ!
じゃあ、可能を表さない原形は、「ぱす」だな!

次女のわたし語で秀逸だったのは、「kaschern(カッシャーン)」。
この人はドイツ語優位だったので、ドイツ語を日本語にした長女と違って、日本語をドイツ語にしている。
しかも、「Es kaschert.」と文で言った。
ドイツ人の夫が「へ? 何だって??」と何度か聞きなおして、「(何かが)カシャカシャしている」ということを意図していたことが分かった。
このバリエーションは、katschern(カチャ―ン)。
「カチャカチャしている」だね。

次女の面白かったドイツ語のわたし語は、「Papa sein Abschneiden」(パパの切り取る/切り離すもの)。
何を言おうとしてたかというと、Messer、ナイフである。
Papas Messerの方が倍以上簡単なのにw
しかも、ただschneiden(切る)ではなく、abschneiden(切り取る)と言ったのが面白い。
いつも父親が「もう少しパンを切ろうか(ドイツ語では、切り離そうか)」と言っているのを聞き、手にしているものを見て、結び付けた結果なのだろう。

幼い子が犬を「ワンワン」と教わり、車を指して「ワンワン」と言うと、違う、それは「ブーブー」だと教わって、なるほど、ワンワンは動くものという意味ではないのだな、次に猫を「ワンワン」と言うと、違う、それは「ニャーニャー」だと言われ、ワンワンは四つ足の生き物という意味ではないのだ、と言葉を理解していくのと同じだ。

ちなみに最近の次女(12才/ドイツ語優勢だけど、得意でもない)のヒットは、「お父さんがまた『やまやま』してる」。
私に話した言葉なので、日本語だともちろん思い、「え?『山々』ってなに???」と思った。
もちろん間違えていそうな言葉を脳内サーチするが分からない。
どういう意味?と問い直すと、ドイツ語で「Papa jammert wieder./パパは再び嘆いている」と言い直した。
この「jammern」嘆く、悲嘆にくれる、不平をぶつぶついうという言葉を、なぜか重ねて(強意? でも日本語のキラキラとかわくわくみたいな感じ?w)「お父さんがまた『jammern jammern』してる」と本人は言っていたのだ。

これは私が気に入って、今でも夫が不平を口にしたときに「やまやまさんの機嫌が悪いから気をつけろ」とか、自分がもやもやしてるときに、「今、やまやましてるの」などというように使っている。


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